土木界のカーボンニュートラル

今日はカーボンニュートラルについて学ぶことにする。

なぜなら、2022年4月からは改正地球温暖化対策推進法が施行されるからである。

と言っても、土木業界に即影響があるほどの切迫度ではない。

でも、世界の潮流なので、一応押さえておこうと思う。

 

 

カーボンとは炭素Cのこと

ニュートラルとは中立という意味。

炭素を中立にしましょう、となって意味がわからない。

これを意訳すると、カーボンとは炭素のことだが、日本の場合、温室効果ガスという意味で考えた方が良い

二酸化炭素だけでなく、メタンなども含まれる。

また、ニュートラルとは、実質ゼロにするという意味で、仮に温室効果ガスを排出してしまっても、吸収や除去することで、正味ゼロ(ネットゼロ)にする、ということ。

 

 

2020年10月 菅総理大臣が2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする宣言をすることから始まる。

「2050年カーボンニュートラル」を宣言

2021年4月 2030年度の温暖化ガスは2013年度比で46%削減という目標を公表

2021年6月 地球温暖化対策推進法を改正する。

都道府県や政令市、中核市は、再生可能エネルギーの利用促進に関して実施目標を定めることが義務化される。

また、市町村は「促進区域」を定めてその区域内での再エネ事業は規制緩和を実施し、関連許可手続きのワンストップ化。

他にも、環境影響評価の配慮書の手続きが省略されたりする。

2021年6月同月、グリーン成長戦略の改訂版を公表

戦略は多岐にわたるが、少しメモしておこう

・CO2吸収型コンクリートの公共調達の拡大

・MaaS導入

・空港の再エネ拠点化

・渋滞解消、道路照明のLED化

・中小企業のICT施行の拡大

・革新的な建設機械の認定制度

などなど。

 

2021年7月 国土交通省がグリーンチャレンジの重点プロジェクトを公表した。

こちらも主要なものをメモしておくが、政府のグリーン成長戦略と被る内容が多い。

・都市のコンパクト化

・EV対応として公道に充電器の設置

・グリーンスローモビリティの導入促進

・グリーンインフラとして流域治水と連携して雨水貯留の推進

・ETC2.0を活用した渋滞対策

・革新的建設機械の導入拡大

などなど。

 

2022年、グリーン成長戦略を実行するため、2兆円のグリーンイノベーション基金が活用される。

この基金の活用を担うのが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)。

元々は独立行政法人だったが、今は国立研究開発法人となっている。

 

 

今回は土木業界に身を置くものなので、CO2を使ったコンクリート開発についてメモしていく。

カーボンニュートラルを超えるコンクリートだからである。

まず、コンクリートのおさらいをするが、過去にブログを書いているので参考に。

〈技術士1次試験〉H30年度・10問目 コンクリートの基本的性質

〈技術士 1次試験〉H30年度・11問目 コンクリート構造物の劣化

〈技術士 1次試験〉R元年・10問目 コンクリートの性質

 

 

コンクリートはセメントが水と反応することで水和反応によって凝結する。

セメントとは炭酸カルシウム(C a C O3)を原料としている。

炭酸カルシウムからセメントを作り出す過程でCO2が排出されるのである。

つまり、コンクリート製品を使うこと、またはコンクリートを打設することはCO2を排出することになる。

 

 

そこで、脱炭素コンクリートの開発が熱を帯びている、ということ。

ポイントとして

1つ目のパターンは、コンクリートを作る時に、できるだけCO2を排出していない工程で製造されたコンクリートを作り使う、というもの。

2つ目のパターンは、コンクリートを作る時に、空気中のCO2を閉じ込めることができるコンクリートを作り使おう、というもの。

大きくはこの2パターンで各社それぞれ開発している。

 

1つ目のパターンは環境配慮型コンクリートという。

これはセメントを減らして高炉スラグと呼ばれる水硬性の混和材を使う。

高炉スラグはセメントと比べCO2排出量が1/10程度になる。

簡単にいうと、セメントはCO2をたくさん排出するから、CO2排出量の少ない材料に置き換えよう、というもの。

 

 

2つ目のパターンは空気中のCO2を取り込んでしまおう、というもの。

しかし、これまで中々進まなかった。それはコンクリート特有の問題があった。

それが、コンクリートの中性化という問題。

 

コンクリートの中はセメントと水が反応して水酸化カルシウムという強アルカリ性となっている。

そのため鉄筋の周りにアルカリ性の膜ができて、酸素と結びつかず酸化せずに錆びずいられた。

しかし、酸性のCO2をコンクリート中に入れるとなると、コンクリート内部が中性化して、中の鉄筋が錆びることになるのである。

鉄筋コンクリートの鉄筋が錆びては致命傷である。

CO2削減どころではない。

 

 

しかし、大成建設やブループラネットを呼ばれる企業がその問題を克服したのである。

イノベーションと言われている。

方法は、カルシウムとCO2で炭酸カルシウムの結晶を作り、それを骨材としてコンクリートの中に入れてしまおう、というもの。

他にも、炭酸カルシウムを粉末にして、混和材として打設時に混ぜよう、というもの。

炭酸カルシウムは中性なので、コンクリートの中に入っても悪さをしない。

これの意味するところは、コンクリートを使えば使うほど、地球上のCO2が減る、ということ。

なぜなら、材料としてCO2を原料とした炭酸カルシウムの結晶を使っているから。

これまでは、排出側だったコンクリートが吸収側に回った、というイノベーション。

 

 

もっとすごいのがある。

カナダのカーボンキュアテクノロジーとか、曾澤高圧コンクリート(株)の商品。

これは、コンクリート製造時に、液化CO2を練り混ぜる。

この時点でCO2が減る。

液化CO2は炭酸イオンとなり、セメントのカルシウム分と結合して炭酸カルシウムとなる。

こうして製造されたコンクリートは強度が高いらしく、従来よりもセメント量を減らせるそうだ。

セメントを減らせる、ということはCO2削減となる。

これらは、パターン1とパターン2の組み合わせである。

 

 

このような製品はまだまだ高価であり、通常の工事で使用される段階には至っていない。

この技術をさらに高めるため、NEDOの2兆円グリーンイノベーション基金が活用されるようだ。

この事業に公募して合格?すると、2030年までの支援が受けられる。

 

 

今日は土木業界のカーボンニュートラルについて学んでみた。

 

 

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