河川というインフラ 1/2回目

今日は河川。

道路インフラの場合も路盤やアスファルトを舗設して初めてインフラと呼ばれる。

おそらく、けもの道のようなものは道ではあるが、現代においてはインフラと呼ばないだろう。

河川も同様に、そこに小川が流れているだけではインフラとは言えない。

堤防を整備して人が安全に暮らせる施設があってはじめて河川インフラと呼ばれる。

 

そういうことで今日は、どんな河川施設があるのかを見ていく。

河川も道路同様に2回に分けて投稿していくつもり。

 

 

日本の地形を見れば当然だが、我が国では古来「水を治める者、国を治む」と言われるほどに河川の氾濫を治める工事が行われてきた。

日本列島は、南北に約3000kmの弓状を成し、その中央部を奥羽山脈や飛騨山脈や木曽山脈、四国山地、紀伊山地、九州山地といった脊梁山脈が縦断している。

そのため、可住地である平地は国土の3割程度しかない。

イギリスやフランス、ドイツは国土の7割以上が平地である。

ドイツと国土面積はほぼ同じだが、可住地面積はドイツの方が2.3倍ほど広い。

弓状列島に脊梁山脈が走っているので、当然に河川は急勾配である。

そのため、日本の平野のほとんどが河川の氾濫で形成された沖積平野であり、そのため水害の危険性が高い。

また、土砂災害も多い。

ついでに言うと、地震も多く、地球上で発生するマグニチュード6以上の地震の20%が日本付近で発生している。

まこと、住みにくい国なのである。

 

さて、河川施設に話を戻すが、最初に河川施設の基礎用語をメモっておく。

河川関係の仕事をしなければ、普段聞きなれない言葉もあるので、念のためにおさらい。

・堤防(堤防の表面を覆うものが護岸) → 少し豆知識として、堤内地とは堤防で守られたエリアで、堤外地とは堤防の外で水が流れるエリアのこと。

・水門 → 河川を横断して設置され、開閉することで洪水や高潮被害を防御する

・樋門、樋管 → 基本は水門と同じように、下流地区の水位が上昇してきた時に、逆流を防ぐための施設。フラップゲートのような機能。水門も同じ機能だが水門の方が規模が大きい。

・排水ポンプ場

・堰堤や床固め

その他、雨水管も河川の遠い親戚だろう。

雨水管が河川と親戚関係という理由は、河川とは雨水が流れてきた道である。

人やモノが通る道が道路であり、空から降ってきた雨が土中に浸透し切らずに表面を流れてできた道が河川である。

そして、現代になって野山が宅地化されたことで必要になったのが雨水管である。

水が土中にほとんど浸透できなくなったため、最寄りの河川までの雨水の通り道が雨水管となっている。

極端なことを言うと、町中に小川が張りめぐらされていれば、雨水管は必要ない。無論、その流域に降った雨水が小川を溢れることなく流されるだけの幅の広い小川が必要となるが。

 

 

少し、河川について法的な歴史を見ていく。

1896年に河川法が制定されている。

1897年に砂防法が制定されている。

明治29年、30年のことになる。

他に森林法も制定されており、治水三法と呼ばれた。

 

水を治める者、国を治む、の通り、まず我が国は治水に着手した。

砂防法により全国で砂防事業が展開される。

昭和になって戦後であるが1958年に地すべり防止法、1969年に急傾斜地法が定められている。

平成12年に土砂災害防止法が定められている。

 

インフラブログということで道路、河川、上下水、港湾といったインフラについて、書いているが、明らかに道路施設と河川施設では役割が違う。

道路が経済発展の為に整備されてきた。

そして、これからは経済発展だけではなく、人々の暮らしに潤いを与える役割が期待されている的なことを前回のブログで書いた。

しかし、河川施設は一貫して防災のため、人々の命を守るための施設というのが最大使命である。

もう一つ、治水と双璧を成すのが利水である。

これも経済発展というより防災ではないが、人が生きていく上で飲み水は欠かせない。

やはり人の命に直結した施設である。

より便利に暮らすために必要だった道路インフラとは河川インフラは異なる。

 

 

河川法は1896年、つまり明治29年の制定時は治水を目的とした法律だったが、戦後の1947年に改正されていて、その時に利水の考えが取り入れられた。

その後、再び洪水の激化を受けて1964年に治水に重点をおく形で改正されている。

 

さて、あまり法律ばかり書いても仕方がない。

治水施設について書く。

 

治水施設には基準というものがある。

それが治水安全度と呼ばれるもの。

俗にいう◯◯年に1度の大雨に耐えられる施設というもの。

例えば、利根川の場合、治水安全度は200分の1。つまり200年に1度の大雨に耐え得る基準で整備していく、ということ。

これは、重要度の高い川、災害の発生した際の被害の程度を基に定められている。

都道府県や市町村が管理する河川はさらに、治水安全度は低くなっている。

 

 

日本の主要河川の堤防整備率は6割前後である。

つまり、治水安全度は目標とする整備基準であって、現在がその雨量まで持つわけではない。

整備中のため、毎年毎年、莫大な予算がつぎ込まれている。

それでも、まだほとんどの河川で整備完了までは何十年もかかる。

 

2018年の西日本豪雨では岡山県倉敷市の高梁川と小田川で堤防が決壊して、甚大な被害が発生しているが、人口減少社会の中、日本全国津々浦々、整備するには、あまりに費用対効果に乏しい。

河川整備に対して費用対効果などというと、人の命をなんと考えるのか、と叱られそうだが、整備費は税金であり、みんなのお金はみんなの為に使うべきと考える。

個人的見解になるが、ここは申し訳ないが、立地適正化計画に基づき、移転してもらうしかないのではないか。

人口にもよるが、堤防整備よりも移転費用を補償した方が安いケースも出てくるだろう。

先祖代々その地で暮らし、人生最後に移転しろ、と言うのは酷な話ではあるが、少数世帯のために莫大な税金を投入することは理屈に合わない。

費用対効果という語句を乱発しているが、そう思うのだから仕方ない。

こんなことを書くと、建設業に従事する人間としては失格かもしれないが、そう思うのだから仕方ない。

 

 

ここ数年の我が国の治水事業予算は現在は1兆円を超える程度。

これは国土強靭化のための緊急対策費が上乗せされているからなのだが、そうでなければ8500億円ほど。

ちなみに、この1兆円というのは国の直轄事業のため、県や市町村の予算は含まれていない。

実際に被害に遭った地域の被害額はとんでもなく、被災地単独で言えば、堤防整備しておけば防げただろう、と思われる地域ばかりである。

被災地単独でみれば、事前に整備しておいた方が被害額を下回る。

でも、どこで災害が起こるか分からないため、結局、全国をゆっくりゆっくり整備していくしかない。

堤防のような施設は、半永久的な構造体なので、ストック効果は高いので、そうケチケチせずに、どんどん整備すれば良いという考えもあるが。

災害の発生は、都道府県が発表しているハザードマップを見れば一発でわかる。

近年、被災しているエリアはほぼハザードマップで危険とされているエリアである。

では、そのエリアを安全に暮らせるようになるまで河川整備を続けるのか。

間違いなく今後、百年かかっても整備は完了しない。

その前に、過疎地になり人が住んでないエリアが増えてくる。

残るは立派な治水施設だけ、となる。

 

 

やはり、移転しかない・・・

 

今日はこの辺でブログを終了する。

インフラの話をするとどうも悲観的な論調になってしまう。

 

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