〈技術士 基礎適正〉H30年度・基礎 Ⅰ-5-4 スマートグリッド他

今日は、技術士の一次試験の基礎適正、平成30年のⅠ-5-4 スマートグリッドなど分散型エネルギーについて。

日本のエネルギーに関する問題といっても電源構成とかの話ではない。

スマートハウスやスマートグリッドといった効率的な電力利用のような話題。

これらはスマートシティの中の一部という扱い。

流行りはスマートシティではあるが、平成30年の1次試験ではスマートグリッドなどの用語が出題されている。

最近ではあまり聞かなくなったけど、基礎的な用語なのでしっかりと勉強しておくべき項目。

 

 

 

過去問はこちら↓

公益財団法人 日本技術士会 過去問(第一次試験)基礎科目

 

問題を解く前に、基本的用語である「スマートグリッド」を調べてみよう。

ネットを調べてみると分かるが、ネットにアップされている記事が古い。

つまり、この用語自体、かなり前に流行った証拠。

それもそのはず、2009年に、米国のオバマ元大統領がグリーン・ニューディール政策の一つとしてスマートグリッド掲げていた。

 

スマートグリッドというのは、送電網のことである。

グリッドとは、本来は「格子」という意味だが、なぜか「電力系統」という意味を持つ。

だから、直訳すると「賢い電力系統」ということになる。

転じて、送電網。普通の送電網ではなく、次世代送電網である。

といっても、10年以上前に、次世代送電網と呼ばれていた、ということ。

 

これまでの電力供給は、供給側である発電所から、企業や家庭などに向けて、一方向に電力が流れるものだった。

このような電力供給を大規模・集中型電力という。

一方、スマートグリッドでは双方向的に電力が流れる。

さらに、電力供給の過不足といった情報のやり取りができる。

スマートグリッドは、環境問題と経済問題を解決する手段として期待されている。

 

その理由は、

〇 効率的な電力供給

まずスマートグリッドでは、双方向でデータをやり取りできる。

その結果、企業や家庭における消費電力情報や、電力会社からの電力抑制指示を送受信できるようになる。

例えば、電力会社は、企業や家庭の電気の消費量が減少したというデータを受け取った場合、それに合わせて電力供給を抑えることで、過剰な発電を防ぐことが可能となる。

また、余剰電力を別の需要家に回すなどの調整もできる。

スマートグリッドでは、このように需給バランスを調整できることが大きなメリットの一つである。

 

メリットは他にもある。

〇 再生可能エネルギーの効率的な導入

スマートグリッドでは、従来の大規模発電所による電気と、家庭などで発電された電気を合わせてコントロールすることができる。

一般家庭が発電するパターンでは、よりメリットが大きくなる。

地域で太陽光発電や風力発電システムをつなげれば、優先的に電力を融通し、電気を地産地消することができるようになる。

また、再生可能エネルギーは発電量が天候に左右されるという不安定感があるが、悪天候時は発電所から供給量を増やすことで、安定した電力供給が可能となる。

 

 

次にスマートグリッドと切っても切れない関係がセムス、というもの。

CEMS Community Energy Management System)

スマートグリッドでエネルギー最適化を行うシステムのこと。

「コミュニティ(地域)」という言葉が入っているとおり、スマートグリッドの導入は地域単位である。

この地域、地域全体という考えがとても重要となる。

 

 

スマートグリッドの具体的な仕組みを見てみよう。

まず、各家庭や企業において、既存の電力計の代わりに「スマートメーター」という機器を使う。

スマートメーターとは、通信機能を持った電力計測機器。

このスマートメーターをすべての家庭やオフィスなどに設置することで、電力使用やエネルギーの流れを「見える化」する。

スマートメーターで計測したデータは、制御施設であるコントロールセンターに送られ、地域内の「エネルギー最適化」を行うために使われる。

地域全体で最適化を図るとは、例えば、昼間の電力需要ピーク時に、各施設に太陽光発電システムによる電力を使うように指示を出したり、再生可能エネルギーの余剰分を別の施設に送ったり、集まったデータから電力消費予測を立てたりと、

そのようなことができるようになる。

 

 

しかし、ここで問題となるのが、コントロールセンターに送られる個人の電力消費データ。

この情報を出したくない個人が出てくると、この仕組みは進まなくなる。

なぜなら全体最適を図るシステムなので、全体を把握しなくては最適化などできない。

これはエネルギーだけでなく、スマートシティでも同様の問題が起きている。

 

話を戻す。

スマートグリッドが導入されると、環境に優しく、エネルギーを効果的に使える社会が実現できる。

そのためには、前述したCEMSだけではなく、「BEMS」「HEMS」が必要となる。

 

BEMS(Building and Energy Management System)

こちらは「ベムス」

ビル内のエネルギー管理システムのこと。

BEMSでは、室内の人数や温度などを感知するセンサーや、空調設備や照明設備などの使用電力の制御装置をビル内に取り付ける。

それらの設備により、電力使用量をモニターで見える化したり、センサーの情報をもとに制御装置で使用電力を過不足なくコントロールしたりすることができるようになる。

 

HEMS(Home Energy Management System)

こちらは「ヘムス」と読み、家庭内のエネルギー使用量を見える化し、さらに最適化するシステムのこと。

主に、家電の電気使用量をチェックすることが多いが、太陽光発電や蓄電池などの電力をまとめて管理することもある。

企業などが入るビル、工場、そして家庭。

これらをコントロールセンターで結ぶことで、CEMS体制ができ、スマートコミュニティが生まれる。

 

ただ、繰り返しになるが、スマートグリッドは、施設と発電所の間だけでは何のメリットも生まない。

施設同士がつながることが重要。

さらに、施設内でのエネルギー利用でも最適化を行い、コミュニティ全体でエネルギー最適化をすること。

それを「スマートコミュニティ」といい、スマートコミュ二ティが生まれて初めてスマートグリッドは意味を持つ。

 

 

説明が長くなったけど、問題を解いてみよう。

 

 

① 前段部分は正しい。後段部分の再生可能エネルギーを大量導入するために不可欠なインフラかと言われると、?となる。

解答は〇になっているが、ぼくは理解できない。

再生可能エネルギーの大量導入にスマートグリッドが必要かどうか、理解できない。

 

 

② スマートコミュティの説明。

まず、社会システムであること。

どんな社会システムかというと、分散型エネルギーシステムにおける需要と供給を管理、制御する社会システムである、ということ。

スマートグリッドという次世代送配電網は、スマートコミュニティという社会システムの中で威力を発揮するインフラである。

スマートグリッドはICTを活用している。

また、分散型エネルギーシステムとは、比較的小規模で、かつ様々な地域に分散しているエネルギーの総称。

つまり、各家庭や小さな発電所が、あちこちにあり、それぞれが発電したり給電してもらったりしているシステムのこと。

従来の大規模・集中型エネルギーに対する相対的な概念。

集中型とは、発電所で大規模に発電して、需要に合わせて電力を供給しているシステム。

つまり、現代でもほとんどの電源はこの集中型エネルギーシステムである。

 

 

③ スマートハウス

選択肢の文のとおりになるが、省エネ家電や太陽光発電、燃料電池、蓄電理などを組み合わせた家。

スマートとは賢い、という意味。

 

 

④ スマートメーター

これは冒頭に説明したとおり、従来の電力計に変えて、通信機能を持った電力計測機器のこと。

あくまで、機器であるが、設問文では「家庭のエネルギー管理システム」である、と書いている。

つまり、ヘムス、HEMSの説明となっている。

 

 

 スマートは賢い、という意味。

 

 

以上。

 

 

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