今日は平成30年の過去問の10問目、コンクリート工学。
問題文は「公益社団法人 日本技術士会」のHPで閲覧ができるようです。
「公益社団法人 日本技術士会」過去問(平成30年度 第1次試験)
最近、技術士の勉強がはかどるようになってきた。
ではさっそく問題を解きたい・・・けどその前に。
まず、何でコンクリートは固まるのか?
これはよく知られた話。
粉末だったセメントが水と混ざり、ドロドロの状態になる。
そして、セメントが水と反応し始める。
これを水和反応といい、この時に一緒に混ざっていた砂や骨材もろとも固まってしまう、というわけ。
もう少し簡単に表現するなら、砂や骨材をドロドロのセメントが接着剤の役割を果たしながら、固まっていく、というイメージ。
今日の問題は普段、現場で生コンを扱っている現場監督ならある程度はできると思う。
あと、逆に大学卒業したての新卒生とかも授業を覚えている分、解きやすいと思う。
選択肢➀ 標準材齢
問いは、コンクリートの強度は材齢28日の標準養生供試体の試験値でしめす。
これは正解か?というもの。
これは超基礎問題、答えは正解。
冒頭、水和反応によりセメントが固まるって話をしたけど、普通セメントの場合、28日くらいまで強度が上がり続ける。
ちなみに、この水和反応はセメントと水が混ざると1分程度で始まる、といわれている。
また、この水和反応は熱を発する。
これを水和熱というのだけど、打った後のコンクリートはこの水和熱のため、しばらく熱を発している。
話が脱線したけど、水和反応が落ち着くのが28日ごろ。
なので、28日後の供試体をつかう。材料の年齢が28日目、という意味で材齢28日目、という。
選択肢② 圧縮強度
圧縮強度の試験値とは?
円柱の供試体に上から荷重をかけていくイメージを持つといい。
円柱の断面積が100(mm2)あったとする。
この上面に1KNの荷重をかけたとき、この供試体には σ =1000(N)÷100(mm2)=10(N/mm2)の圧縮応力度がかかったことになる。
ちなみに、現場で使う生コンの呼び強度は18とか21とか24が多い。
この18とか21とかの呼び強度の生コンを使っているなら、圧縮強度が10(N/mm2)なら潰れない。
呼び強度というのは設計基準強度に少し余裕をもたせたようなもの。
18というのは18(N/mm2)
強度の単位はN/mm2、1mm2当たりにどれだけの荷重に耐えられるのか、ということ。
さて、問題は設計基準強度を下回る確率を聞いている。
ここで、現場で生コンを打ったときの強度を考えてみよう。
製品にはかならずバラつきがでる。
そのバラつきを示すものとして、標準偏差のグラフを思い出してほしい。
学校の生徒のテストは平均点付近にたくさんの生徒数がいて、上位にいくほど、または下位に行くほど、生徒数は減っていくグラフである。
例えば、設計基準強度が24N/mm2の生コンで打設するとき、バラつきの下の方まで24N/mm2を満足するような生コンを打設するのなら、生コン屋には50N/mm2とかの強度のものを頼まなくてはいけない。
製品には、かならず、バラつきが出るから。
そのときに、どの程度の確率なら、その強度を下回っても良いとするか、あまり無駄にならないように決めましょう、と規程されている。
その決めが、5%が下回る程度の生コンであれば、許容しましょう、という規程、というもの。
バラつきのある生コンにも平均値は算出できる。
その平均値の強度を調合強度とか呼び強度という。
世の中、なんでもそうだと思う。
不良品は出る前提。まったく不良品を許さない、となるとお金が無駄にかかってしょうがない。
俗にいう安全と安心は違う、ということ。
100%の安全は求めるべきだけど、100%の安心まで求めると無駄が多すぎる、ということ。
ただ、ここで気付くこととして、呼び強度18(N/mm2)といったとき、全体の5%は18(N/mm2)を下回るけど、多くは18(N/mm2)を上回っている、ということ。
無駄に強度が高いものが混ざっている、ということ。
でも、これはある意味仕方のない無駄というもの。
選択肢③ 水セメント比
水セメント比=W/C。
つまり水が多いと水セメント比は大きくなる。
水セメント比が大きくなると、強度は弱くなる。
これは、裏をかえせば単位量あたりのセメント量が少ないことを示しているので当たり前。
でも、ワーカビリティは良くなる。
だから、いいかげんな職人の場合、生コン車から流れ出る生コンに水を加えたがるのである。固い生コンでは骨が折れるから。
で、今回の問いは、水セメント比、まずは65%以下がきまりですよ~というもの。
さらに、その65%以下という基準を守りつつ、強度、劣化抵抗性、浸透抵抗性を考慮して、その最小値を採用するということか?
と聞いている。
この問題は少し悩む問題。
確かに65%を超えるような生コンはダメです。
しかしセメントの種類によっては60%以下とか55%以下と決められているものもある。
舗装コンクリートでは45%とか50%である。
よって、65%を最大限として、と読むなら正解となるが、そうは書かれていない。
国語的には65%以下といってるので、問題ないけど、少し引っかかる。
こういう問題の場合、他に明らかな間違いがある選択肢があると思われるので、そちらを探すほうが得策かと思う。
選択肢④ 空気量
実はコンクリートには空気が含まれている。
いや、わざと空気を含ませる、といった方が良いかもしれない。
なぜ?空気があると、その分だけ強度が弱くなりそうだけど?と思う。
軽石のようにスカスカのコンクリートでは強度が弱い。
そう、それはそうなんだけど、その以上に、適量の空気があるメリットの方が大きい。
メリットは大きく2つ。
一つは柔らかくなってワーカビリティが上がるということ。
水を入れても空気を入れてもワーカビリティは上がる。
もう一つのメリットは、凍結融解対策になる、ということ。
ちなみに、この空気量はコンクリートの種類によって変わる。
普通コンクリートの場合は4.5%となる。
そのほか、高流動コンクリートなら3%くらいまでOKだし、寒中コンクリートの場合、温暖差をクッションの役割をする空気に対する期待もたかく、5.5%でもOK。
問題文は4~7%となっており、少し幅がある。
これも、他の問題で明らかな間違いがある選択肢を選ぶことにする。
7%なんておかしい、と×にするのは勇気がいる。
選択肢⑤ 外気温と打設時間
練り混ぜてから打設完了までの時間はJISと土木学会のコンクリート標準示方書では、表記が若干違う。
どちらも90分間、つまり1時間30分と定められているが、示方書では外気温が25度を超えるときは1時間30分で、25度を超えないときは2時間、と少し緩めとなっている。
しかし、だいたい作業時間も含めると、練り混ぜてから1時間くらいで現場に到着してもらわねば困る。
選択肢の25度を超えないときは3時間以内とあるように3時間はさすがにない、ので不正解となる。
まとめ
今日はコンクリートの基礎的な勉強。
少し雑談をすると、コンクリートの寿命を知っていますか?
最近は100年コンクリートなどの語句も聞いたことがあるかもしれない。
実は、ぼく、90年前の下水管を見たことがある。
土を掘って見たことがあるんだけど、まったく劣化していなかった。
これはまだまだ持つなあ、と思ったことがある。余談。
本当の耐久年数なんてものは、実際にはないのかもしれない。
現場条件が違えばまったく違ってくるから。
そして、現場条件はそれぞれに違うのが当たり前だから。