歩行者利便増進道路をメモる

改正道路法が成立した。

5/20の参院本会議で可決した。

この法案は今年の2月に閣議決定されていたもの。

昨日、スーパーシティ法案が特別委員会で可決し、今度は参院本会議で議論される、というブログを書いた。

こちらの改正道路法は無難に可決されたようである。

中身は5項目。

 

1 許可を受けた特殊車両は許可を不要とするもの・・・物流の生産性向上のため

2 特定車両係留施設、例えばバスターミナルなどを道路付属物として創設し、その管理はコンセッションを可能としたもの・・・バスタプロジェクトと民活のため

3 歩行者利便増進道路という歩道内に歩行者が滞留できる空間を位置づけ、占用の基準を緩和するもの・・・居心地の良く歩きたくなる空間のため

4 自動運転を補助する磁気マーカーなどを道路付属物や占用対象物件として位置づけるもの・・・自動運転推進のため

5 地方が管理する道路の災害時に国が代行する範囲を拡充するもの・・・強靭化対策

 

こんな感じ。

物流の生産性向上から自動運転、災害に対する強靭な国土づくり、という時代にマッチした改正内容。

一つ一つ、見ていきたいけど、今日は3番目の歩行者利便増進道路についてメモりたい。

なぜなら、つい先日、「クルマを捨ててこそ地方は甦る」藤井聡氏の本を読んだばかりなので。

その時のメモもブログにあるけど、再考するためにメモっていきたい。

 

 

まず、歩行者利便増進道路とはどんな制度か?

それは、歩道の中に歩行者の利便増進を図る空間を設けることができるようにする、という制度。

利便増進とは何か?

利便とは、使う人にとって都合が良い、とか便利である、という意味。

だから、歩行者にとって便利で、使うにあたり都合が良い道路、という意味。

なんとも、隠れた意図は知らないけど、意味深な言葉ではある・・・利便増進って。

 

歩道というのは、歩行者の通行に供する空間であり、それが第一義。

だから、遊べる空間みたいな表現にすると、通行に供する空間という考えとバッティングするので、利便増進という意味が分からない言葉を使っている気がする。

深読みかもしれないけど。

 

 

とりあえず、歩道の中に歩行者が滞留できる空間を位置付けたことは大きな意味を持つ。

ただし、どんな道路でも、歩行者の滞留空間を認めた、という訳ではない。

そのような空間を設ける道路を指定しなければいけない。

これは道路管理者、つまり行政の仕事となる。

 

次に、行政は指定にあたり、道路構造基準を策定しなければいけない。

どの位置に・・・例えば官民境界側に〇〇m分、とか歩車道境界側に〇〇m分、という具合に利便増進誘導区域というものを決める。

それだけではなく、その空間を占用して、歩行者の利便を増進してくれるような使い方をする者を公募しなければいけない。

ただ空間を位置づけるだけではダメで、どのような使い方を誰がするのかまで、決めなければいけない。

占用期間は20年間という長い期間を可能としている。

つまり、長期的に歩道を使い続けることができることになる。

20年間なのでそれなりの初期投資をしても回収できるレベルの整備も想定している、ということ。

 

真意は分からないけど、ヨーロッパにあるような店の前にしっかりとしたテーブルとイスを置いてコーヒーや酒を飲めるよう空間を作りたい、ということなのかな。

その場合、保健所の飲食を外で食べてい良い、という規制なんかもクリアしないといけないだろうか?

 

 

歩道だけではない。

民有地側にもオープンスペースの提供などを求めている。

滞在快適性等向上区域・・・という、これまた難しい言葉を使った区域を設定している。

こちらは都市再生特別措置法という法律改正により、民有地に対し税制特例や補助金など金銭的な支援を打ち出している。

自治体が、この制度を使うため、歩道を再整備する場合も、交付金による支援をうたっている。

 

 

つまり、歩道内に利便増進誘導区域を設け、民有地においては滞在快適性等向上区域を設ける、という両輪によって、「居心地がよく歩きたくなる」空間を作る、という施策となっている。

 

 

他にも、車両の乗り入れを規制することも可能としている。

これによって、その沿道に駐車場があっても、クルマは歩道を横切ることが出来なくなる。

つまり、この道路は歩行者が通行だけでなく、滞留して楽しむための道路だから、車道にも、なるべくクルマは入ってくるな、という意思の表れと捉えることができる。

なぜなら、国交省の資料によると、歩道に歩行者利便増進誘導区域を設けるため、車線を1車線削減する横断図が掲載されているから。

片側2車線の4車線道路を両側1車線ずつ削る。

 

 

少し、考えてみたい。

4車線も車線がある道路ということは、都市計画道路の可能性が高い。

そうなると、都市計画変更が必要になる。

そう簡単にできる問題ではない。

 

道路計画の時点で4車線が必要だったということ。2車線ではない。

ここが実は大きくて、道路の区分と級別によるんだけど、都市部の道路なので4種道路となる。

計画交通量が10000台以上だったのなら1級だし、4000台以上だったのなら2級となる。

ここでは仮に、歩行者利便増進道路として指定されるような道路は計画交通量が10000台以上のそれなりの幹線道路だろう、と考えてみる。

すると、4種1級道路を想定しているのではないか。

そうなると、設計基準交通量(交差点が多い)と考えると、12000×0.8=9600台

なので、計画交通量は9600台以下なら2車線となる。

しかし、4車線ある、ということは、計画交通量が9600台以上となる。

ちなみに、4車線の次は6車線となるので、6車線の場合は計画交通量が何台かを考えてみる。

次は「1車線あたりの設計基準交通量(交差点多い)」を考えると、12000×0.6=7200台となる。

つまり、4車線で収まるということは、7200×4=28800台/日 以下となる。

なので、4種1級道路で、4車線ある、ということは、計画交通量が9600台~28800台/日を想定していた道路、ということになる。

 

つまり、単純に4車線といっても、当時の計画交通量が9600台くらいで、現在は交通量が減少してきている、という状況ならば車線数の削減が可能かもしれないが、計画交通量が20000台を超えているような場合、仮に交通量が減ってきてたとしても、車線を削減することは難しいだろう。

もちろん、道路とはネットワークで考えなければいけないので、そう単純な問題ではないけども。

国交省も、今回の改定の前提では、バイパス道路の整備などにより、自動車交通量の減少が起きていることを前提のような書きかたをしている。

 

 

ここで、思い出したのが、「クルマを捨ててこそ地方は甦る」という書籍。

この本では、車線を削っても渋滞は発生しないことが、述べられている。

アメリカやイギリスやドイツなどでも、車線を削って渋滞が発生した事例は一つもないことが書かれている。

確かに、京都の四条通でも、一時は渋滞が発生したことがあったが、今では渋滞は発生していない。

あの渋滞はあくまで、調整プロセス上の一幕であったことが分かっている。

なぜ、渋滞が起きないのか、というと、人は新しい環境に合わせて行動を変えるから、ということが書かれている。

 

 

今回の国交省の歩行者利便増進道路、というものは、確実にこの本の考え方を施策に移したものといっていい。

もう1回、この本の感想を簡単に書くと

クルマというものは、大資本家たちがマーケティングを駆使して、ここまで暮らしの中にどっぷりと浸透した。

便利な乗り物がゆえに、クルマ利用を前提とした郊外のショッピングモールにお客を取られて地方は衰退していった。

クルマを街から追い出せば、賑わいが好きな習性をもつヒトは、街に再び集まってくる。

ザクっと書くとこんな感じ。

これが事例やデータを元にしっかりと説明されている。

 

この本を読んだ感想をメモっているので、参考までに。

書評「クルマを捨ててこそ地方は甦る」を読んだ感想

 

 

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