地域脱炭素という言葉をよく聞く。
これは環境省の取組み。
基本、再生可能エネルギーとは分散型電源のため、消費地の近くで小規模な発電装置を分散配置した状態で使用される。
系統連携を行う中小規模から、家庭用太陽光など低出力の小規模のものまで、様々である。
環境省では、地域資源である再生可能エネルギーを活用して、しかも大手電力会社が整備するのではなく、地元企業が設置、管理運用していき、自律的・持続的な社会を目指す地方創生の取組に資するものとして、地域脱炭素が進められている。
ここでは、環境省の地域脱炭素先行地域について、第1回の選定結果から、各地でどのような取組が行われているのかを見てみる。
まずは再エネをどうやって入手するのか、ここが肝になる。
再エネを手に入れなきゃ話にならないからだ。
再エネの調達方法
〇 非FIT電気の発電(宮城県東松島市・・・・)
宮城県東松島市の例では、防災集団移転元地を活用して、太陽光発電 (4,510kW)を導入し、オフサイトPPA等により非FIT再エネの地産地消を推進する
これは、オフサイトなので系統に流して、先行地域内の民生需要家に供給するとのこと。
これは非FIT電気を購入する、というより、自ら再エネ発電してFITやFIPを使わない、というだけのこと。
つまり、再エネ発電した電力を自家消費する場合は、すべて非FITとなる。
市の土地にPV設置して系統を使って、一般家庭に送る、ということ。
この場合、PPA事業を自らが実施するのか、どこかの事業者を公募して選ぶのか。
しかし、オフサイト自己消費ではなくオフサイトPPAということなので、この場合2パターンの方法がある。
小売電気事業者を仲介するタイプと、仲介業者なしの新制度を使うパターン。
新制度のパターンだと再エネ賦課金がいらないが、補助金がなかったりと一長一短。
〇 オンサイトPPA(宮城県東松島市、横浜市)
東松島市の場合、住宅屋根に太陽光をオンサイトPPAで設置するパターンも実施するらしい。
このPPAについては、もう少し確認がしたい。
おそらく、PPA事業者を公募して、エリアに再エネ導入を進める、ということだとは思うが、そして、その主体が東松島市が行うのか、共同提案者の地域新電力が行うのか、はたまたPPA事業自体を公募せずに自ら実施するのか。
同様に、横浜市もみなとみらい21地区でオンサイトPPAを実施するようだが、横浜市の場合もコンソーシアムが行うのか?
よくわからない。
ここで疑問なのは、住宅の屋根と言っても、PPAなどは行政関与の、事業で設置するようなものではない気がすること。
つまり、自治体の取り組みでありながら、住宅に手を入れる、ということは住民と話し合いがついた、という事?
PPA事業を行なっている事業者の民業圧迫はないか。
そもそも、自治体と個別の企業だけで進める場合、当事者間で話し合いがつけば良いが、住民を絡める場合、どこまで話がついているのか不明。
〇 FIT電力に環境価値をつけて再エネ電力として活用(高知県梼原町)
これは大手電力会社から環境価値をつけても再エネ価値としては同様。
違いは、地産地消となっているかどうか。
この取り組み自体は、CO2排出量の削減が主な目的か。
〇 卒FIT電気の購入(北海道上士幌町、さいたま市)
2019年より余剰電力買取制度(のちに固定買取制度に吸収)が終了した再エネ電気の活用方法を探し始める。
2019年の固定買取制度の価格が19円、2022年度で17円、一般の電力会社の電気料金が27円前後のため、自家消費した方が経済合理性がある状態となっている。
そのため、今後は卒FIT電気で自家消費した後の余剰電力をどう処理するのかを発電事業者(家庭も産業用すべて)は考える。
同様に、今後は当初からFIT制度を使わないで、自家消費するために太陽光を設置する需要家も現れるだろう。
さて、家庭の卒FITの余剰電力の行先は限られている。
・蓄電池で蓄電し夜間に自家消費する
・今までの電力会社に買い取ってもらう(現在は8円程度で買い取ってくれる)
・新たな新電力等に買い取ってもらう
となる。
では、3つ目の新電力以外に買い取る手段があるのか。
電力の購入は個人でもできるが、個人対個人では方法が分からない。
脱炭素先行地域の提案を見ていても
新電力会社的なものを設立しているのが、岡山県西栗倉村、高知県 高知県梼原町 、鹿児島県知名町。
どうやら、先行地域の応募のタイミングなのかどうかは分からないが、地域新電力の立ち上げを計画しているようだ。
卒FIT電力の購入を予定している先行地域は、北海道上士幌町(こちらも既存の新電力が買い取るらしい)、さいたま市(こちらは東電パワーグリッドが共同提案者にいる)がある。
これらから、事業者と自治体が連携するだけでは、誰が購入主体なのかわかりにくいので、SPC的なものを設立するのかもしれない。
その前に、脱炭素の事業では、自治体だけでは難しいのはもちろんの事、電力マネジメントのわかる事業者が必須となるが、それを一社で対応することはとても難しい。
一般にそのようなケースでは、コンソーシアムを組んだり、JVを組むことなる。
そのあたりは、後述する。
しかし、もっと根源的な問いがある。
それは、どうやって卒FIT電気を発電しているものを見つけるのか?
まさか、町を歩いて屋根に太陽光パネルを設置している家一軒一軒見て回るのか?
顧客獲得が難しい。
地域脱炭素ではないが、みの市民エネルギー(岐阜県美濃市の地域新電力)が卒FIT電気の買取を始めている。
〇 ごみ発電による自己託送(さいたま市)
〇 木質バイオマス発電やバイオガス発電(岡山県真庭市)
生ごみ等資源化施設を作って、生ごみ、し尿、浄化槽汚泥等をメタン発酵させてメタンガスとバイオ液肥に再生。
バイオガス発電設備を導入して、自家消費する。
バイオ液肥は市内農地で活用して地域資源循環システムを構築する。
このような電力の供給は地域新電力会社が行う。
これは、真庭市の製造業の30%を占める木材関連産業の活性化が目的となっている。
〇 街区内の全住宅に太陽光と蓄電池を設置(さいたま市)
これはPPA事業を始める、ということだろうか。
これには埼玉大学や芝浦工業大学のほかに東電パワーグリッドが入っている。
東電パワーグリッドは送配電事業者だが、どのようなスキームだろうか。
家庭向けには、太陽光1軒あたり、蓄電池とセットで200万円としても、100軒あれば2億円。
1MWのメガソーラーも2~3億円は設備導入だけで必要だろうから、そう考えると、可能といえば可能な金額かもしれない。
〇 既存新電力の活用(北海道鹿追町、宮城県東松島市、岡山県真庭市)
〇 地域新電力などの立ち上げ(岡山県西粟倉村、鹿児島県知名町、高知県梼原町)
26団体のうち、3団体が既存新電力会社を利用しており、3団体は新たに地域新電力を立ち上げるようだ。
しかし、よく見ると例えば、横浜市は脱炭素アクションみぞのくち推進会議会という組織を立ち上げている。
堺市は堺市カーボンニュートラル推進コンソーシアムを立ち上げている。
姫路市の場合、関西電力が共同提案者となっている。
自治体と事業者の場合、地域新電力のような核となる団体が不在の場合、新たに作るか、地域新電力ほどの規模ではなくても、推進会議とかコンソーシアムとか大手電力会社が実質進めるとか、そのような形になっているようである。
そうでない場合、PPA事業者を募って、たとえば公共施設の屋根にPV設置したとして、それのどこが地域脱炭素先行地域なのか分からない。
ちなみに、コンソーシアムとは、企業や組織、政府機関などからなり、ひとつの事業を遂行するために集まった団体、共通の目的に沿った活動を行う共同事業体
JVとの違いは、JVが複数の組織が共同で出資し、新たに事業を立ち上げること、合弁企業ともいうが、コンソーシアムの場合は、協力する仲間としての意味合いが強く、共通の目的に沿った活動を行う団体
なので、新電力会社などはJVとなる。
コンソーシアムの方が、JVに比べると緩やかなイメージがある。
法人格すら持っていないことが多い。
PFIでも、コンソーシアムを組んで応募して落札した場合、そのコンソーシアムの企業群がSPC、特別目的会社を設立して、役所と契約したりする。
なので、「コンソーシアム」を組む際は、協力関係を築くものの間で「コンソーシアム契約」を締結する。
「コンソーシアム」を設立する目的を明確にし、誰に協力を依頼するのか、候補組織の選定を行う。
一般に、契約締結先としては自社にはないノウハウや知名度を持つ企業となる。
◯ DRの実施(横浜市)
2024年から始まる容量市場への参加を狙い、エネルギーマネジメントシステムの一つであるDR、デマンドレスポンス。