地域新電力について その2

前回に引き続き、下記の本を読んで勉強していく。

「地域新電力 脱炭素で稼ぐまちをつくる方法」 著者 稲垣憲治 (学芸出版社)

 

各地域の地域新電力を見ていく。

〇 中之条パワー(群馬県中之条町)

2013年設立

日本発の電力販売を主力(家庭向けではない)とした地域新電力

つまり、当時はまだ、電力販売事業が中心の地域新電力はなかった、ということ。

経緯は、東日本大震災を受けて、群馬県中之条町は町立の再エネ事業を実施

太陽光発電 3か所6MW

小水力発電 135kW

これを町の事業として実施していた。

やがて、地域新電力会社を設立した。

これが、中之条町60%出資、Vパワー40%出資の「一般社団法人中之条電力」

Vパワーはパートナーとして公募により選ばれた。

この法人が、特定規模電気事業者として登録し事業を行った。

特定規模電気事業者とは、50kw以上の特別高圧や高圧需要家に対して電気を供給する事業者。

電力会社の送電線を利用する

特定規模電気事業者 とは、別名でPPS (Power Producer and Supplier) とも呼ばれている。

この事業者は、契約電力50kW以上で特別高圧や高圧受電の需要家に対し、電力会社の送電線を利用して電気を小売りする事業者のこと。

 

そして、この法人は、2年後に100%子会社の「㈱中之条パワー」を設立。

小売電気事業は㈱中之条パワーが行っている。

 

中之条パワーの特徴

・ふるさと納税として、中之条町産のFIT電気を中之条パワーから供給する取組をおこなっている

・ノウハウの地域化を目指し、Vパワーに対し、公募要領でも業務ノウハウ提供を要件としてた。

ただし、Vパワー自体が2013年設立の会社なので、ノウハウがあった訳ではないと思うが・・・

さらに、このVパワーは東京の会社なので、完全な地産地消にはなっていないような気が・・・

だが、双方で出資した会社がしっかりとノウハウを吸収して独り立ちできていれば、良いのかも。

・卒FIT家庭向けに、自家消費の余剰分を中之条パワーに0円供給契約を結んでもらい、中之条町から寄付電力量に応じて10円/kWhの地域通貨を進呈 → 卒FIT家庭の受け皿となる取組をスタート。

要は、FIT期間が終了したお宅の電気を自己消費分を除いた電気を役所で10円/kWhで買い取ってもらい、中之条パワーは無料でもらっている、ということになる。

これは、民業圧迫にならないのか、若干気になるが、第三セクターという会社がどういうものなのか調べる必要がある。

要は電気を税金で購入して、三セクに無料で流しているようにも見えるが・・・

・昼間の地産FIT電気の有効活用として、昼間の電気料金を割引したプランを民間低圧向けに開発

これは、昼間にFIT電気として購入しておいて、供給するときは、購入金額より若干高く売電するのだろう。特徴としては、昼間は電気料金を安くする、というが、どこの電力会社もやっているような気がするが・・・

 

〇 ローカルエナジー(鳥取県米子市)

米子市と境港市、㈱中海テレビ放送ほかの地元企業群の出資。

市の出資割合は10%未満で、㈱中海テレビ放送が指揮をとっている。

事業モデルは、米子市のごみ発電や民間の再エネ電源から電力を調達し、公共施設への供給をローカルエナジーが行う。

また、ローカルエナジーは中海テレビ放送が作った中海電力に電力を卸して、家庭民間向けに電力販売を行っている。

 

特徴としては

・VPPを構築

・JPEXの価格の高い時間帯は蓄電池から放電して、安い時間に買電して蓄電する。というEMSを実施

・需給管理を含めて業務の多くを内製化している

・成功要因として、中海テレビのケーブルテレビ事業との相性が良いこと → 営業、顧客管理、料金徴収、コールセンターなどを一元化していること

やはり、ケーブルテレビ事業との相性が良いのが決め手かと思う。

電力販売量ランキングでは、全国12位となっている。

 

〇 三河の山里コミュニティパワー(愛知県豊田市)

こちらは、地域課題解決会社という感じ。

その中の一つに電力事業があって、電力事業での利益を「たすけあいプロジェクト」に回す、という目的。

当然、地産地消はあると思われるが、電気事業が主目的ではない感覚を持った。(個人的感想だが)

 

〇 みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市)

2013年、塩漬けの市有地を活用して、みやま市自らも出資してSPCを立ち上げ、5MWのメガソーラーを設置。

その他、市内世帯の1/7にHEMSを設置。

2014年、再エネの地産地消をさらに進めるため、「みやまスマートエネルギー」を設立。

みやま市55%、みやまパワーHD40%、筑邦銀行5%という割合。

ここで疑問なのは、SPCではなく、地域新電力会社を立ち上げるメリットは何だろうか?

いわば、地域新電力会社もSPCのようなものではないのかな・・・

2016年、日本初の家庭向けの電力供給を開始。

その他、電力事業以外にも経営を拡大している。

・HEMSを活用した高齢者見守りサービス

・市内商店の品物宅配サービス

・地域食材が味わえるレストラン経営

・みやま市を超えた全国的な事業展開へ → その後、域内に集中するよう方針転換

急拡大した事業に人員や業務が追い付かず、問題噴出。

・今でも、電力販売量ランキングでは8位、低圧電灯向けでは、全国2位の販売実績がある。

しかし、思うが、それだけの電力を販売している、ということは、JPEXのスポット市場で購入していると思われる。

しかし、2021年より価格高騰により、契約したことが大きな損失を出している。

もし、JPEXで購入しなければ成り立たないスキームであれば、2021年の価格高騰によって、そのスキームは破綻したといえる。

 

 

〇 たんたんエナジー(京都府福知山市)

特徴は

・福知山市の本庁舎や公民館、小中学校に100%再エネ電力を供給している。

福知山城にも100%再エネ電力を供給していて、城への電力供給は全国初。

電力の調達は、卒FIT電気を買い取っているいるのである。

買い取り単価は10円/kWhと関西電力よりも20%ほど高いそうだ。

さらに買い取り契約をした家庭には、地産食品をプレゼントするキャンペーンなどを実施。

・市民出資型太陽光発電でのオンサイトPPA事業を開始

なぜか、この事業はたんたんエナジーの100%出資子会社が実施している。

1口1万円から最大30口を上限にしている。

市の公共施設の屋根に350kWのPV設置

また、蓄電池も設置し、さらにV2Bも導入している。

この場合、災害時は電気自動車から放電するための装置も必要となるが、最新のシステムと思う。

 

この会社には、FIT制度を使わない再エネ業者からも売電の打診があるとのことで、売電先を確保することは事業者にとっても重要な要素であり、市内にこのような地域新電力会社があると、再エネ導入にもつながる、とのこと。

 

福知山市はたんたんエナジーをエネルギー政策を推進するパートナーとして位置付けているので、上記のほかにも、公共施設への再エネ診断、環境教育などを行っているらしい。

 

個人的な感想としては、役所とのつながりが強い地域新電力会社は、他の民間だけの新電力よりも有利な条件が多くある。

これは、いってみれば税金の間接的な投入とみてよいと思う。

ただ、これが悪なのか?

電力というインフラを完全民間にまかせることのデメリットを防いでいる、ともとれる。

難しい問題だが。

 

まだまだ、地域新電力の事例はあるが、この辺にしておこう。

 

 

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