「都市構造の再編」の論文骨子の考察 ~模範解答1 (答案形式)について~

今日は技術士2次試験の勉強。

技術士論文(必須)の模範解答を見ながら、感想をメモることにする。

模範解答は下記の「株式会社 技術士合格への道研究所」のHPに掲載されている。

技術士試験合格講座「 技術士二次試験模範解答 2019年 建設 専門:都市計画」

 

技術士の令和元年の過去問(建設)は下記のサイトから。

公益財団法人 日本技術士会 過去問(第二次試験)建設

 

今日は都市計画の選択科目Ⅲについて。

都市計画は本業ではないので、選択するかどうかは迷うが、最近のブログで都市計画がらみのまちづくりについて、色々と記事を書いてきたので、すこし挑戦してみたい気がしている今日この頃。

とりあえず問題文を読んでみる。

 

 

問題文

鉄軌道を含む公共交通の分担率がある一定程度ある地方の都市圏において、都市圏全体を俯瞰する視点から、人口減少・少子高齢化を踏まえた都市の持続的経営を目的として都市構造の再編を進めることとなった。あなたがその計画策定を担当責任者として進めるに当たり、以下の問いに答えよ。

なお、都市構造の再編を進めるに当たっては、公共交通が都市の形成に影響を及ぼすことに着目し、公共交通の利用を前提とするものとする。

(1)都市計画の技術者としての立場で多面的な観点から計画策定に係る課題を抽出し、その課題を分析せよ。

(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。

(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

 

 

上のHP「株式会社 技術士合格への道研究所」から模範解答を抜き出して、それについてコメントをつけていく。

繰り返しになるが、まるで、ぼくが模範解答を添削しているような流れになるが、あくまでぼくは受験生。

なので、模範解答を見ながら勉強させてもらう意味で、コメントしていく。

コメントすることで、模範解答に対する自分の考えを発出できるから。

 

斜文字は上記のHPからの転記(模範解答部分)になる。

そこに➡で、コメントを書いていく。

 

 

まずは、いきなり模範解答を見るのではなく、自分ならどう展開するかを簡単に流れを書いてみる。

 

問1

人口減少と高齢化の現状において、都市を持続的に経営する目的で、都市構造の再編を進めるときの課題は何か、ということ。

この問題はこれからの都市を考えるうえでとても良い問題だと思う。

やはり、現代社会においては、新たに街を作ることよりも、市街化された街をどう再編するかが問われているから。

なので・・・そうなると、やはり立地適正化計画の出番だろう。

注意すべき視点としては、公共交通の利用を前提とする、とある。

この都市には鉄軌道による公共交通があるという。

地下鉄であればかなりの大都市になるし、路面電車ならば、県庁所在地レベルの都市だろう。

いずれにしても、それなりの都市であることは変わらない。

そのため、鉄道駅を中心に、都市機能誘導施設を集約することが都市の持続的経営として考えられる。

では、駅前を中心に集約すべき施設とは何があるのか?

材料が見つからない。

立地適正化計画をみれば、文化・スポーツ・国際産業交流・医療・高齢福祉・子育て・教育・商業が都市機能誘導施設となっている。

つまり、

・文化施設であれば、劇場、多目的ホール、映画館、博物館、図書館、美術館などである。

・スポーツ施設であれば、そのままスポーツ拠点施設やスポーツクラブ

・国際、産業交流施設であれば、MICE施設やイノベーション施設、ハイグレードなホテルなど。

これらの施設が老朽化してきて建て替えにあわせて、まちづくりを進めることが良さそう。

Ⓐ これらの施設を建設する用地の確保は課題である。

Ⓑ 建設費用を捻出することも課題である。

Ⓒ メンテナンスを確実に行う体制確保、費用確保も課題である。

Ⓓ これらが確実に利用される、都市にとって有効活用されることも課題である。

 

よし、課題の抽出はできた。

 

 

問2

上記Ⓐ~Ⓓの課題を解決するための複数の解決策を示す。

が、論文では重要な課題を一つ上げ、そのための複数の解決策である。

となると、複数の解決策が答えとなるような課題を示さなければいけない。

逆説的な考え方になるが、一度、上記の4つの課題の解決策を考えてから、再び課題を抽出する、という方法を執ってみたい。

Ⓐの解決策は、空地の集約や老朽化した民間施設や公共施設の統合による種地の掘り起こし

Ⓑの解決策は、PFIやPPPによる民間活用になる

Ⓒの解決策は、これもPFIやPPPによる民間活用になる。

Ⓓの解決策は、エリアマネジメントによる地域との連携になる。

 

この段階で問1に戻る。

このような解決策を書きたいがための課題を考えてみる。

すると、例えば財政難という課題はどうだろうか?

財政難であり、公共において用地を確保したり、施設建設、その後のメンテナンスへの費用を捻出できない。

いかにして、コストをかけずに、駅周辺に都市機能誘導施設を集約するかが課題となる。

 

 

問3

リスクといえば、何があるのか?

ぱっと思いつくのはコロナである。

感染症により都市機能誘導施設を建設しても使われない社会が到来した場合、どうするのか?

飲食店を中心とした商業施設など壊滅的なダメージを今回受けた。

飲食店だけではなく、とにかく人が集まるような施設、不要不急と呼ばれるようなエンタメ施設は厳しい業況にさらされた。

美術館も図書館もすべて同じ。

となると、感染症対策やデジタルを活用した施設の在り方を検討しなければいけない。

これは確実に共通するリスクだろう。

 

 

もう一つ挙げるとするなら・・・災害ハザードエリアに鉄道駅がある場合。

この場合、鉄道もろとも移転させるつもり?

それは不可能である。

さて、どのようにして都市機能や居住を誘導していくのか、そこの視点が必要だろう。

そこが論述すべきポイントになると思われる。

それに対する複数の解決策となれば、やはり浸水想定区域であれば土地の嵩上げに対する補助など。

土砂災害警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域であれば、移転への補助がある。

つまり、ハード整備だけで守るのではなく、ソフト対策、つまりまちづくりと一体で災害ハザードエリアへの対応を進めることが必要。

ただ、この災害ハザードをリスクとして持ってくる場合、よほど、しっかりと繋ぎの言葉を入れないと、唐突感は否めない。

そこは注意すべきと考える。

 

 

このあたりで、模範解答をみてみたい。

斜め文字は、HP「株式会社 技術士合格への道研究所」の転記になる。

 

 

(1)計画策定にかかる課題の抽出と分析

( 1 ) -1 駅前拠点への集約化

インフラのメンテナンスを低減して、人口減少社会に対応したまちづくりが求められている。そのため、都市の持続的経営を目指してコンパクトプラスネットワーク化を図るため、駅や道路等のインフラを集約する必要がある。

具体的には、駅前密集市街地等を更新しつつ公共交通ネットワークを整備し、様々な拠点へ機能を集約化する。

( 1 ) -2 地域医療ネットワークの拡充

高齢化社会で高齢者の増加により、地域医療ネットワークの拡充が求められている。そのため、駅前を中心とした地域包括ケア医療のネットワークを拡充する。

具体的には、都市機能誘導区域内に特定用途誘導区域を設定して容積緩和した医療拠点を整備する。

( 1 ) -3 エリアマネジメントの充実

人口密度の低下に伴う財政制約により、行政の人出が不足していることから、官民連携して地域活性化が求められている。そのため、地域と連携したエリアマネジメントを充実させる。

具体的には、誘導区域内の民地や道路等を活用したイベント等により交流人口を増加させて、地域の価値を向上させる。

 

➡ さすがに模範解答である。

これを書いた人はどんな職種の人だろうか。

駅前の拠点に都市機能を集約するところまでは、ぼくも思いついた。

でも、2つ目の「特定用途誘導地区」を設定して容積率緩和して医療拠点を整備する、は思いつかない。

これって都市機能誘導地域に適用できるもの。

その目的が地域包括ケア医療ネットワークの拡充。

地域包括ケア医療という語句をぼくはよく知らない。

地域包括医療ケアを調べてみると、健康な時から病気になるまで、つまり人生を包括する医療ケアのこと。

駅前を中心に、この拠点を設けることで健康寿命を延ばそう、ということなのか。

3つ目は、誘導区域内の民地や道路を活用した「エリアマネジメント」を活用する。

確かに、エリアマネジメントが叫ばれるようになった背景には、持続的な都市経営というものがある。

なるほど、勉強になった。

 

 

(2)駅前拠点への集約化の解決策

(2)-1民間の力を活用した再開発

駅と接続した駅ビルに行政、商業、医療等の機能を含む民間の力を活用したBTO 型の再開発を行う。この場合、再開発の整備費を民間が負担し、維持段階で行政が返済することで財政状況の低下を抑制することができる。

(2)-2公共交通沿線居住施設推進地区で居住誘導

居住誘導区域にある駅周辺を、公共交通沿線居住推進地区に設定し、バスの停留所等を半径300m以内に配計画することで地域住民が移動しやすくする。この場合、バス事業者と住民が連携してダイヤを変更するサポーターズクラブで、住民の利便性を確保し、空車率を低減し公共交通の無駄を無くす。

(2)-3駅前の歩行空間整備で駅周辺へ誘導

駅から周辺への来街者を増やすよう、駅前にペデストリアンデッキを整備し安全な歩行空間を整備する。この場合、駅周辺にトランジットモールを併設し市民の歩行の機会を増やして交流人口を増やす。

 

➡ 解決策については、少し消化不良。ぼくの知識不足かもしれないが。

まず、この模範解答では、最も重要な課題を駅前に拠点を集約することだと訴えている。

ここでは「駅前拠点への集約化」をもっとも重要な課題としている。

なので、地域医療とエリアマネジメントは落としたわけだ。

そして、駅前に拠点を集約するための解決策としては、1つ目が「BTO型の再開発」

これはPFI方式のBTOのことだろう。Build Transfer Operate。

民間事業者が施設の建設を行い、公共に所有権を移転する。その後の維持管理と運営を民間事業者が行う手法。

PFI方式ではもっとも一般的に行われている手法である。

行政施設、商業施設、医療施設の都市再開発、これらの再開発の整備を民間負担で行い、維持管理を行政が返済する、という。

再開発の整備については、土地が民有地なのか公共なのかにより、整備主体が変わると思われる。

また、行政施設をPFIで民間が整備するのであれば、整備費用は公共で出すのだろう。

ぼくが論文で書くのなら、公共の土地を定期借地として貸出し、民間企業が民間施設(ホテルなど)を建設するのだが、一部エリアを図書館などの公共施設としての機能を貸してもらう手法はどうだろう。

この場合、土地の借地料とホテル建設費と図書館などのエリアを借りるのかどうかで千差万別のスキームが考えられる。

行政の土地と民間の土地を合わせて、柔らかい区画整理(最近勉強したやつ)を実施する、というのも面白い。

整備する施設も医療施設に限定するのではなく、その土地の強みを活かした施設、強みを活かした都市経営をすることが求められているはず。

駅周辺に新しく医療施設を設けることも良いとは思うが、その駅周辺が持つポテンシャルの最大化を図る誘導施設が良いと思う

例えば、学生の街、サラリーマンの街など特徴のある街だと、強みを引き出せそうな気はするが。

 

模範解答の2つ目は「公共交通沿線居住推進地区」なるもの。

ぼくは知らなかったので調べてみたら富山市の中心部でそのような施策が取られているらしい。

これが特定用途誘導地区のようなものなのか分からない。何らかの規制を緩和するものなのだろうか?

そう考えると、この問題のように都市の再編を検討する場合、都市再生特別措置法による地域地区である特定用途誘導地区を縦横無尽に使いこなせるようになる必要があるのではないか、という気がしてきた。

そのためには、各都市でどのような種類の特定用途誘導地区が活用されているのかを調べておく必要がありそう。

さて、300mごとにバスの停留所を設けることは良いが、採算は問題ないのか。

さらに、住民がバス事業者とともにダイヤを変更することは可能なのか。

また、それは効果的なのかが不明。

今回の設問文からみるにコミュニティバスやデマンド交通を整備するほどの過疎地ではないだろう。

そうなると、持続的な都市経営を行ううえで、公共交通を活用する施策を打つ場合、現在だとLRTやBRTの整備はどうだろう?

富山市ではLRTが走っているし、宇都宮市でも現在、LRTを整備中である。

BRTになると、その定義が抽象的なので、各都市に様々なバス通行施策を行っているが、どれがBRTに該当するのかが不明瞭。

ただ、レールを設置する訳ではないので、導入についてはLRTとの比較においては容易ではないだろうか?

おそらく富山市のLRTはこの「公共交通沿線居住推進地区」と関連があると思われる。

 

最後に駅前のペデストリアンデッキについて。

これはぼくは反対である。

新しい施設の整備は不要と思われる。

ハード整備が不要といっているのではなく、再編や利活用する上でのハード整備は良いと思うが、デッキなどの新施設を整備するのは避けたい。

いくら中心市街地に人口を集積するといっても、人口密度を維持するレベル。

ぼくが論文を書くなら、あえてペデストリアンデッキは書かずに、ソフト施策で対応する。

トランジットモールについての記述もあるが、これは効果的と感じる。

大げさではないハード整備を行ったのちに、ソフト対策を打つことで効果を出していきたい。

 

 

 

(3)リスクと対策

(3)-1駅の混雑

駅に機能が集中しすぎて駅が混雑する。そのため、都市機能誘導区域間を結ぶ公設民営型のBRTを整備する。この際、トランジットモールやバスターミナルと連動させて駅とバスの動線を明確に分ける。また、駅とバスをつなぐペデストリアンデッキには高齢者等の移動のためバリアフリールートを整備する。

(3)-2周辺地域に人が集まらない

駅周辺のみに人が集まるが、周囲の地域に人が集まらない状況となる。そのため、駅前、周囲の商業地、商店街等を公民連携開発区域に設定して公共用歩廊等を整備し、人の流れを作る。この際、周辺地域同士がまちなみ協定を締結し、統一感のある街並みを活かして駅前からの道路上にエリアマネジメントによる広告や休憩施設を整備し地域活性化する。

(3)-3駅から離れた居住誘導区域への公共交通不足

駅から離れた居住誘導区域にデマンド交通を整備する。この際、地域に合った運行方式とすることが重要である。例えば高齢者が多い地域では電話による運行、又は事前に試験設置でITS等に慣れている場合はネットワーク型とする。都市部での相乗りタクシーの場合は、法制度が整っていないため法整備が重要である。

 

➡ ここは駅周辺に施設を集約することへの対策に対するリスクである。

BRTがここで登場している。

最初の課題の解決策にBRTを出すのはなく、ここで登場させるのか。

この3つ目のお題は、2で書いた複数の解決策に共通するリスクである。

そのリスクを3つも書けるとは感服する。

 

技術士の試験で出題されるこの「共通するリスク」を書かせるパターン。

ここは、あくまで共通するリスク。

出題者はどのような解答を求めているのかよく分からない。

立地適正化計画を進める上でのリスクをまず考えみてみるのも一つの手ではある。

もう一度、解決策を書くと

・駅前の民間再開発

公共交通沿線居住施設推進地区

・歩行空間の整備

共通するリスク??やっぱり思いつかない。

模範解答では、1つ目の駅周辺の混雑、2つ目がその真逆の賑わいが創出されないパターン、3つ目が居住誘導区域との連携

いや~、この3つをリスクと考える向きは、確かにぼくの視点からは完全になかった。

それに、リスクへの対策としてトランジットモールやエリアマネジメント、デマンド交通などの施策を書けるところは素晴らしい。

 

ただ、出題者が考える共通リスクというものが、駅の混雑というような個別の事なのか?という疑問が残る。

ぼくは、コロナ禍からのデジタル対応、または災害ハザードへの対応というような広い視点の方が良いような気がするのだが、デジタル対応や災害ハザード対応の場合、焦点がぼやけるというリスクはある。

それに、他の受験生と似たり寄ったりの論文になるリスクは非常に高い。

となると、テーマが同じ中で争うことになり、かなり洗練された文章力と説得力が試されることになる。

本来の技術力、発想力ではなく、文章力の戦いになりそう。

そんなテーマで書き出して良いのか。

悩む悩む。

 

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