日経コンストラクションの記事「転機の道路政策」を読んだので、ブログに書いておく。
今日のメモは少し専門的な話になる。
さて、日本の大きな道路政策は何か、と聞かれれば、1987年の第四次全国総合開発計画で決められた14000キロメートルの高規格幹線道路の整備計画だろう。
実はこれだけで説明しなければいけない用語がたくさん出ている。
まず、第四次全国総合開発計画とは国土計画のこと。
国土総合開発法に基づく国土をどうしていくか、という壮大な計画である。
次に、高規格幹線道路とは「国土開発幹線自動車道(いわゆる国幹道)」+「一般国道の自動車専用道路」+「本州四国連絡道路」をいう。
国土開発幹線自動車道とは、国土開発幹線自動車建設法という法律で整備される道路(いわゆる国幹道)で、いわゆる高速道路である。
「一般国道の自動車専用道路」とは後述するが、京葉道路などが有名。
これも一般的には、俗にいう高速道路に含めているのではないか。
この高規格幹線道路の計画が14000キロメートルに及ぶ、ということ。
この道路整備が2020年度末で87%の進捗率。
このペースで進むと2028年、つまり8年後には整備計画が完了する、ということ。
このペーストとは、毎年230キロメートルほど。
計画策定の1987年時で、整備率は4000キロちょっとだったので、この30年間で8000キロ近くを整備したことになる。
ぼくは、以前このブログで、リニアなど新幹線は地方を豊かにするけど、道路整備は地方から東京に物資を運びやすくしているので、地方の活性化という意味ではマイナスではないか的なことを書いた。
もちろん完全な個人的な見解。
今回の日経コンストラクションの記事でも、この30年間で高規格幹線道路整備の延長は3倍程度にまで増えたものの、東京一極集中はまったく是正されていない、と書かれている。
ここは、ぼくと同じ見解?
確かに東京一極集中は道路整備だけの要因ではないだろうが、全国に道路網を張り巡らしても、東京一極集中は止められなかったことは事実。
さらにページをめくると、話は変わり、記事は高速道路の有料区間と無料区間について解説してくれている。
事例として山陰自動車道を挙げている。
有料区間と無料区間が複雑に入り組んでいるケース。
その理由は路線の種類と整備主体による、とのこと。
高規格幹線道路の路線の種類は3種類
➀ 高速自動車国道 A路線
② 一般国道自動車専用道路 B路線
③ 高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路 A′路線
➀の計画延長は11、520km
高速自動車国道のネットワーク(A路線)として、全国料金プール制により整備
②の計画延長は2、480km
一般国道の自動車専用道路(B路線)として整備
三陸縦貫自動車道、首都圏中央連絡自動車道、中部縦貫自動車道、東海環状自動車道などたくさんある。
道路法の位置づけは一般国道である。
おさらいだけど、道路法の道路は4種類のみ。
・高速自動車国道
・一般国道
・都道府県道
・市町村道
ところで、あれっと思う人もいるかもしれない。➀と②で既に14000キロメートルに到達している・・・と。
③は、本来、高速自動車国道(A路線)として整備される予定の路線のうち、早期に全区間を整備する必要性は低い。
しかし、並行している一般国道で渋滞などが発生し、バイパス道路の整備が急務となっている路線。
これらは、高速自動車国道(A路線)の代わりに、一般国道のバイパス扱いで先行整備しましょう。
この道路をA’路線と呼びましょう、というもの。
これも、普通に走行すればいわゆる高速道路と変わらないが、法上は一般国道である。
なので、高速道路は上記の3種類の路線がある。
また、さっきから高速道路といっているが、正確には高規格幹線道路。
道路法上は高速道路は➀のみで、②③は一般国道になるから。
この段階でもかなり複雑になってきたが、次に、整備主体である。
NEXCO東日本などの高速道路会社ではないのか?と思うかもしれないが、もっと複雑。
ちなみに、高速道路会社とは、
・「東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)」「中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)」「西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)」
・「本州四国連絡高速道路株式会社」
・「首都高速道路株式会社」「阪神高速道路株式会社」
の6社である。
この6社が建設を行うが、道路の資産管理や債務返済は「独立行政法人 高速道路保有・債務返済機構」が行っている。
この高速道路会社と債務返済機構でお金がいろいろと動いている。
記事ではしっかり書いてあったけど、ブログではこれ以上は書かない。
とにかくややこしい。
もう一つ、ここで注意。「名古屋高速道路公社」や「福岡北九州高速道路公社」などは、自治体が設立したものなので、高速道路会社には当てはまらない。
ただ、走行すれば分かるが整備されている道路は完全に高速道路である。
しかし名古屋高速道路公社などが整備した高速道路もどきは自動車専用道路(都市計画法上)ではあるが道路法上は市道である。
一方、14000キロの高規格幹線道路は全て国道になる。
話を整備主体に戻す。
高速道路は上記の高速道路会社だけが建設するのではなく、国も自治体も建設する。
まず、高速道路会社が整備する場合、それは「有料道路事業」と呼ばれる。
その昔、道路は無料通行が原則だった。
しかし、1952年の道路整備特別措置法により有料化が可能となった。
そして、高速道路を整備して管理して運営するための組織として、日本道路公団が設立された。
この日本道路公団は、その後、日本道路公団民営化の流れを受けて
・東日本高速道路(NEXCO東日本)
・中日本高速道路(NEXCO中日本)
・西日本高速道路(NEXCO西日本)
・独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構
に分割(民営化)されている。
高速道路は「有料道路事業」として、これらの高速道路会社が整備するパターンが一つ。
もう一つは国が主体となって整備するパターン。
この場合は国の直轄事業として、つまり「公共事業」として整備する。
実は、このパターンで整備された道路は、通行は無料となる。
このように整備主体が異なることで有料区間と無料区間が混在することになる。
ちなみに、この高速道路会社が整備する「有料道路事業」であっても、利用料金を徴収して、建設にかかった費用を償還し終われば無料にする、という建前である。
なので、すべての高速道路は将来的には無料になる。
現在「独立行政法人 高速道路保有・債務返済機構」は、2065年までに返済が完了して、すべての道路を自治体に引き渡して、無料開放することになっている。
はずだけど、誰も信じていない・・・それは維持管理費の問題や赤字路線をたくさん抱えているから。
そもそも、自治体だって簡単には引き受けないだろう。
メンテナンスのためのヒトとカネを要求するはずである。
しかし、2065年なんて長期間が設定されている理由はなんだろうか。
住宅ローンでもそんなに長期間のローンはない。
その答えは、プール制という制度にある。
プール制というのは、複数の路線を一体として扱って、全体の料金収入で債務を返済していく、というもの。
つまり、黒字路線で赤字路線を補っていく方式。
事例として挙げられているのは、京葉道路。
赤字路線のアクアラインと一体化されたことで、京葉道路の整備費用の返済期間は15年間だったものが47年に延長された。
さらに、現在のすべての高速道路の返済期間65年の設定にも問題がある、と記事では書かれている。
この期間設定は、1980年代以降に整備した路線の大規模修繕を見込んでいないのではないか、というもの。
もちろん、大規模修繕だけでなく日常のパトロールや小規模修繕だってコストは必要。
かつて、民主党政権下で無料化社会実験が行われたが、その実験は東日本大震災の復旧費用捻出のため1年ほどで終了している。
そもそも、道路は無料であるべきなのか、高速道路は受益者負担により有料であるべきなのか。
その議論にしっかりとした結論が出ていない。
ぼくは有料で良い、と思っているけど、事実、当時の道路政策の専門家の間でも無料化には否定的な意見が多かったそうだ。
有料、無料の考え方は、費用負担の考え方により変わってくる。
どういうことかというと、料金を維持管理費として徴収するのか、高速で走行できるというサービスレベルの対価と捉えるのか、という問題。
そんなの、サービスレベルの対価として有料化すれば良い、と思うが、そう簡単に無料化の旗を降ろせない。
その理由とは、高速道路は将来的には無料にする、というのは国民との約束だから、という側面もあるが、もう一つ、固定資産税という問題がある。
道路を所有している日本高速道路保有・債務返済機構には、固定資産税が非課税となっている。
しかし、それは道路は将来的に無料開放することが前提だからである。
日本高速道路保有・債務返済機構(一応、建て前は民間会社)が有料で営業していくのであれば、その財産には固定資産税を徴収しなければいけない。
それは避けたい。だから、やはり将来的には無料化、としておかなければいけない。
・・・・なかなか難しい。
話を戻そう。ペコパ。
2005年の日本道路公団の民営化に際し、「有料事業」と「公共事業」の他にもう一つ、整備パターンが創設された。
それが「新直轄」というパターン。
これは、公共事業として国と地元自治体が事業費を出し合う手法。
基本的に、料金収入により整備・管理費が補えない採算性に乏しい路線・区間など、高速道路会社による整備・管理が難しい路線・区間が多い。
国が主体となる「公共事業」が直轄事業ならば、地元自治体と両者で負担するのは新たな手法、ということで「新直轄」方式、とよばれている。
沿線自治体からは、国直轄負担金として国にお金が流れる。
ちなみに、この新直轄方式で整備された高速道路は無料区間となる。
さらに整備手法として4つ目のパターンがある。
それは有料道路事業でも公共事業(新直轄を含む)でもなく「合併施工」と呼ばれる形態。
これは、国と高速道路会社が両者で事業費を出し合って整備するパターン。
有名なところでは、東京外かく環状道路(外環道)が合併施工で整備されている。
これは高速道路会社、つまり民間会社も関わって整備する、ということで有料道路となる。
さて、ここで整備する主体は何とか分かった。
有料と無料も違いが分かった。
ややこしいのは、この路線の3種類、それぞれに事業主体が変わる4パターンがあるので、複雑になっている。
ページを進めると、ここで記事では疑問を投げかけている。
①A路線は、高速自動車国道(道路法)だから有料でも仕方ない。
でも②のB路線と③のA’路線は、一般国道(道路法)だから無料のはずである。
しかし、②や③の路線でも有料事業(高速道路会社が整備)や合併施工(国と高速道路会社が両者で整備)などにより有料区間となっている。
と。
記事では、整備や維持管理の費用をだれが負担するのか、という問題を整理せずに、対処療法的に進めてきた結果であると、少し批判的に書いてあった。
さらに、ページを進めると、高速道路のことは終わり、新しく国交省が策定を始めた「広域道路整備計画」について話が進む。
2028年には現在の14000キロの高規格幹線道路の整備が完了する。
国交省としては次なる道路整備の計画を立ち上げよう、ということか。
建設業に身を置く自分であっても、まだ、高速道路って必要か?この人口減少社会に?と思ってしまう。
本当のところを国交省の役人に聞きたいぐらいである。
だから、広域道路整備計画についても、勉強がてらにメモしたいけど、もう4000文字を超えたので終わりにする。
実は、広域道路整備計画については、このブログでも過去に簡単に触れている。
広域道路整備計画については、いつか調べてしっかりメモりたい。
とにかく、利権が絡む道路行政は、これまで様々な要求を呑みながら進んできたせいか、あらゆるところで矛盾を孕んでしまっている。
といっても仕方ないこと。