柔らかい区画整理とは?

少し前のブログで、ぼくの近所で第1種市街地再開発事業が進められている(遅れている?)ということをメモった。

それに関連して、市街地再開発事業のお兄さん的存在である土地区画整理事業について調べてみることにした。

技術士論文などでも出される可能性もあると考え、通常の土地区画整理事業ではなく、最近流行の「柔らかい区画整理」というものを調べることにした。

「柔らかい区画整理」というテーマでは、立地適正化計画制度の「誘導施設整備区」という比較的新しい考え方も取り入れられている。

 

 

今日のブログも少し専門的な内容になる。

調べながらまとめるが、都市計画は本業ではないので、間違った解釈もあると思われる。

また、調べるといっても、国交省のHPに掲載されている下記のガイドライの要点をメモしていくだけになると思うけど、さっそく。

「小規模で柔軟な区画整理 活用ガイドライン」の策定について

 

 

まず背景は、人口減少社会により都市の既成市街地で「都市のスポンジ化」が進行。

スポンジ化というのは、歯抜け。空地があちこちに点在している状況をさした言葉。

駅前など都市の拠点となるべきエリアにおける都市のスポンジ化対策として、従来型ではない区画整理手法が求められるようになってきた。

従来型の区画整理というのは、狭く入り組んだ道路や畑が点在しているようなエリアを一気に面的に市街化していくイメージである。

しかし、現在は、そうではない「柔らかい区画整理」が求められている、ということ、らしい。

最近は、市街地を面的に広げていくのではなく、既に市街化された街を再編する場合に活用される区画整理が多くなっているらしい。

 

国土交通省は、従来型ではない「柔らかい区画整理」を進めるため「小規模で柔軟な区画整理 活用ガイドライン」を作成した。

といっても、もう2年前のこと。平成30年11月である。

 

今更ではあるが、土地区画整理事業というものを詳しくは知らないので、この際なので、このガイドラインを読んでメモしていきたい。

上にリンクを貼っておいた。

 

 

まず、土地区画整理事業では、照応の原則に基づき換地を定めることが原則とされている。

照応の原則とは、宅地の位置、地積、土質、水理、利用状況、環境、これらが照応しなければいけない、というもの。

もちろん、減歩があるので地積がまったく同じじゃなきゃダメ、という意味ではなく、地価が上がれば地積の減少は良い、など、照応していれば良い、ということ。

 

土地区画整理事業は

・「減歩を伴うもの」

・「道路に囲まれるなど一定・一体の施行地区が必要」

・「照応の原則により現位置換地にこだわる」

・「全体の面積に対し3%などの公園整備が要件とされる」

などの運用がなされている。

 

 

そのため、「位置」について、照応の原則によらず行われている「任意の集約換地」という区画整理もある。

しかし、この場合、あくまで任意なので、法定の土地区画整理事業とは異なり、全員合意がなければ進まない。

通常の区画整理事業では、地権者の2/3以上の合意のもと進めることができるが、任意の集約換地では、そうはいかない。

区画整理事業となると、行政の行う事業に近くなる。

組合施行(個人の集まり)にせよ、市施行(行政が主体的に行う)にせよ、都市計画決定されるので行政として必要性を認めた事業となる。

そのため、強制力が伴い、一定の反対者がいても、それなりには進む。

しかし、集約換地というものは、位置について照応の原則から外れるので、土地区画整理法で定める土地区画整理事業には該当しない、ということになる。

ただ、面的に区画整理するのではなく、一定のエリアの中で、点在している空き地などを集約して区画整理しようとすれば、どうしたって位置については、照応の原則は外れてしまう。

だから、法律のもと進めることができず、地権者の全員が合意するなら勝手にやってください、という状況だと思われる。

 

 

「任意の集約換地」についてもう少し。

この任意の集約換地は、地権者の全員合意があれば土地区画整理事業として認められる、という判例が出ている・・・でも、ぼくがよく分からないのが、この場合、交付金や融資制度などの支援策を活用できるのか、ということ。

土地区画整理とは他人の土地の権利を制限する制度でもあり、とても細かく事業要件などが定められている。

そのため、少し目的が違ったりすると適用が難しくなる。

適用が難しい、というのは、都市計画としての区画整理事業の場合、国からの交付金が出たり、事業にかかる経費について無利子融資を受けられたり、土地売買に伴う税控除や登記にかかる手続きが簡素化される、といったように支援策がたくさん用意されている。

これらの活用が難しくなる、ということ。

 

 

 

既成市街地の拠点エリアにおける代表的な手法として、集約換地の特例制度がある。

特例制度なので、任意ではない。

これは確実に法律上の土地区画整理事業として認められているもの。

それは

「市街地再開発事業区」と「高度利用推進区」を活用するもの。

これはそれぞれ、平成11年と平成14年にできた制度である。

これらは任意の集約換地とは違って、れっきとした土地区画整理事業である。

 

◇「市街地再開発事業区」の活用とは

市街地再開発事業と一体で行う事業らしい。

具体的には、土地区画整理事業で、高度利用を望む権利者の土地を「市街地再開発事業区域」に集約再編し、その区域の中で市街地再開発事業を実施する、というもの。

特定仮換地ということで、区画整理事業の完了を待たずに市街地再開発事業を実施できるらしい。

通常の市街地再開発事業の場合、地権者はすべて権利変換ということで、土地から床に変わるイメージがあるけど、おそらくこのタイプは、換地(土地として)を希望する地権者とマンションなど(床)として希望する権利者の両者がいる場合に有効な気がする。

 

◇「高度利用推進区」とは

土地の合理的かつ高度利用の推進という目的のために設定する。

これは用途地域が高度利用地区の区域、都市再生特別地区の区域又は特定地区計画等区域という条件がある。

 

 

今後の既成市街地の再生にあたっては、必要な地区を絞り込み、地区の課題にピンポイントで対応する小規模で弾力的な土地区画整理事業の実施が有効。

そのため、「市街地再開発事業」と一体とか、「高度利用推進区」のみに適用されるような特殊な状況のみ、つまり特例制度を使わずとも可能な土地区画整理事業が求められている。

次にそれらを紹介する。

 

 

その前に、しつこいが、従来型の区画整理とは、一般に道路等の都市基盤を整備するために公共減歩を行うのが通例である。

つまり、これまでの区画整理は新たに市街地を整備することが目的とされていた。

しかし、最近では、人口減少社会でのコンパクトシティを進めるため、区画整理を既成市街地の再生に活用するケースが増えている。

そのため、公共減歩を伴わず、公共施設用地の付け替え等により、公共施設の整備改善を図るなどの「柔らかい土地区画整理」が求められている、というもの。

広いエリアでの全面的な刷新整備ではなく、密集・老朽市街地の解消、道路・河川等の公共事業の前さばきとして活用されるようだ。

つまり、中心市街地の再生、駅前の拠点市街地の機能強化など、目的を絞った上で、その目的の実現のための一過程を担うひとつのツールとして区画整理を活用している。

より小さな区域で、より短期間で、より柔軟に、建築活動と連携しながら使われる、それが「柔らかい土地区画整理」らしい。

 

 

ガイドラインでは、たくさんの手法が挙げられている

◇ 敷地整序型土地区画整理事業

既成市街地において、少数の敷地を対象として、換地手法による区画整理事業である。

あれ?これは完全に集約換地のことではないか?

そうなると、権利者の全員の合意が必要なのか?

おそらく全員合意が必要と思われる。

また、交付金なども活用できないのではないか。この辺は不明確。

・区画道路の付け替え

・施工地区も敷地界で設定可能

・公園の面積要件なし

この敷地整序型土地区画整理事業は、柔らかい区画整理という位置づけになっている。

 

次に

◇ 柔軟な区域設定(敷地界、飛び施行地区、施行区域における段階的な施行地区設定)

物理的に離れている地区であっても、両地区が、密接不可分の関係にある場合は、飛び施行地区として捉えることが可能、とのこと。

少しびっくり、そんなエリア設定も可能なのか。

密接不可分とは

・都市計画道路の同一路線の未整備区間を含む等、公共施設のを一体的に整備する場合

・誘導施設等への参加者の集約、立地が限定される施設の移転先の確保、土地の入れ替えが必要な場合など、土地利用する上で密接不可分と判断される場合

 

 

◇ 立体換地

換地計画において、換地を定めず、施行者が処分する建築物の一部やその土地の共有部分を与える、とのこと。

んっ、普通の市街地再開発事業のことではないのか?

どうやら、類似したものらしい。

違いは、従前建築物は権利変換の対象ではなく補償物件扱いとなる点が市街地再開発事業と異なるらしい???

で?

よく分からないが、小規模・高齢者権利者を対象している点や素早く小規模共同化を進める場面において有効らしい。

この辺はギブアップ。

上記で書いた市街地再開発事業と一体で行う土地区画整理事業と何が違うのか不明。

 

 

「低未利用土地権利設定等促進計画」

これは平成30年7月の都市再生特別措置法の改正で施行された新しい制度。

空き地や空き家等の低未利用地は、地権者の利用動機が乏しい。

また、「小さく」「散在する」するため使い勝手が悪い。

さらに、所有者の探索に多くの手間と時間がかかる。

そのため、地域発意で何とかしよう、という気持ちになれない。

一方、これまで行政は、民間による開発・建築行為を待って規制等により受動的に関与をしてきた。

しかし、今回、新たに、低未利用地の利用に向けた行政の能動的な働きかけを可能とする制度を創設。

それが「低未利用土地権利設定等促進計画」である。

 

低未利用地の地権者等と利用希望者とを、行政が所有者等の探索も含め能動的にコーディネートする。

土地・建物の利用のために必要となる権利設定等に関する計画を市町村が作成し、一括して権利設定等を行う。

権利設定等とは、地上権、賃借権、使用貸借権の設定・移転、所有権の移転のこと。

これも柔らかい土地区画整理なんだとか。

 

 

最後に

◇ 空間再編賑わい創出事業

こちらも平成30年7月の都市再生特別措置法の改正に伴い施行された新たな制度になる。

まず、土地区画整理事業の事業計画に「誘導施設整備区」を定め、空き地等を集約し、集約した土地に医療・福祉施設等の誘導施設の整備を図る土地区画整理事業。

これも集約換地の特例となる。

こちらは交付金や税控除などもしっかり支援メニューを受けることができるらしい。

土地区画整理事業の事業計画において「誘導施設を有する建築物の用に供すべきもの」として誘導施設整備区を定めること。

新たな区画整理手法「空間再編賑わい創出事業」の概要

 

都市機能誘導区域という言葉で分かるとおり、これも立地適正化計画制度、つまり都市再生特別措置法の改正による。

この場合、任意ではなく法定の事業になるので、全員合意がなくても、計画的な集約換地が可能な手法となる。

もちろん、合意していない人であっても強制的に移転させられることになる。

移転したくない人にとっては厳しい制度になるが、まちづくりを進める上で全員合意を求めていては、結局何も進まない。

これは仕方ないことと思われる。

 

 

では細かく条件や事業の内容を書いてみる。

・ 立地適正化計画に記載された土地区画整理事業であること。

・ 都市機能誘導区域を土地区画整理事業の施行地区に含むこと

・  建築物等の敷地として利用されていない宅地又はこれに準ずる宅地(いわゆる空き地)が相当程度存在する区域内であること

・ 事業計画に「誘導施設整備区」を設定する

・ 区内に散在する空き地等を対象として、所有者からの申出に基づき、当該空き地等の換地を誘導施設整備区内に集約して定めることを可能とする

・ 照応の原則にとらわれず、誘導施設整備区内であれば、例外的に従前の宅地の位置にかかわらず、換地を定めることができる

・ 空き地等の集約・再編(整形化)により、まちの顔となるような医療・福祉施設等の誘導施設の敷地を確保できる

・  誘導施設整備区の区域は、誘導施設を有する建築物の整備用地となるので、導入する誘導施設の機能・規模に応じて定める

・ 建築物の床の一部に誘導施設を整備する場合も含む

・ 早急なスポンジ化対策のために進める場合、賑わい空間の創出にポイントを絞って、スポット的に小規模で機動的な土地区画整理事業として行う

・ 土地区画整理事業における税制上の特例措置を通常の土地区画整理事業と同様に適用することができる

  従前地の譲渡益課税の特例、換地取得の際の不動産取得税の非課税、換地処分のための登録免許税の非課税など

  国からの交付金(都市再生区画整理事業)の交付制度・都市開発資金貸付金の融資制度による支援を受けることが可能

以上が、賑わい空間創出事業とよばれるもの。

 

 

 

さて、今回は都市のスポンジ化への対策としての「柔らかい土地区画整理事業」を調べてみた。

特に、平成30年の都市再生特別措置法で創設された手法など、人口減少社会ではますます需要が高まる施策と思う。

とにかく奥が深く・・・

深すぎて、一つ一つの事業で1記事かけるくらいである。

ほとんど、まだよく分からない。

もう少し勉強して、今日のブログを再度、まとめなおした方が良いと思っている。

いつか、再度調べなければ・・・。

 

 

 

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