ソーシャル・インパクト・ボンドは活用できるのか

SIB

ソーシャル・インパクト・ボンド。

聞いたことがなかった言葉だけど、国交省が先行モデルとしてのSIBを活用したまちづくりを進める自治体の選定をしていたらしい。

新聞記事によると、その締め切りが先週あった、ということ。

 

もう締め切った、とのことだけど、SIBとはどんなものなのか?

ボンドとあるくらいなので、債券とかそんな金融商品のようなもの?

それとも、PFIなどと同じように資金調達の仕組み?

と思ったが、調べてみると、そう間違っていないことが分かった。

しかし、調べてみるうちに、様々な社会政策に通じる考え方として、とても参考になったのでメモしておくことにした。

 

 

SIBは、簡単にいえば、「成果連動型支払い事業」+「資金提供者に報酬の一部が償還される」システム。

成果連動型事業は、「経済財政運営と改革の基本方針」いわゆる骨太の方針にも、民間委託契約においては、成果連動型の支払いを推進していく、ということが謳われている。

つまり、発注者は仕様書通りの業務を行えば支払いをする、というものではなく、しっかりと成果が出ているのならば割増を払い、成果がでていなければ減額して支払いをするようなシステムを進めていきなさい、というもの。

内容を聞けば、そりゃそうだ、となりそうだけど、ことはそう簡単に運ばない。

 

 

 

まずは、従来型の仕様発注方式では何が問題なのか?メリット、デメリットを含めて見ていく。

メリット

・基準書に沿って積算され、受注者が仕様書通りに行えば、役所は何も問題はない → 問題がない、ということが役所の最大のメリット

・事業者は、結果によって減額されることはないので、資金繰りの計画を立てやすい

デメリット

・事業者は、努力しても委託料は固定なので、過少努力が誘因される → 社会全体にとって損失が発生

 

 

このように分解すると分かりやすく、発注者である役所にとってみれば問題がないので、わざわざ成果連動型事業を導入しようというマインドにならない。

事業者にとっては、努力しだいで増額されるのでメリットはある。

ただし、仕様書通りにやっても成果が出ていなければ、減額される。

 

 

今回も国主導で成果連動型事業の導入が検討されている。

今回の新聞記事は国交相のSIB活用モデル支援について、ぼくの目にとまったけど、SIB自体は何年も前から経済産業省などが主導して進められてきた。

 

 

 

簡単にスキームを説明する。

ステークホルダーは5者。

行政、事業者は当然だけど、あと3者。

一つは受益者。これは国民とか住民とか利用者とかいった人たち。

さらに、第三者機関。

これは、成果が上がったのかどうかを第三者が評価するための機関。

最後に、事業者が外部資金調達を行う場合の資金提供者。

これは銀行の場合もあれば、投資家の場合もあるだろう。

 

このように主に5者が関わるので、通常の委託契約よりも複雑な手続きが必要になる。

つまり役所側はやりたくない作業となる。

社会が良くなることよりも、自らの業務が問題なく手軽に進められることが最重要と考える役所では当然だろう。

 

次に、SIBの成果とは何か?

それは社会的インパクトのこと。

社会的なアウトカムのこと。

事業の結果(アウトプット)から社会がどう変化したのか、どのような効果(アウトカム)をもたらしたのか、が社会的インパクトである。

つまり、成果が上がったのか、そうでないのかを評価しなければいけないのだが、そこが難しい。

 

メリット・デメリットをまとめる。

・ 成果の発現に時間がかかるような事業の場合、委託期間が長期間となる

・ 事業者の改善努力を促し、きめ細かな創意工夫が図られる

・ 役所は成果がでなかった事業には支払い義務が生じない

・ 真に成果を出せると自信をもった事業者だけが応札する

・ 事業者は、成果未達の収益リスクの一部を資金提供者に移転することができる

・ 民間資金提供者も事業者をモニタリングするため、成果達成にむけて事業者の背中を後押しする人たちが存在する。

 

 

本来は、公共事業とは税金で行われているので、国民(県民、市民)は役所の行う事業が、社会的効果のある成果を出せたのかに関心を持つことは当然である。

しかし、実際には、目的税以外の税金は一度プールされてから執行されるので、実際に、直接支払った税金が何に使われているのかが見えない。

すると、一般の国民は何も感じなくなる。

そうでなければ、コロナ騒ぎでの税金バラマキは確実に国民に跳ね返ってくるのだから、もっと怒る場面があっても良い。

例えば、GO TO トラベル。

ぼくはGO TO トラベルは賛成の立場だけど、東京都の人はもっと怒ってもいい。

東京都の人も払っている税金が東京都以外の人がお金を貰える制度に変わったわけだから。

でも、あまりそこには意識というか考えが至らない。

制度を利用する側は気付かず、制度を作る側はしっかりと意識していて、どうせ気付かないだろう、というところまで踏んだうえで実行している可能性がある。

 

 

 

話が逸れた。

SIBに戻そう。

さて、SIBを導入する場合の課題は何か?

・ 成果を適正に評価することが困難 → 正確な評価をするために時間とコストがかかる

・ 報酬の支払い条件を設定することが困難 → どれだけの成果でどれだけの支払い上限になるのか?

・ 予算を想定できないので役所の制度的に困難 → 予算は余っても足りなくても面倒。予算どおりに使い切りたい

・ 事業と成果の因果関係が不明瞭 → アウトカムの場合、たまたまなのか事業者の成果なのかが分かりにくい

・ 事業者をどのようにして選定すべきか → 公平性、透明性も必要だが、適確な事業者とはいったい?

 

このような課題をクリアしようとすると、おそらく短期的には時間もコストもこれまで以上にかかり、本末転倒に陥るリスクがある。

何といっても、事業を実施するのがグーグルやアマゾンなら問題ないことも、役所がやると、とんでもない方向に進む。

どの団体からも文句が言われないように進めた結果、誰も得も損もしない結果に終わることが多い。

ただ、その検討時間と検討費用が無駄になって終わるケース。

 

一応、プロセスを書いておく。

1 事業テーマを検討する → 役所

2 テーマにあった具体内容の提案 → 事業者

3 成果指標と委託料との連動条件の設定 → 役所+有識者

4 資金調達のスキーム検討 → 事業者+投資家?

5 公募 → 役所

6 事業実施 → 事業者

7 評価 → 役所+第三者機関

8 委託料の支払い → 役所

 

となる。

書けば簡単だけど、一つ一つに前例のない取り組みになるため、有識者会議を開いたり、国に制度上の問題点を確認したり、議員や地元有力者と調整をしたり、さらには財政部署との調整など、最後までたどり着けるかは読めない。

考えすぎかもしれないが、支払い段階では、こんな議論だって起こるだろう。

アウトカムが定められた事業、やっとスタートできたとして、事業者が圧倒的な知恵を出してきて、ほとんどコストをかけずに成果を出した、としよう。

役所はこの事業者に支払いを大幅減額を求める可能性はないだろうか?

なぜなら、事業者がほとんどコストをかけずに達成してしまった場合、契約時の設定に問題があったのではないか、とオンブズマンから追及されるのを役所は恐れるから。

今は個人が訴訟される場合もあり、そのあたりは役所にも言い分があるだろう。

逆に、事業者側はそのような減額協議を面倒くさがり、そのような知恵は封印してしまう場合もあるかもしれない。

そうなれば、成果連動型とは名ばかりのモノになってしまう。

つまり、この制度も実際に実施しようとすると、越えないければいけないハードルは多い、ということ。

 

ただ、それを恐れていては、新しいことは全くできなくなる。

何とか、国交省は自治体の重い腰をあげるよう、頑張ってほしいものである。

 

 

 

 

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