市街地再開発事業をメモる

近隣で市街地再開発事業が進んでいる。

いや、進んでいいないのか?

詳しくは分からないが新聞報道によると都市計画変更により事業期間を延伸させた、とのこと。

ということは、やはり進んでいないようである。

 

 

なので、今日は市街地再開発事業をメモることにする。

市街地再開発事業とは都市計画法に位置付けられた都市計画の一つである。

都市計画は11種類ある。

スタートは4種類だった。

・区域区分・・・いわゆる「線引き」といわれるもの。市街化区域と市街化調整区域に分けること。

・地域地区・・・用途地域、特別用途地区、高度地区など覚えるのが大変で有名な地域地区。

・都市施設・・・道路、公園、上下水、河川、学校、図書館、病院、保健所、市場、屠畜場、火葬場など。

・市街地開発事業・・・土地区画整理事業、市街地再開発事業など

である。

今は、この他に7種類追加して11種類あるけど、市街地開発事業はスタートの4種類の一つなので、元祖・都市計画ともいえるものである。

 

 

市街地開発事業の中には、土地区画整理事業や市街地再開発事業、防災街区整備事業など7種類もある。

都市計画法のややこしいところは階層、レイヤーが分からなくなるところ。

市街地開発事業という大きな都市計画の中の一つの手法として、市街地再開発事業がある。

再が付くかどうかの違い。

このように語句に再が付くかどうかで、階層が違う。

これと同様に混乱するのが、地域地区。

都市計画である地域地区の手法の中の一つに用途地域があり、その用途地域の中に第一種低層住居地域などがある。

地区と地域が入り乱れて、どちらが大きなカテゴリーなのかが混乱する。

 

 

とにかく、市街地再開発事業は都市計画の一つの手法なのである。

しかし、ここからが都市計画法の難しいところ。

この市街地再開発事業は都市再開発法に基づき進められる。

あれっ、都市計画法じゃなかったのか、と思われると思うが、それもそのはず。

都市計画法は名称や決定権者などを定めるが、詳細なことは個別法にゆだねている。

個別法とは道路法、河川法、都市公園法、土地区画整理法、建築基準法・・・・などなど。

その中の一つに、都市再開発法があり、その法の中で都市再開発事業が詳細に定められている。

 

 

ではこの事業の目的は何か?

老朽木造密集地を合理的かつ健全な高度利用に変え、都市機能の更新を図るもの、とされている。

簡単に言えば、古い木造の建物が集まっていて、火事の危険もあるし、道路も狭い、公園もない、そんなエリアは一度、バラバラにして作り直しましょう、というもの。

そういう意味では、土地区画整理事業と似ている。

違いは、従前の土地を取られて、少し削られて(減歩)、代わりに、新しい土地(換地)を貰えるのが土地区画整理事業。

従前と比べて新たにもらえる土地は減る(減歩率)が、周辺道路は広くなり公園などができて土地単価は上がるので、基本的に面積は減るがトータル価値は向上する、と言われている。

一方、市街地再開発事業は、従前の土地は取られて、代わりに、新しい再開発ビルやマンションの一室なりをもらえるもの。

減歩という考え方ありきではなく、土地を集約して、高層ビルやマンションを建てるので、等価でその床をもらえる。

結果として、面積が減り減歩と同じような結果、つまり面積が少し削られることはあるが、考え方としては権利を変換していることに重きを置いている。

これを等価の権利変換方式ともいう。

なので、土地区画整理事業と都市再開発事業とは、新たな土地を平面でもらうか空間でもらうかの違い。

 

 

もう一つのポイントは市街地であること。

土地区画整理事業は、かなりの田舎というイメージがある。

田畑が多いような田舎じゃないと、すでに市街化が進んでいる所の場合、権利関係が複雑すぎて事業が進まなく頓挫する恐れがある。

一方、都市再開発事業はすでに市街化された地域に適用される。

一軒一軒の要望を聞いて換地計画を立てていく、というよりも大きなビルを建てて、その中に押し込めるイメージ(表現が悪いが)

都市再開発事業は土地の45%以上を道路や公園などにすることが求めれているので、かなり公共施設が増えることになる。

 

 

木造密集地で再開発したい、と思った土地所有者は、一定のエリアで集まって話し合い、2/3以上の同意を得て事業を進めることができる。

もしかしたら、不動産開発などのデベロッパーが提案する場合が多いのかもしれない。

しかし、都市計画の一つの手法なので、決定するのは市町村になる。

自治体が決定する、ということは、このような事業を進めることは公共的価値がある、と判断する、ということ。

そして、都市計画決定されると、事業認可という事業を進めて良い、というお達しがきて、組合などを設立して事業を始めることになる。

そこまでくると、事業に対しても補助金がもらえる。

それは、自治体が公共的価値があると判断したのだから、補助金を出してでも、事業を進めてもらおう、という考え方に基づく。

また、道路や公園などは本来は公共が整備すべき施設。

これを役所に変わって整備してくれるのだから、その部分については公共施設等負担金という形で補助金を出すのである。

道路や公園だけでなく、事業そのもの、つまり高層ビルなどの建設の為の調査設計費、解体費・補償費、建築工事費の一部に対しても補助金が出る。

 

 

 

次に、収支を見てみると。どんな事業もお金がかかる。

再開発組合を個人や1家庭と見なすと、収入は、この補助金と保留床処分金である。

保留床処分金とは、従前の土地所有者全員にマンションやオフィスを与えても、余りある部屋数を確保できるので、その部分は第三者に売って、組合の儲けにしましょう、というもの。

 

一方、支出は、調査設計費、解体費・補償費、建築工事費、事務費や利子などである。

これらがトントンになれば事業が成り立つ、ということ。

事業が成り立てば、木造密集地に住んでいた住人は、新しい高層ビル(再開発ビル)のオフィスやマンションに住むことができる、というスキーム。

 

 

では、何でスムーズに進まないのか?

ぼくの近所の市街地再開発事業も事業期間を延伸しているように、計画どおりには進まない。

理由は

新しい建物の評価が高くなると、交換される床は、現在よりも小さくなる可能性がある。

すると、そこで地権者同士でもめる。

保留床が当初想定したよりも評価が低くなると、その価格で売却できず、事業収支が赤字になる。

そうなると、また地権者同士でもめる。

このご時世、当初の計画通りの土地なり床なりの評価で進むことなど、そうそうない。

想定の評価価格より高くても安くても揉めている。

土地区画整理事業よりはマシなのかもしれないが、当然、人間同士の感情が入ってきて、大混乱に陥る。

市街地再開発事業の場合、近年では、公共施設の統廃合と絡めて話が進むことが多く、これまた事業が遅れる原因である。

そして、事業が遅れれば遅れるほど、金利がかかってくる。

なぜなら、事業をスタートする時点では、事業主体となる組合には、収入が国や自治体からの補助金しかない。

高層ビルが建設されて初めて、保留床を売却できて収入を得ることができるようになる。

だから、最初はみな、銀行などから借金をして事業をスタートするのだが、事業が遅れて金利が膨らみ、さらに地権者同士が「こんなはずじゃなかった」ともめる。

この負のスパイラルに陥ると、皆が血を流さなければいけない。

さんざん血を流した後に、自治体が最後は処理する場合もあるが、これとて税金である。

 

 

事業の目的や概要を聞くと、なるほど、合理的な事業だと、思うのだが、実際はどろどろとした事業である。

理屈だけを考えると、皆がハッピーになれそうなのに、実は皆が不幸になることが多いのは、そういう事情である。

 

 

最後に、市街地再開発事業は第1種事業と第2種事業の2種類があることをメモる。

この違いは「権利変換方式」か「管理処分方式(用地買収方式)」

上でメモった内容は基本的には権利変換方式。

市街地再開発事業は、ほとんどが第1種事業であるが、第2種事業も中にはある。

用地買収方式で行なう「第2種事業」は、重要な公共施設整備に併せ環境整備及び都市機能の更新が必要な地区。

いわゆる公共性、緊急性の高い地区に多く適用される。

 

第1種事業は個人や組合でも設立可能だが、第2種事業の場合、再開発会社か地方公共団体か都市再生機構か住宅供給公社などでなければならない。

公共性が高い、ということ。

いったん施行地区内の建物・土地を施行者が買収又は収用する。

最初に自治体なりが買収してくれるので、土地所有者からしたら、取りっぱぐれることはなくなる。

施行者とは地方公共団体などである。

なので、どちらかというと採算の取れないエリアだけど、木造密集地で土地の高度利用を図ったほうが良い、と思った自治体が、自ら乗り出すようなイメージを持つと良い。

買収又は収用された者が希望すれば、その対償に代えて再開発ビルの床を与える。

保留床処分により事業費をまかなう点は第一種事業と同様となる。

 

 

最後の最後に、この第2種事業の施工者にもなれる都市再生機構、という存在について。

正式名称は、「独立行政法人 都市再生機構」

愛称は略称を冠した「UR都市機構」(ユーアールとしきこう)。

大都市や地方中心都市で動いている。

市街地の整備や賃貸住宅の供給支援、UR賃貸住宅(旧公団住宅)の管理が仕事。

主な収益はUR賃貸住宅の家賃収入や市街地整備による土地の売却益である。

国土交通省所管の独立行政法人。

前身は日本住宅公団。

2004年7月1日、都市基盤整備公団(通称:都市公団)と地域振興整備公団の地方都市開発整備部門が統合され、設立された。

運営形態、業務範囲などは独立行政法人都市再生機構法によって定められている。

 

高度経済成長期の1955年に、中産階級に良質な住宅を供給する目的で国の住宅政策の一環として公的資金を投入した「日本住宅公団」として発足。

その後、1999年に、住宅政策の落ち着きにより、住宅共有よりも都市整備に重点を置く「都市基盤整備公団」に再編される。

役目が終わっても、新たな役目を与えて存続させた訳である。

2004年には行政改革の一貫として、都市基盤整備公団と地域振興整備公団を統合した「都市再生機構」に改められた。

 

独立行政法人とは、中央省庁から独立した法人組織。

行政的な役割も担っている。

公共の見地から事務や国家の事業を実施する。

省庁から独立しているが、主務官庁が独立行政法人の中長期計画策定や業務運営チェックに携わる。

2004年に法人化された国立大学も広義の独立行政法人。

 

 

 

最後は、豆知識的に独立行政法人である都市再生機構について、メモっておいた。

少し勉強すると、どんどん他の知識が不足していることに気付く。

 

 

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