i-constructionの役割は何か

最近、建設産業でのデジタル化が気になり、建設DXなんかのブログを書いていた。

そんな中、先週金曜日のニュースで清水建設がベンチャー企業への投資を加速するという業界新聞の記事を見つけた。

普通なら読み飛ばしてしまいそうなニュースも、デジタル化を気にしていると目に入ってくるもの。

記事によると、清水建設は中期経営計画の中の重点戦略である「次世代の建設技術や地球規模の課題解決型新規事業への投資」に基づくものらしい。

地球規模という表現が清水建設らしいところではあるし、投資規模が100億円というところもさすがは清水建設という気がする。

内容は、将来性のあるベンチャー企業との協業を進めるため、ということだが、確かに、これからの建設業界は異業種との協業が欠かせない。

自動車の製造メーカーがトヨタからグーグルに変わるほどの転換は、建設業界では起こらないだろうが、インフラメンテナンスなど、分野によっては、従来のように建設業者が請け負う業界ではなくなる可能性もある。

今回の清水建設の投資先の第一弾は、高性能無線通信技術の開発ベンチャーに出資するとのこと。

やはり、デジタル化を見据えた投資だろう。

 

 

デジタル化ということで言えば、これまで、国交省施策であるi-constructionを何度も取り上げた。

なぜなら、i-constructionとは、ICT施工や3次元データの活用を目指したもので、これからの建設業界の進むであろう道筋を示していると考えられるから。

なので、今一度、この施策の位置づけを確認してみる。

 

 

どんな目標にもさらに上の目標がある。

国交省の施策のi-constructionも同様である。

大きな国家としての目標があり、その目標の達成のために、あらゆる省庁が国家目標の達成のために省庁の目標を立てて実行していく。

 

そういう意味でトップの目標は、内閣府の政策である「Society5.0」が大きな目標だろう。

これは、日本の未来社会のコンセプト。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題解決を図る、というもの。

具体例としてよく挙げられているのは

遠隔医療、スマート農業、無人店舗、自動運転などなど。

簡単に言ってしまえば、デジタル技術を駆使して、便利な世の中にする、というもの。

ちなみに、Society1.0が狩猟社会、2.0が農耕社会、3.0が工業社会、4.0が現在で情報社会を指している。

 

 

このような社会を目指すとした政府の目標達成のための施策として、国交省は「生産性革命プロジェクト」というものを位置づけている。

(ただし、生産性革命プロジェクトは、安倍内閣が定めた2020年までに名目GDP600兆円という目標達成のためのプロジェクトとして、2015年12月にスタートしている)

次に、生産性革命プロジェクトの中身をみる。

現在、このプロジェクトは56項目の施策で成り立っている。

大きくは4グループに分かれる。

・次世代モビリティとスマートシティの推進(14項目)

・インフラの整備(18項目)

・データのフル活用(8項目)

・観光先進国と地域の魅力向上(16項目)

たいがいの国交省の施策はこの4グループの中のどれかに位置付けられる。

下にリンクを貼っておく。

国土交通省 総合政策 生産性革命プロジェクト

 

そして、i-constructionは、この56項目の中の1つでしかない。

しかし、56項目の中では重点項目となっている。

ちなみに、グループでいうと「インフラの整備18項目」の中の1項目である。

 

最後に、i-constructionの中身を見てみる。

なぜ、56項目の中の1つなのに、そんなに有名なのかというと、それは目標とするものがよく言えば広く、悪く言えば抽象的だからである。

56項目の中の事例で比較してみると分かりやすい。例えば

ダム再生、とか高速道路の料金制度などは、そのものピンポイントが目標となっている。

しかし、i-constructionの目標は

「生産性を向上して魅力ある建設現場を作る」というもの。

なので、生産性革命プロジェクトの中に、さらに生産性を向上して・・・という事を目標としているので、この施策がカバーする領域はかなり広い。

 

次にi-constructionを進めなければいけなかった問題点とは

・ 生産性の低迷

・ 労働災害

・ 労働力不足

 

生産性の低迷については

労働生産性を産業別で示したデータがある。

これは単純に産業別GDPを産業別就業者数で割ったもの。

確かに、電気・ガス・水道事業や情報通信業、金融保険業、製造業と比べると、建設業は低い。

全産業の平均が8000としたときに建設業は6300ほどなので、平均値にも達していない。

ただ、宿泊・飲食サービス業の3400や農林水産業2500よりは高い。

といっても、全産業の中でも建設業は低いことは低い。

 

 

労働災害については

死傷事故率は全産業と建設業を比べると2倍。

年間労働者の0.5%が死傷事故を起こしていることになる。

これは一年に200人に1人は事故を起こす計算となる。

 

 

労働力不足については

何度もブログで書いてきたけど、復習がてらにもう1回。

建設就業者数は1997年に685万人から2010年で500万人になっている。

13年間で3割の減少。

この内、特に影響が大きいのが技能労働者といわれる職人。

全体の66%は職人なので、1997年に455万人いた職人は2010年には330万人になっており、さらに2025年には210万人になると予測されている。

逆算すると、2025年には210万人÷0.66=320万人。

建設就業者数が現在500万人なのに5年後には、320万人になってしまう、ということ。

職人がいなければ現場は動かない。いくらゼネコンの社員がたくさんいても進まない。

職人の減少に引っ張られて仕事を請け負えない状況になるのではないか、という恐れがあるということ。

今より3割以上も少ない計算になるので、実際に、これでは建設産業というより日本の国家が成り立たない。

財政政策としての意味もあるし、職人以外の建設従事者はどうなるのか、また誰がインフラメンテナンスをするのか、という問題もある。

どうしてこのような予測がなされているかというと、建設従事者の年齢構成である。

5年後には定年による大量の離職者が出ると考えられているし、新規に入ってくる若手では、その減少分を補えていないということ。

 

 

このように、生産性の低迷、労働災害、労働力不足といった問題点を解決するために、i-constructionを進めようとしている、ということ。

生産性を向上させて、魅力ある建設現場を作る」

つまり、一人当たりの生産性が上がれば、少ない就業者でこれまでと同量の建設が可能となるし、企業の経営環境が改善する、つまり儲かるということ。

そして、魅力ある業界に変われば、つまり給料が高く、事故など恐れず、休暇を取りやすい業界となれば、若者がこの業界に入ってくることになる。

このような目論見から、i-constructionが進められている。

 

 

では、i-constructionの具体的な取り組みとは何か?

・ ICT技術の活用

・ 規格の標準化

・ 施工時期の標準化

である。

 

ICT技術の活用は建設DXと呼ばれるものの代表格。

これは先日のブログで書いた。

規格の標準化とは、簡単にいえば、例えば、コンセントの大きさがどのメーカーも同じように作っているから、どれメーカーの電化製品でも家庭で使える。

このように、企画を統一してしまえば、現場ごとに違う製品を使うことによる種々の手間が省けるのではないか、というもの。

施工時期の標準化とは、これは役所の会計ルールに起因する問題。

会計原則として単年度会計というものがある。

その年度の予算はその年度で使いきる、というもの。

そのため、春は発注者が発注業務を行っている段階なので施工業者は仕事がなくなる。

逆に、発注者は年度末に工期を持ってくるから施工業者は突貫工事でもやって何とかして工期内に竣工しなければならず、作業所は不夜城と化す。

これでは、安定的な収入にもならないし、何より休みが取れす仕事がきつい。

そこを改善しようということ。

そのために働き方改革が進められている、ということ。

 

 

今回は、なぜi-constructionが叫ばれ続けているのか。

また、政府全体の目標から見たときに、国交省のi-constructionがどのような役割を担っているのかをメモった。

これまでも、似たようなことをブログでも書いてきたけど、たまにこうして復習がてらにメモるのも、頭の整理には良いと思う。

 

 

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