今日は技術士の勉強。
平成30年の過去問。1次試験の建設部門。12問目のプレストレストコンクリートについて。
問題文は「公益社団法人 日本技術士会」のHPで閲覧ができるようです。
「公益社団法人 日本技術士会」過去問(平成30年度 第1次試験)
コンクリートの問題は今日の問題で3問目になる。
選択肢を見ていくその前に、PC、つまりプレストレストコンクリートというのは何か?
RCは鉄筋コンクリート。
鉄筋によりコンクリートを補強している。
これにをさらに強くしたものがPCとなる。
どうやって強くしたかというと、鉄筋の代わりにPC鋼材を使っている。
このPC鋼材にはプレストレスを与えてある。
このPC鋼材は、あらかじめ(プレ)、引っ張り応力(ストレス)を与えてある。
なので、PC鋼材を入れると、コンクリートがPC鋼材の戻ろうとする力に引っ張られ、コンクリート自体に圧縮応力がかかった状態を作ることができる。
このため、コンクリートの性質として最大の弱点である引っ張りに対し、あらかじめ圧縮応力がかかっているので、引っ張り力が発生した時に相殺してくれるので、結果、引っ張りに強くなる、ということ。
コンクリートの引っ張り応力は圧縮応力と比べて1/10ほどの力しなかい。
そのため、設計段階では、コンクリートは引っ張り力には耐えられない、つまり引っ張り応力は無視して設計をする。
そのため、引っ張り力は鉄筋が受け持つことになる。
鉄筋コンクリート(RC)でも、ひび割れは発生する。
ひび割れは少しも発生したらダメ、というわけではない。
程度問題ということ。
では、選択肢をみていく。
選択肢➀ ひび割れ性能、断面縮小
何のためにPCを使うのか?
無筋のコンクリートやRCでは不利なことがあるから。
RCでは無筋Conよりも強くなる。
コンクリートは引っ張りに耐えられないけど鉄筋は耐えられるから。
しかし、鉄筋という違う部材と一体になることでひび割れが発生しやすくなる、というデメリットもある。
ただ、鉄筋とコンクリートの熱膨張率はほとんど同じ。
PC鋼材を入れて、引っ張り応力に強い部材に変更することで、ひび割れも発生しにくくなる。
また、同じ強度を出すには、無筋Conの場合、もっと大きな部材断面が必要。
でもPCにすることで断面を小さくすることができる。
選択肢② PRC構造
PRC構造はPC構造とRC構造の中間的な存在。
どういうことかというと、PC構造はプレストレスを与えたPC鋼材により、使用限界状態でのひび割れの発生を許容しない。
それだけ、構造体として厳しい要求を満足することが求められている構造体。
使用限界状態とは、言葉のとおりで、正常に使用できなくなるような状態、または正常に使用できなくなるような耐久性になる状態。
このような状態になる状況においてのひび割れという意味。
ちなみに、これと類似する言葉で、終局限界状態と修復限界状態がある。
終局限界状態とは、安定性やその機能を失う状態で、部材が破壊されたり、座屈したりと、使用限界状態よりも大きな変形を表す状態のこと。
つまり、PCは正常な使用ができない状態(使用限界状態)であったとしても、ひび割れについては許容していない、ということ。
ひび割れについて、すごく高い要求を求められている。
それだけにコストも高い。
そのため、経済性を考え、PRC構造が考えられた。
RCというのはひび割れを前提としている。
ひび割れは仕方のないものとしている。
一方、PCはひび割れは発生しないものとしている=ひび割れを発生しないような、ある意味贅沢な設計になっている。
その中間のPRCは、一定のひび割れは許容するけど、そのひび割れ幅を制御する。
PRCにPがついているようにプレストレスを与えたPC鋼材を補強的に使う。
異形鉄筋のひび割れ分散作用により、ひび割れ幅を制御するとある。
これは、イボイボがついている異形鉄筋を使うとコンクリートとの付着性が良くなる。
この付着性によってひび割れ間隔を制御することをひび割れ分散という。
ここまでの記述はRCでもPRCでも同様なので正解となる。
最後に、プレストレスによって鉄筋応力度を増加量を拡大させる、とある。
鉄筋応力度とは何か?
ここがこの問題のキーポイント。
鉄筋応力度とは、鉄筋が引っ張り力に対し、許容される応力(鉄筋の内部に働く力)という意味。
なので、鉄筋の種類によって引っ張り力に対して、どこまでもつのかは決まっている。
そして、プレストレスというのは、事前に引っ張りの力を与えておくこと。
つまり、鉄筋を引っ張っておいた状態になっているのだから、鉄筋が引っ張りに対し、許容できる応力は少なくなっている。
この問題は、PRCとあるけど、PCでも同様。
プレストレスを与えられている鉄筋やPC鋼材は、引っ張り許容応力が大きくなるどころか、鉄筋からすれば、もう引っ張らないで~という状態。
コンクリートが引っ張られた時、鉄筋はもう引っ張らないで~と縮もうとするので、コンクリートにとっては有利に働くけど、鉄筋応力度の増加量は拡大しない。
どちらかというと、PRCもPCも、事前に引っ張り応力が与えられた状態、つまり鉄筋に応力が生じている状態なので、鉄筋の応力度が増加するどころか、PRCでもPCでも、引っ張り力が生じた場合でも鉄筋は縮もうとするだけ。
鉄筋の応力度の増加量は鉄筋そのものが持っているわけで、圧縮する力を与えておけば、引っ張り応力度の増加量は拡大するかもしれないけど、コンクリートの性質、つまり引っ張りに弱いという性質を補う鉄筋に圧縮力を与えておくのは、コンクリートにとってデメリットでしかないので、意味がない。
選択肢③ 縁応力度
プレストレスを導入することで、コンクリートの縁応力度を制御する?
縁応力度(ふちおうりょくど)というのは、読んでそのまま、縁に働く応力。
コンクリートの梁に上から荷重をかけると、上面に圧縮応力、下面に引っ張り応力がかかる。
それぞれの応力で最大なのは縁になる。
つまり、プレストレストを導入することで、最大応力度を制御する構造といっている。
まあその通り。
選択肢④ プレテンションとポストテンション
どちらもPCであるが、プレテンションとポストテンションの違いをメモる。
大きな違いは、PC鋼材に引っ張り応力をかけるタイミング。
それぞれ、製造過程を見るとわかりやすい。
プレテンション
コンクリートを打設前にPC鋼材をコンクリ打設前の型枠の中に裸で設置しておき、その状態でテンションをかける。
その後、コンクリートを打設し、コンクリートの硬化後にテンションを緩めてやる。
すると、コンクリート全体に圧縮応力が働く、という仕組み。
プレは、日本語では「前に」という意味。
また、2次製品にこのタイプが多い。
ポストテンション
コンクリート打設前にPC鋼材は入れない。
その代わりにシースという、さや管、つまりホースのような筒をいれておく。
そのまま、シースごとコンクリートを打設する。
コンクリートが硬化後、シースの中にPC鋼材を通し、PC鋼材に引っ張り力を与える。
その後、シースの中をモルタル注入しPC鋼材と一体化させる。
モルタルが硬化したらPC鋼材の引っ張り力を解放することでコンクリートに圧縮応力を与える。
ポストは「後に」という意味。
また、こちらは現場施工が多い。
それでは選択肢を見ていく。
選択肢④は、緊張材を緊張するたびにコンクリートが弾性変形するといっている。
弾性変形とは、力を取り除くと元に戻る状態での変形。
それに対し、塑性変形とは、力を取り除いても、もう元には戻らない変形。
選択肢のコンクリートが弾性変形する、ということは、もうコンクリートが硬化後である。
その状態から緊張材を設置する、ということは「後に」なのでポストテンションでの説明となる。
また、複数の緊張材を少しづつ設置していくので、徐々に構造体に引っ張り力が与えらえていく、とあるが、こんなことが出来るのは、ポストテンションしかない。
プレテンションでは、後からPC鋼材を追加することを想定した製造方法ではない。
ポストテンションは塑性変形によるPC鋼材の引っ張り応力の状態を確認しながら、テンションをかける力を調整できるメリットがある。
選択肢⑤ プレテンションとポストテンション
所定の引っ張り力を与えた緊張材、とある。
この時点でプレテンションである。
ポストテンションはどのくらいの引っ張り力を与えるかも、コンクリート硬化後でも調整できる。
次に、複数の緊張材を同時に開放するとある。
これもプレテンションの記述っぽい。
プレテンションの場合、製品として出荷する前に、どこかで緊張材の緊張を解いてやらないといけない。
徐々にテンションをかけて様子を見る、とういことはできない。
選択肢の文中には、硬化後のコンクリートの弾性変形による緊張材の引っ張り力の増加、とある。
これは、縮こまろうとするコンクリートに対し、塑性変形を起こせばPC鋼材の引っ張り力は弱まる。
そのため、この部分も間違い。
これで終了。