今日は技術士の勉強。
平成30年の過去問。1次試験の建設部門。5問目の断面二次モーメントほか。
問題文は「公益社団法人 日本技術士会」のHPで閲覧ができるようです。
「公益社団法人 日本技術士会」過去問(平成30年度 第1次試験)
この問題については学生の方が得意なはず。
もうほとんど忘れた。
いきなり選択肢からみていく。
選択肢➀ 断面積
高さと幅をそれぞれ2倍にする。
A×A=A2
2A×2A=4A2
小学生の算数。
拍子抜けするほど簡単な問題。
選択肢② 断面二次モーメント
そもそも断面二次モーメントってなんだっけ?忘れた(笑)
学生時代のおさらい。
断面力とか断面係数とか応力度とか、これらの言葉はすべて物体は点や線ではなく厚みや幅を持っていることを考慮するための言葉。
高校生までは、その辺を全て無視することで、単純モデル化していた。
だけど、工学分野で、材料のかかる力を考えるときは、そこを無視できない。
まず、断面力とは部材の中に働く力のこと。
例えば、直方体の消しゴムに上から下に向けて力を加える(荷重をかける)と、消しゴムは床に置かれているので、床からも反力を受けて、少しずつ潰れていくと思う。
このとき、消しゴムの中には力が働いている。
これを断面力、とか応力、とか内力とか、内部応力という。
消しゴムを右と左から引っ張ったり、曲げようとしたりしてみる。
力をかけても、消しゴムが引き千切れたり、完全に曲がり切ったり、せん断方向に千切れたりしなかった場合、断面にはそれぞれ、引っ張り力、曲げモーメント力、せん断力が働いている。
どの断面で切っても、各々の断面には色々な応力が働いている、ということ。
次に、断面積と断面力の関係をみていく。
考えやすくするために、消しゴムを縦に建ててみる。
これに上から荷重をかけるんだけど、その時に2パターンを想像する。
一つは、断面が1cm×2cmの消しゴムA。
もう一つは断面が2cm×2cmの消しゴムB。
この場合、応力度(消しゴムの内面に働く、押しつぶそうとする力)は、消しゴムAの方が大きい。
応力度=荷重/断面積
だから。
この材料を現場で使う場合、どちらが丈夫か?
つまり、どちらが重みに耐えられる柱となるか?
これは断面積の大きい消しゴムBとなる。
部材の強さは断面積に比例する、となる。
だから、消しゴムBの方がAより2倍の圧縮力や引っ張り力に対して強いとなる。
ただ、この場合は、上から荷重をかける場合には成立する関係。
つまり軸方向への圧縮力や引っ張り力の場合に成立するんだけど、曲げモーメントの場合は、そう単純ではない。
次に、消しゴムA,Bを寝かす。(さっきまでは縦に建てていた状況)
消しゴムAは、1cm×1cm×3cm(長さを3cmと仮定)
消しゴムBは、1cm×2cm×3cm
この場合も、消しゴムBの方が曲げに強そう。
正解、消しゴムBの方が2倍、曲げに強い。
次に消しゴムBを2つ用意する。
寝かした状態なんだけど、一つは寝かした状態から90度回転させる。
すると、消しゴムB(縦1cm×横2cm×長さ3cm)と
消しゴムB’(縦2cm×横1cm×長さ3cm)
置き方を変えて、消しゴムの真ん中を上から荷重をかけた場合、消しゴムの真ん中には曲げモーメントが働く。
曲げモーメントというのは、消しゴムの断面(つまり消しゴムの内部)に、曲げようとする力。
上からまっすぐ下に向けて荷重をかけても断面には曲げモーメントが働く。
それに対する強さは、消しゴムBとB’でどう変化するか、ということ。
断面二次モーメントというのは、物体の形状により断面積が同じでも、曲げモーメントに対する抵抗力は違うということを測る尺度。
この消しゴムBとB’の違いは何か?
まず、強いのは消しゴムB’となる。
これは感覚的にわかる。
これは、これまで、そういう経験を知らず知らずのうちにしてきたから。
これを工学的に説明する場合、断面二次モーメントが大きいから、曲げには強い、ということ。
つまり、曲げモーメントに対しては、部材の面積も影響するけど、部材の形状も影響するということ。
では、断面二次モーメントはどうやって測るのか?
これは、部材に中心軸を仮に頭のなかで置く。
この中心軸というのは、部材の中で圧縮も引っ張りも力が働かないところ。
少し説明する。
上から消しゴムに荷重をかけると、消しゴムの上面は縮めようとする圧縮力、下面は引っ張られるので引っ張り力が働く。
でも、消しゴムの中心軸には、圧縮と引っ張りのちょうど変化点のため、どちらの力も働かない。
ここを中心軸として、この中心軸からの距離が遠いところに部材があるほど、断面二次モーメントは大きい。
これも感覚で分かると思う。
つまり、中心軸から離れたところまで部材がある部材は、曲げモーメントに対して強い、つまり、曲がりにくい部材である、ということ。
部材に荷重をかけた場合、中心軸から離れた所が最も曲げモーメントが作用する部分。
そこを手厚くしておくことで、最も効果的に曲げに強い部材を作ることができる。
断面二次モーメントの計算式は
= 面積A × x2
このxが中心軸からの距離。
部材を細かく細分化したと仮定してそれぞれの面積Aiを、それぞれの中心軸からの距離をXiとすると
断面二次モーメントはそれぞれを足し合わせたものになる。
これは細かくして集めることになる。
=Σ(A i × X i 2) となる。
この式を見ると分かること。
・断面積が大きくなるほど曲げに対して強い
・中心軸から離れているほど曲げに対して強い
・中心軸からの離れの場合、2乗なので影響が大きい
・掛け算なので、中心軸からの距離が離れたところにある面積が大きいほど曲げに強い
直方体(B×H)の場合の断面二次モーメントIが公式化されていて
I=BH3/12
I:断面二次モーメント
B:幅
H:高さ
となる。
ちなみに単位はm4となる。
これは4次元という意味ではなく、計算していったらm4になった、というだけのもの。
少し説明すると
これは細かくして集めることになるため、=Σ(A i × X i 2) となる。
これを正確に出すには、それぞれ細かく分かれた面積毎の距離Xで計算しなければいけない。
つまり積分となり、x(中心軸からの細かくなった図心軸までの距離)の範囲は0~H/2となる。
I=∫ (A i × X i 2) dA iの範囲は0~H/2
計算すると
I=BH3/12
と公式が導かれる。
この問題の場合、この公式を覚えておくと解ける。
この、中心軸からの距離が離れたところにある面積が大きいほど曲げに強い
をフル活用した部材がH鋼となる。
H鋼を寝かして「エ」の形になるH鋼を置き、上から荷重をかける。
このとき「エ」の「ー」の部分が上下に2本ある。
この上下に2本あるということが、中心軸から最も遠い距離にたくさんの面積がある、に当てはまる。
「エ」の上から荷重をかけると上側のフランジには圧縮力、下側のフランジには引っ張り力がかかる。
その時にもっとも鋼材の面積があるように配置されたのがH鋼という部材。
これで、何でH鋼はあんな形をしているのか、口型でもなくコの字型でもなくH型。
それには断面二次モーメントを理解すればわかる、ということ。
H鋼は、できるだけ少ない部材で、曲げに対して強い力を発揮する、ということ。
もちろん、H鋼の部材は、できるだけ少ない鋼材量で、強くしているという意味。
長くなったけど
選択肢を見る。
再掲 断面二次モーメントI=bd3/12
この問題の場合、
幅bを2倍にすればIは2倍になる。
選択肢③ 断面二次モーメント
選択肢②の公式から
高さdを2倍、幅bを2倍にすると、
dが2倍になると3乗なので8倍、さらにbも2倍しているので16倍となる。
選択肢④ 断面係数
断面係数も断面二次モーメントと似ている。
断面二次モーメントIが部材の曲げモーメントに対する強さを表す尺度だった。
直方体(幅B、高さH)の場合
I=BH3/12(単位はm4などなど)
断面係数Zも、部材の曲げモーメントに対する強さを表す尺度という意味では同じになる。
ただ、断面係数の公式を書くと
Z=I/H
となる。
単位がm3となる。
今回の問題の場合、dは中心軸からの距離になるのでd/2となり、
Z=BH3/12 ÷ H/2
Z=BH2/6
この断面係数の公式を覚えておく。
結局、断面二次モーメントを中心軸からの距離で割っているだけ。
何が表さされているのか、ぼくはよく分からない。
理解できない。
だいたい、断面二次モーメントの単位が4乗ってところから、もう理解できていない。
ただ、断面二次モーメントを距離で割っているので、断面二次モーメントの要素がかなり残しつつ・・・
そもそも、断面二次モーメントのおおもとの計算式が何で?なので。
これ ↓
= 面積A × x2
ここ2乗する意味があるのかな?
ようは、断面二次モーメントも断面係数も、両方とも、部材の曲げモーメントに対する強さを測る尺度。
ただ、断面係数の方は単位がm3となる。
くらいに覚えておく。
では、選択肢の問いを見る。
高さを2倍すると、断面係数は4倍になる。
公式をみると
Z= =BH2/6
Hは2乗になっているので、正解。
一瞬。
選択肢⑤ 断面二次半径
これも公式だけ覚えておく。
断面二次半径i=√(I/A)
つまり、断面二次モーメントを面積で割って、1/2乗したもの。
断面二次係数がIを距離で割ったもの。
断面二次半径はIを面積で割ったものを1/2乗する。
だから、やっぱり部材の曲げモーメントに対する強さと関係がある。
正確には、座屈への強さを表している。
これだけ、覚えておけばいいでしょう。
選択肢を見ると、幅Bを2倍にするとどうなるか?
断面二次半径は1/2乗しているので変化なし。
つまり、幅を2倍にしても断面二次半径は1/2乗するので変化しない。
つまり、座屈の強さは変わらない、ってこと。
もう少し確認。
断面二次モーメント I = BH3/12
断面係数 Z = BH2/6
断面二次半径 i は、断面二次モーメントを面積で割って1/2乗するので
i = √( BH3/12 ÷ BH ) = √H2/12 = H/2√3
断面二次半径の公式として
i = H/2√3
を覚えておく。
つまり、断面二次半径は幅に影響されない。
つまり、座屈の強さは幅には関係ない。ということ。
はい、終わり。