昨日の日経新聞の記事より。
「三井不動産が新宿三井ビルを日本ビルファンド投資法人に売却する」というニュース。
少し、不動産の勉強がてらに調べてみた。
なぜなら、新聞記事を読んでも、売却後も三井不動産が運営に関与するらしいし、ビルの名称も残るらしい。
なぜ、他の組織に所有権が売却されるのに、関与が可能なのか?
そもそも、日本ビルファンド投資法人という組織は何者なのか?
何で、この時期に三井不動産は旗艦物件の新宿三井ビルを売ったのか?
このあたりが、新聞記事を読んでも全く分からなったので、少し勉強しようと思う。
この記事が気になったのは、きっと最近、都市計画に関することをブログに書いているので「不動産」という用語に反応する脳みそになっているのだろう。
さて、まず最初に知りたいのは、日本ビルファンド投資法人は何者か?
調べてみると、REIT(リート)投資法人というものらしい。
しかし、REIT投資法人が分からない。
調べてみると、分かりにくい理由が分かった。
ほとんどペーパーカンパニーというもの。
別に悪いことをしている訳ではなく、個人が簡単に不動産に投資できるようにするために、上場した投資法人。
だから、日本ビルファンド投資法人は、新宿三井ビルを購入しても、運用する訳ではない。
詳しく仕組みを書く。
一般に、REITとは、「不動産信託受益権」を売買することを指すらしい。
「不動産信託受益権」とは、不動産から生み出される収益などの経済的利益を受け取る権利のこと。
フローで書いていく。
・ まず、不動産所有者から信託銀行が不動産を取得する。
・ REIT投資法人は信託銀行から、その不動産の「不動産信託受益権」を取得する。
もしも、REIT投資法人が不動産を直接、取得するとなると、REIT投資法人は取得時に多額の不動産取得税を徴収される。
しかし、不動産信託受益権の取得の場合、そのような税はかからない。
・ REIT投資法人は、この「不動産信託受益権」を細かくして(小口にして)投資家に市場を通して売却する。
・ 投資家は、「不動産信託受益権」を持っているため、その不動産が利益を出せば分配金(株式でいう配当金)を受けることができる。
・ 投資家は、市場でいつでも簡単に「不動産信託受益権」を売買できる。
なので、投資家としては株式を売買するようにキャピタルゲインを受け取ることもできるし、配当金のような分配金というものを受け取ることもできる。
REIT投資法人は「不動産信託受益権」を持っているが、REIT投資法人は、あくまでペーパーカンパニーで、不動産を運営するのは「資産運用会社」が行う。
その「資産運用会社」にはスポンサーと呼ばれる企業が出資している。
ざっと、流れをみた。簡単に書くと、このようなスキームで運用されている金融商品となる。
ただ、よく分からないところがある。
一般にREIT投資法人は、自らがいくつもの不動産を取得していたり、信託銀行からいくつもの「不動産信託受益権」を取得していたりする。
しかし、証券市場で売買されるREIT法人は、個別の不動産の信託受益権が売買されている訳ではないと思う。
複数の不動産信託受益権を取得しているREIT法人が持っている全ての不動産信託受益権を小分けにしてパッケージ化してまとめて、〇〇REIT投資法人のトータル不動産信託受益権として証券化して売買しているのではないか。
これはぼくの勉強予想でしかない。調べたけど分からなった。
株式会社ではないので、株券を発行している訳ではないから・・・。
ただ言えることは、日本ビルファンド投資法人とは、新宿三井ビルを所有している法人に投資したい、と思っている個人投資家が投資できるように上場したペーパーカンパニーというもの。
市場でREITを購入することは、間接的に不動産に投資した状況になるが、正確には不動産に投資したことにはならない、ということ。
一般のREITという商品はそういうものらしい。
もう一つ、今回の記事で分からないことがある。
日本ビルファンド投資法人が「新宿三井ビル」を取得とあるので、間に信託銀行が入っているのかは分からない。
なんとなく、今回の日本ビルファンド投資法人の場合、当該法人がそのままビルを取得するのではないか、と思う。
そして、当該法人が「不動産信託受益権」を作って、投資家たちに市場を通して売っていく、というものだと思う。
ここも、単なるぼくの予想。
そもそも、REITといのは、日本では比較的新しい金融商品らしく、株式などと同じように個人でも売買ができるように考え出されたもの。
普通、土地やビルを買って、そのビルのテナント収入で儲けよう、というのが従来からある不動産経営。
しかし、そんなのは大量資金のある人しかできない。
しかも不動産は個々の価値を判断するのがとても難しく、素人が手を出すと騙される(高値をつかまされて)ことになりかねない。
それに、不動産を購入すると、登録免許税や不動産取得税というものが発生してしまう。
また手続きもとても煩雑なもので、運用していくのも手間がかかる。
そんな理由から、不動産市場は一部の限られた人だけの狭い市場だった。
しかし、狭い市場ということは、その市場にはお金があまり入ってこないことを意味する。
そこで、何とか一般の投資家も参入できるような開いた市場にしたい、もっと不動産市場にお金を流入させたい、という要望から考え出された商品がREIT(リート)というものである。
アメリカで生まれた商品であるため、日本のREIT(リート)はJ-REITと呼ばれ、日本版不動産投資信託ということになっている。
REITは実物の不動産を取得する訳ではないメリットがある。
個人投資家がREITを購入しても、不動産の所有権を取得したことにはならないので、不動産取得税などを回避することができる。
しかも、実物の不動産を取得するときのような煩雑な手続きは一切必要ない。
それでいて、その不動産を持っている法人が信託している証券(株式会社ではないので株式ではない)を購入することになるので、間接的に不動産に投資したようになる。
不動産からのテナント収入などは分配金(株式でいう配当金)という形で投資家に年2回ほど配られるからだ。
また、その不動産(的なもの)を手放したくなれば、市場でいつでも公開された金額で売買できる。
ただし、実物の不動産投資のメリットといわれるものは、逆にない。
・ 不動産を担保に融資を受ける(レバレッジを利かす)
・ 自ら経営して効率よく運用することで儲けがあがる
・ 不動産経営のための経費などといった節税対策ができる
上記のようなメリットは、REIT購入では得られないらしい。
そのため、実物の不動産投資と不動産投資信託のどちらが良いのかは、人それぞれということになる。
一般に、投資信託というものは、ローリスク、ローリターンなので、大きく儲けることはできない仕組みだとぼくは思っている。
今回、三井不動産という日本の不動産会社のトップ企業が、この三井不動産の旗艦物件である「新宿三井ビル」を手放す、ということの意図は分からない。
新聞では、現金化して運用効率を高めるため、と書いてあるだけで、その文章の意味もよく分からない。
もう少し踏み込んで記事を書いてほしいところである。
こんな記事では不動産業をやっている人や証券会社や銀行に勤める人しか理解できない。
今回のブログを書く過程では、REIT投資法人なるものの役割が分かった。
ちなみに、冒頭で三井不動産が運用に関与できるのは、日本ビルファンド投資法人は単なるペーパーカンパニーで、実際にビルを運用するのは「資産運用会社」である。
この資産運用会社に出資しているのが三井不動産らしい。
結局、三井不動産は日本ビルファンド投資法人から1700億円の売却益を取得する。
日本ビルファンド投資方針も、取得のために1400億円の公募増資を行うらしい。
なので、1400億円は市場から集めるそうだ。
今後、新宿三井ビルが生み出す利益は日本ビルファンド投資法人が受け取ることになる。
つまり、新宿三井ビルが生み出利益は、日本ビルファンド投資法人 のREIT(不動産信託受益権)を市場で購入(投資)している投資家たちが受け取ることになる。
だが、これからのアフターコロナでは、在宅勤務やデジタル化社会の到来により、都心のオフィス需要は下がると思われる。
そうなると、これまでのように新宿三井ビルが稼ぐことができるのは不透明である。
三井不動産はちゃっかりと、REIT投資法人を通して、一般の投資家たちにリスクを取らせたのではないか、とも思えてくる。
これはあくまでぼくの勝手な予想。
だから、この辺のことを記者が勉強して新聞記事で深堀りして書いてほしい、と言っているわけ。
しかし、よくまあ、こんなREITなんて複雑な仕組みを考えつくものだと感心した。
アメリカ人の考える金融システムはすごい。