土砂災害警戒区域と急傾斜地崩壊危険区域の違いは?

最近、防災についてのメモが多くなっている。

理由は、これだけ洪水氾濫、土砂災害などが発生しているので、どうしてもそのネタが多くなる、ということである。

今も、台風6号が発生している。

9月に入れば、完全な台風シーズンとなる。

いつ何時、わがまちが水災害に襲われるやもしれない。

地震だって怖いし、富士山の噴火も怖い。

自然災害大国ニッポンに住む以上、自然災害に関する知識はあるに越したことははないはず。

そういう訳で本日は、土砂災害関連と砂防三法関連のメモとなる。

似たような言葉で混乱しているので少し勉強することにする。

 

 

 

自然災害に関する法律は

明治29年の河川法に始まり

明治30年の砂防法

昭和に入って、水防法海岸法と制定された。

 

昭和33年 地すべり等防止法

昭和44年 急傾斜地法

そして、平成12年に土砂災害防止法が制定された。

つまり、土砂災害防止法は実は一番新しく、それも平成に入ってからの法律ということ。

 

 

 

土砂災害防止法とは、

土砂災害から国民の生命を守るため、

・土砂災害のおそれのある区域について危険の周知

・警戒避難態勢の整備

・住宅等の新規立地の抑制

・既存住宅の移転促進

つまり、以上のようなソフト対策を推進しようとするもの。

砂防法や地すべり防止法や急傾斜地法がハード整備の法律なら、土砂災害防止法はソフト対策の法律となる。

概要は

・土砂災害防止対策基本指針の作成を作成するのは国土交通大臣

・土砂災害警戒区域の指定などの基礎調査の実施をするのは都道府県

・国は都道府県に対して、調査のための費用の一部を補助する

 

以下は都道府県知事と市町村が行う行為

土砂災害警戒区域の指定・・・土砂災害のおそれのある区域

イエローゾーンと言われるもので、市町村はこの区域指定を受けて、災害対策基本法に基づく〇〇市地域防災計画に位置付ける。

危険の周知、警戒避難体制の整備が市町村によって行われる。

つまり、土砂災害ハザードマップによる周知の徹底

土砂災害特別警戒区域の指定・・・建築物に損壊が生じ、住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがある区域

レッドゾーンと言われるもので、特定開発行為の許可制、移転勧告などが都道府県によって行われる。

建築物の構造規制を行うのは建築主事を置く自治体となる。このあたりは細かく役割分担がある。

 

ところで、そもそも土砂災害とは?

あまり、深く考えたことはなかったが、調べてみると

大きく「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」の3つに分類することができる。

大雨、地震、火山の噴火などがきっかけで発生する。

土石流とは、大雨などが原因で山や谷の土・石・砂などが崩れ、水とまじってどろどろになり、一気に流れ出てくる現象

地すべりとは、比較的ゆるい傾きの斜面が、広い範囲にわたってすべり落ちていく現象

がけ崩れとは、急な斜面が突然崩れ落ちる現象

これらの土砂災害を防止するための法律が土砂災害防止法となる。

そして、これらの土砂災害に巻き込まれるリスクのある区域を土砂災害警戒区域とか土砂災害特別警戒区域として指定する、ということ。

 

少し紛らわしいのが土砂災害危険個所というもの。

土砂災害警戒区域が法律に基づき定められる区域なのに対し、土砂災害危険個所というのは任意の場所指定となる。

ただ、この危険個所も国交省の要請により都道府県が調査実施して指定したものではある。

なので、まったくの自治体の勝手な調査というものでもない。

 

 

 

次に、砂防三法指定区域とは?

その前に砂防三法とは、砂防法、地すべり等防止法、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律 の3つの法律のこと。

この3法に基づいて指定される区域が、それぞれ 砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域 となる。

 

 

〇 砂防指定地

砂防法で指定される場所を砂防指定地という。

砂防指定地とは、土石流の発生が予想される渓流や荒廃地域のこと。

砂防法にもとづき、国土交通大臣が指定する区域のこと。

土石流などから下流部に存在する人家や公共施設を守るため、また流域における荒廃地域を保全するために、砂防えん堤などを設置する区域となる。

 

 

〇 地すべり防止区域

地すべり等防止法で指定される区域を地すべり防止区域という。

地すべり防止区域は、地すべりによる被害を除去または軽減するために、国土交通大臣が指定する区域。

地すべり防止区域においては、地すべり対策事業(地すべりを防止するための工事)を実施するとともに一定の行為が制限される。

土砂災害危険個所と同様に、地すべり危険個所というエリアがある。

これは地すべり防止区域のように、地すべり防止法に基づくものではない。

 

 

〇 急傾斜地崩壊危険区域

急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律もとづき指定される区域を急傾斜地崩壊危険区域

都道府県知事が指定する区域である。

台風や集中豪雨の際に発生する急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)の恐れがある区域やその隣接地も含む。

 

急傾斜地の指定基準

・傾斜度が30度以上

・高さ5m以上

・人家が5戸以上ある、または官公署、学校、病院、旅館等がある

 

 

少し、まとめる。

土砂災害警戒区域というのは土砂災害、つまり土石流、地すべり、がけ崩れが発生する恐れのある場所、つまり「砂防指定地」や「地すべり防止区域」や「急傾斜地崩壊危険区域」を含んでいる。

これらの区域はまさに土砂災害の発生源となっている。

土砂災害警戒区域は、その発生源も含むし、その近隣も含み、土砂災害に巻き込まれる危険が高い区域となる。

土砂災害特別警戒区域は、さらにそのリスクが高くなる、ということ。

 

 

 

最後にもう一つ。

災害危険区域というものがある。

これは、地方公共団体が建築基準法に基づき指定する区域となっている。

この建築基準法の規定とは、地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる、というもの。

津波、高潮、出水などの恐れがあると、自治体が判断すれば、そのエリアを条例により、災害危険区域に指定することができる、というもの。

この危険な区域というのは、土砂災害も含まれる。つまり土石流、地すべり、がけ崩れなど。

東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島は沿岸部37市町村を災害危険区域と指定したらしい。

これは都市計画ではなく建築基準法のゾーニングという位置づけ。

なので、土砂災害警戒区域や津波災害危険区域と重なっている訳ではない。

この区域に指定されると、建築する際に規制が働く。

例えば、主要構造部を木造以外の建築物としなければいけなかったり、2階以上の階に居室を設けなければならなかったりする。

 

 

 

もう、頭が混乱してくるが、津波や洪水については、それぞれ浸水想定区域図というもの策定している。

これは都道府県の役割である。

この浸水想定区域図に基づきハザードマップを作る、これが市町村の役割。

そして、洪水浸水想定区域図は「水防法」に基づく行為となる。

また、津波浸水想定区域図は「津波防災地域づくりに関する法律」に基づく行為となる。

名前は似ているが、法律は違う。

そして、同じように洪水や津波という災害で危険となる区域を示した建築基準法に基づく「災害危険区域」もある。

しかし、この区域は重なっていない。

というよりも、災害危険区域自体を指定しない自治体が多い。

同じような目的の制度が各法律で作られていて乱立している。

少し、まとめてほしいと思う今日この頃。

 

災害危険区域を最後といったけど、もう一つだけメモる。

この津波浸水想定区域というもの。

これは、「津波防災地域づくりに関する法律」で規定されている。

この法律は平成23年に策定されている、かなり最近の法律。

もちろん、東日本大震災を受けて策定されている。

概要としては

この法律では、基本的に二つのレベルの津波を想定する

頻度の高い津波(L1)

発生頻度は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波

住民財産の保護、地域経済の安定化、効率的な生産拠点の確保の観点から、海岸保全施設等を整備

 

最大クラスの津波(L2)

発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波

住民等の生命を守ることを最優先とし、住民の避難を軸

ハザードマップの整備など、避難することを中心とするソフト対策を重視

 

また、土砂災害ではイエローゾーンとレッドゾーンだったが、この津波災害では、イエローゾーン、オレンジゾーン、レッドゾーンと3段階に分かれている。

津波の場合、イエローゾーンもオレンジゾーンも都道府県が任意で指定するのだが、レッドゾーンに関しては、市町村の条例となっている。

この条例が、先ほどの建築基準法の災害危険区域ではなく、おそらく、この「津波防災地域づくりに関する法律」に基づくものと思われる。

 

やはり頭が混乱してくる。

 

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