7月22日 政府は熊本県南部を中心とした豪雨により被災した交通インフラの復旧を国が代行することを発表した。
今回、復旧される交通インフラとは県が管理する道路や橋りょうである。
なぜ、これがニュースになるかといえば、今年の5月に改正した道路法の初適用だからである。
これまで、国が管理する直轄国道以外、国は簡単には手を出せなかった。だから、通常であれば熊本県が復旧をしなければいけない。
しかし、県では大規模災害などに対応した経験もなく、ノウハウもパワーもない。
そのため、これまでは、災害のときの特例で大規模災害復興法という法律を持ってきて、復旧工事を国が代行していた(だから、国が完全に手を出してこなったわけではない)
しかし、閣議決定が必要など迅速性に欠けていることが課題となっていた。
そのため、この5月に道路法を改正して、すべての道路において災害時の国の復旧代行が、より簡易な方法で可能となっていた。
それの初適用ということでニュースになったのである。
普通に聞けば、ややこしいことをしているな、と思うだろうが、事実、道路というのは法律でギチギチに縛られている。
全ての道はローマに通ず、と言われるように、国の最重要インフラという位置づけだからこそ、と言えるのかもしれない。
(※アフターコロナにおいては、最重要インフラは通信網に変わるかもしれないが)
そんな訳で、今日は道路を広く見たとき、どんな種類の道路があるのかメモることにした。
道路法で規定している道路は4種類
・高速自動車国道
・一般国道
・都道府県道
・市町村道
だけ。
高速道路という名前はない。正式名称は高速自動車国道。
なので、国道という名前がついている通り、管理者は国。国土交通大臣。
あれ?ネクスコが管理しているのではないか、と思うかもしれないが、ネクスコは国の管理権限を代行しているにすぎない。
ちなみにネクスコとは、高速道路株式会社法で規定された特殊会社のこと。
特殊会社とは特別法により定められた株式会社で、公共性の高い事業だが、行政機関が行うよりも適切と判断された場合に設立される。のちに民営化される場合もある。
一例としては、NTT、日本郵政グループ、JT、日本政策投資銀行、成田空港や新関西空港、東京メトロ、NEXCO(ネクスコ)、首都高速や阪神高速。他にもあるが。
ちなみに、JALとかJR東海なども過去は特殊会社だった。
話が逸れた。
高速自動車国道とは違うが、首都高速や阪神高速などの都市高速道路も同様に管理者は自治体。
高速道路株式会社や高速公社が実際には整備や維持管理も行っているが代行しているにすぎない。
だから、道路法上の位置づけは単に市道だったり県道だったりする。
高速自動車国道は東北中央自動車道とか東海北陸自動車道とか〇〇自動車道と付く。
では、東名高速道路とか名神高速道路は?
これは俗称で正式名称は、東名高速道路は第一東海自動車道で、名神高速道路は中央自動車道 西宮線、新名神高速道路は近畿自動車道名古屋神戸線となっている。
ネクスコに関しては、前身が日本道路公団という特殊法人で、民営化されてネクスコという特殊会社になった。
ネクスコとは東日本高速道路㈱と中日本高速道路㈱と西日本高速道路㈱という法人3社の総称となっている。
元々、道路というのは無料通行が原則だったが、1952年に道路整備特別措置法という法律により有料化が可能となった。
そして、1956年、高速道路を整備して維持管理そして運営を行うために日本道路公団が設立された、という歴史がある。
さて、幹線道路という呼び方がある。
この呼び名は法律上はしっかりと位置づけられていない。
ただ、国土交通省の通達「道路の標準幅員に関する基準について」のなかでも、幹線道路というものが説明されている。
主要幹線道路、幹線道路、補助幹線道路の3種類である。
一般には、骨格的な道路網を形成する道路とされているし、国交省の資料でも普通に出てくる。
でも、幹線道路という法律的な言葉はない。
しかし、幹線街路という道路は法律上にある。
道路と街路の違い。
それは道路法ではなく都市計画法。
都市計画法で規定している道路は5種類
・自動車専用道路 → 都市高速道路、都市間高速道路、その他の自動車専用道路
・幹線街路 → 都市の主要な骨格をなし、近隣住区等における主要な道路または外郭を形成する道路。主要幹線街路、都市幹線街路、補助幹線街路に細分される。
・区画街路 → 宅地の利用のための道路
・特殊街路 → 自動車以外の交通(歩行者、自転車、新交通システム等)のための道路
・駅前広場 → 道路の一部として整備される広場
幹線道路というのは、この幹線街路から派生した言葉ではないか、と思う。
区画道路というのも、同様に区画街路から生まれただろうと。
もう一つ、高規格幹線道路というものもある。
こちらは、1966年の国土開発幹線自動車道建設法という法律がスタート。
この法律で整備された道路は、国土開発幹線自動車道、いわゆる国幹道というもの。
国土開発幹線自動車道はすべて(道路法上の)高速自動車国道である。
また、高速自動車国道はすべて高規格幹線道路である。
なので、集合で考えると、高規格幹線道路が最も広い集合体となる。
高規格幹線道路は、国土総合開発法にもとづく第4次全国総合開発計画にて全国14000kmの整備が定められた。
具体的にどんな道路かというと、国土開発幹線自動車道(高速自動車国道)と(道路法上の)一般国道の中の自動車専用道路である。
※正確には、本州四国連絡道路を追加するが。
高規格幹線道路 = 高速自動車国道(11520km)+ 一般国道のうち自動車専用道路(2480km)= 14000km
となっている。
が、ここでまた、自動車専用道路というものが出てきたが、これは都市計画法で定められた道路となっている。
つまり、高規格道路というのは、高速道路はすべて含まれ、その他もある。
それは、一般国道の中で、都市計画法において自動車専用道路とされたものが加わっている、ということ。
この14000kmというのは、4全総(第4次全国総合開発計画)において閣議決定されているが、すべてが供用しているわけではない。
まだ約8割の整備状況。なので、残りの約2割はこれから整備する。
まだ他にも、道路の種類はある。
地域高規格道路、というもの。
これは高規格幹線道路に「地域」がついて「幹線」が取れたもの。
これは、まず首都高速や阪神高速、名古屋高速など都市高速道路などが相当する。
都市高速道路とは都市計画法上の都市施設である道路のなかの一つで、自動車専用道路というもの。
他にも、様々な道路が地域高規格道路として指定されている。
例外的ではあるけど自動車専用道路以外の道路も指定されている。
これは、平成6年の広域道路整備計画の策定により、地域高規格道路が位置づけられた。
全国で約6000km程度が指定されている。
そして、現在、国土交通省にて検討されているのが「広域道路(仮称)」というもの。
地域高規格道路だけでなく、さらに「新たな広域道路ネットワークに関する検討会」を行い、広域道路(仮称)の整備を検討している。
これは、平成6年の広域道路整備計画の改訂版という性格を持っている。
ここまでくると、道路をまだ作るのか?という声も聞こえてくるかもしれない。
国交省のHPには最新の検討会の資料が6月8日版として掲載されている。
資料を見れば分かるけど、他国との整備率の比較や渋滞損失、災害時のリダンダンシー、自動運転などを見据えた整備計画として検討を進めているらしい。
ただ、個人的には、新設道路を作るなら完全自動運転車の通行のみのような道路が良いのではないか、と思っている。
費用対効果が高そうだから。
なぜなら、完全自動運転車のみの世界は当分先になる、とも言われている。
それまでは、現在の自動車と自動運転車の混在が相当長い期間続く、と。
そうなると、運転席がなく、車内で、睡眠を取ったり、読書をしたり食事をしたりできるような完全自動運転車は中々、機能を発揮できない。
だから、完全自動運転車のみの道路を建設すれば、そこを通行している時は、機能を発揮できそうだし、そんな道がたくさんあるなら、皆が完全自動運転車に買い替えるのかもしれない。
だいぶ話が最後は逸れたけど、道路に関する整備計画は今なお進んでいる。
道路は複雑な法体系になっているので、あまり深入りしても意味がないので、この辺で終了する。