前回のブログではMaaSの凄さが分からないと書いた。
前回のブログでも書いたが、かのGoogleのCEOであっても、検索連動型広告のビジネスモデルを部下から聞いた時は、その価値をすぐには理解できなかったという。
それだけ、新たな価値の創造とは理解しにくいものらしい。
MaaSについても、何をそんなに騒いでいるのかよく分からないが、まずは騙されたと思って読み進めることにした。
そして、第4章以降を読み進めるうちに、何となく凄そう、という感覚になってきた。
今日は、そのあたりを書いていこうと思う。
おさらいになるが、MaaSの主なプレイヤー以下の通り。
1 ユーザー
2 交通事業者・・・バス事業者、タクシー会社などなど
3 MaaS事業者・・・各事業者と連携してユーザーとの窓口になり事業を進める統括責任者
4 各企業体・・・クラウド会社、チケット発券業者、経路探索サービス会社、保険会社、行政などなど
MaaS事業者の仕事は何か?
モビリティ系データ、ユーザー系データをそれぞれ分析すること
モビリティ系のデータとは、経路の時刻表、普段の混雑具合のデータ、遅延情報など。
ユーザー系データとは、普段の移動実績、天候による変動実績、イベントによる変動実績など。
これらを分析して、さらにダイナミックプライシングを実行したと仮定したら、利用者にどのような行動変容が現れるのかを予測する。
これらを分析して、予測して、交通事業者や利用者に発信するのである。
交通事業者への発信内容としては、混雑が予想されそうだから増便ができないか、とか、料金を変動させて利用者の分散を図ることができないかな、などの提案である。
交通事業者にすれば運営効率が上がるので、運賃収入などの増加につながる提案となるはずである。
利用者への発信は、より安価な移動手段やルート、鉄道やバスなどの遅延情報が入ってきたら別の経路や別の交通手段を案内したり、何らかのイベントと重なって車内混雑が予想される場合は時間をずらすことで混雑を避けれることや、道路渋滞が発生しているのでタクシーではなく、シェアサイクルの利用など提案したりする内容である。
現代人が聞くと、そこまで至れり尽せりをしなくっても、と思ってしまう。
今のyahoo乗換案内のアプリで十分と思ってしまう。
しかし、それが当たり前になると、今度はそれがない世界では、とても移動などしてられない、という状態になるから人間とは如何にわがままな存在なのか。
このわがまま、楽をしたい、という怠惰な欲求に働きかけてGAFAはここまで大きくなってきたのだから、将来のMaaSも、同様の状況になる可能性は高い。
さて、次にMaaS事業者により、今では考えられないような至れり尽せりの移動支援が行われたとして、交通事業者にはどんなメリットがあるのだろうか。
交通事業者と言っても、鉄道、タクシー、バス、シェアリング自転車とあるので、それぞれ事情が違うだろうが、共通することを挙げてみる。
まず、ユーザーとの最適マッチング機能が強化されるので、効率がよくなるはずである。1台の車両に、より多くの乗客を乗せた状態を今よりもたくさん作れるようになる。
鉄道からバスへとユーザーがモビリティを転換しただけの場合、バス事業者が特をして鉄道事業者が損をすることになるが、そうではなく、全体の移動量を底上げすることになるはずである。
なぜなら、今より移動がしやすくなるので、理屈として移動量は増える。
これは、スマホがなくてはならない存在になったことを考えれば、当然の理屈である。
スマホとは携帯電話ではなく携帯パソコンである。
もし、20年前の2000年当時、スマホの話を聞いても、多くの人が必要ないと思うのではないか。
いくら手持ちサイズになったとしても、わざわざパソコンを持ち歩かなくてもいい、と。
わざわざパソコンを持ち歩いてまで調べ物やネットサーフィンをしなくてもいいよ、と。
しかし、現実にはスマホはなくてはならない持ち物になった。
家でノート型パソコンだけがあるひと昔前より、今はスマホを使ってネット検索をする回数は何百倍にも増えていると思う。
このように、MaaSでも、超便利な移動支援ツールができれば、今より気軽に移動するようになるだろう。
しかし、MaaSには多くの課題がある。
ブログを書いていて思ったが、MaaSもスマートシティと同じ種類の困難さを抱えているのではないだろうか。
スマートシティとは、交通、エネルギー、ゴミ、上下水、通信などのインフラを街全体で最適化を図り、ユーザーにとっても社会にとってもお得な状態を作り出すこと。
国交省の定義は
「都市の課題をICTなどの新技術を使ってマネジメントすること。結果として全体最適が図られ、持続可能な都市のことをスマートシティという」
MaaSも似たようなもので、これまでは単独の事業者がユーザーと直接やり取りをしていたが、これからはMaaS事業者がICTを駆使して、交通の需給を俯瞰して、最適な移動手段を見出すことで、ユーザーに移動の最適解を提案する。
これって、ほとんどスマートシティの交通分野版である。
つまり、MaaSとはスマートシティの一部であり、スマートシティを進める上での最重要テーマ、ということだろう。
スマートシティが実現される段階では、多くの新たなビジネスが生まれると思われる。
MaaSも同様だろう。
MaaSといっても交通事業者だけがステークホルダーではない。
そのため、交通事業者だけが恩恵を預かるのではなく、例えば、交通事業者同士の垣根が分かりづらくなるのだから、新たな保険商品が生まれるかもしれない。
保険会社にもチャンスが生まれる。
このように、交通事業者以外にも新たなビジネスチャンスが生まれる、とされている。
一方で、気になることもある。
それは、そのエリアの移動プラットフォームを一事業者が握る、ということ。
これは、水道事業をコンセッションにする時も話題となるテーマだが、インフラを一民間事業者が握ることへの何となくの不安。
と言っても、飲み水となる上水道事業ではないので、問題ないとは思うが、少しだけ気になった。
だからと言って、MaaSを行政にできるだろうか。おそらく無理である。
それでも、理想をいうなら、行政がプラットフォーマーとなるべきだろう。
なぜなら、道路にロードプライシングなどの料金徴収権は国や自治体にしかないからである。(一部、有料道路はコンセッションが実現しているが、一般道では皆無である)
ロードプライシングとは、道路利用者から地区や時間帯によって料金を徴収する制度のことであるが、それができると、道路の渋滞を抑制したり、渋滞を回避する交通モードを選択した人にインセンティブを与えたりできる。
そうなると、MaaSは好循環に入っていく。
ただ、グーグルもアップルもMaaS事業者という都市の人の流れを制御するプラットフォーマーになることを目指しているという。
日本の都市の交通手段の選択権や微調整などなどを海外企業に握られるのは、勘弁してもらいたい。
ウーバーやリフトが日本の国民の移動という基本的行動の調整権を握るのだけは勘弁してほしい。