「MaaSが都市を変える(学芸出版社)」を読んだ感想をメモっておこう。
著者は牧村和彦氏で、色々と肩書きの多い人だが、国の研究会の委員なども多数歴任されているらしく、そういう意味では国の動向にも合わせて書かれていると思われる。
尖った意見ではないにしろ、独りよがりの意見でもないと思われ、勉強になると思うので読んでみた。
MaaSに感する本を読もうと思った理由を書いておく。
それは、建設業に関わる者として、将来のインフラのあり方については、常に自分なりの考えを持っておくべきと考えているからである。
インフラの代表格といえば道路。「道路」について、未来の道路とはどんな形状、どんな使われ方をしているのだろうか。
人口減少社会、超少子高齢化社会、DX社会、AI社会の中にあって、道路はどう変わるべきなのか、それを考えておこうと思った。
そこで、目をつけたのがMaaS。
Mobirity as a Serviceの略である。
近年、右を向いても左を向いてもMaaS。
MaaSに関する本も結構出版されている。
そのため、MaaS関連本を読んでみようと思ったのである。
今回はまだ読みかけ中だが、「おおっ」と思ったことを記憶しておくためのメモがわりにブログを活用する。
第2章まで読んでみたが、現代の都市が抱える課題を挙げている。
が、これは交通政策が抱える課題と読み替えても良い内容。
交通政策とすると鉄道などもあるが、車両が運行する場所はほとんどが道路であることから、道路の課題を考えることは、都市が抱える課題を考えることになると思われる。
このまま読み進めると、課題を解決ための対策がMaaSという展開だろうと予測するが、まずは課題をメモっておこう。
さて、本書では都市の課題を複数、挙げている。
1 交通事故
これは世界では毎年135万人が死亡している。
日本では3000人弱。
人口2.5倍ほどのアメリカでは4万人近くが亡くなっているから、日本は交通安全という意味でも安全な国である。
きっと、今回のコロナ禍のマスク着用などを見ても、ルールを決めたら守る、という国民性と関係しているからだと、勝手に思っている。
日本の交通死亡事故数は、平成5年前後を境に、一貫して減少している。
これは車側のセーフティー機能が充実してきたこともあるだろうし、道路施設側で交通事故対策を取ってきたこともある。
24時間以内の死者数は3000人を切るところまで減少しているが、それでも死傷者数となると46万人となる。
まだまだ、交通事故を克服したわけでは全くない。
今後、問題となってくる事としては、車を運転している人の年齢構成がどんどん上がっていることが挙げられる。
高齢者の事故が多くなっているのは、このようにドライバーの高齢者の割合が高くなっているから、という当たり前の理由もある。
2 交通渋滞
これは先日のブログでも書いた。
日本人の交通渋滞による損失時間は年間50億時間。
労働力に換算すると280万人分というから、すごい損失だ。
生産年齢人口の減少が本当の問題であり、生産年齢人口とは15歳から65歳であり、問題の本質は労働力の減少となるからである。
そういう意味で280万人分の労働力を捨ててはおけない。
ちなみに、今の車両台数のまま自動運転車に変わると、規制速度を遵守、車両間隔も安全確保のため広めにとるため、時間当たりの通行可能な交通量は減少する可能性もあるらしく、そうなると、単純に自動運転車に置き換わるだけでは、渋滞時間は増加する恐れがある。
3 車の稼働率は5%
日本の車は1日の95%は駐車場で眠っている状態にあるらしい。
単純に勿体無い、という話ではない。
もっと効率的に使えば、そんなに駐車場が必要ない、というのである。
中心市街地の10〜20%が駐車場に占められているらしい。
この土地を別の使い方ができるのである。
人が住めば、都市計画税や固定資産税などの税収増も期待できる。
4 公共交通分担率
本書では群馬県の移動手段の調査報告が書かれている。
鉄道2.5%、バス0.3%、自動車77.9%。
これは自動車大国のアメリカをも超える異様な数値らしく、車がないと生活できない実情が現れている。
このままいくと、鉄道経営も成り立たない。
バスも赤字だろう。
公共交通機関が破壊されてしまう。
5 外出しなくなった
若者が休日に外出しなくなったようだ。
若者と高齢者を比較すると外出率は高齢者の方が高いらしい。
この30年間で20代の外出率は半減したらしい。
まあ、アマゾンプライム、Yutube、ネット販売など、外出しなくてもスマホで娯楽が十分にあるから、当たり前かもしれない。
メタバースが広がるとさらに拍車がかかるだろう。
6 スマホに移動手段も依存
何から何までスマホに頼りっきりなので、目的地までの移動手段をスマホで調べて、スマホが示さなかった移動手段は存在しないものと同じという状況になっている。
7 移動車両や運転手などの非効率性
3000人規模の集落であっても、それなりに移動手段は確保されていることが問題となっている。
これは、つまり過疎になって移動手段がなくなってしまっていないだけに、余計にまずいのではないかとぼくは感じた。
つまり、車両も運転手もしっかりと存在しているのだ。
しかし、バスは運行されていても、人は乗っていない。
でも、1日を通してゼロではない。
まずい、というのはそういうことである。
人口がゼロの村ができるのなら良いのだが、ごく少数の高齢者だけが住んでいることが問題ということ。
ごく少数の高齢者がまだらに住んでいる、ということは、1軒1軒のための水道管、下水管、ガス管が配置されていたり、バスの駅が残されたり、鉄道が廃線できなかったりするという問題である。
最後の方は、人口消滅都市というショッキングな内容で話題となった話である。
人口減少だけでなく、スマホに代表されるデジタル社会によって生まれてきた課題も多い。
デジタルで生まれた課題はデジタルで解決しよう、これらの都市が抱えるようになった課題はMaaSが解決できる、という展開で本書は進んでいくのだろう。
それでは、次回のブログでは、本書を読み進めて、解決策を書くことにする。