「生産性向上」の論文骨子の考察 ~模範解答2 (答案形式)について~

第二回目。

建設分野における生産性向上について、技術士論文の模範解答をインターネットで見つけたので、その模範解答について思ったことをメモする。

模範解答は下記の「株式会社 技術士合格への道研究所」のHPに掲載されている。

技術士試験合格講座「 技術士二次試験模範解答 2019年 建設 必須科目」

 

問題文を簡単に書くと

➊生産性向上を進める上で多面的な観点から課題を洗い出す。

➋洗い出した課題から最重要なものを一つあげてその解決策を複数書く。

❸複数の解決策を実行するうえでの共通リスクを書く。

➍解決策を実行する上での要件を倫理、持続可能性の観点から書く。

 

そして、今回は模範解答2について。

それでは読んでいく。

 

『』はHPの引用。つまり模範解答部分。

模範解答を分解しながら、ぼくなりの感想をメモしていく。

自分で論文を書かずに、人の論文にケチをつけるみたいだけど、実はそうではなく、色々な人の論文を見て勉強する、という姿勢でメモしていく。

 

➊として課題設定から始まる。

1.建設分野における生産性の向上について

『(1)担い手確保

 近年、建設業界においては若手入職者がいない、建設業に魅力がない等の慢性的な課題がある。

それは、建設業は労働時間が長い、休暇が取れない、賃金が低い、女性の建設業従事者の出産、育児とは両立できないイメージの為、復職しにくいが原因である。』

 

→ 生産性向上において、担い手確保は妥当な課題だろうか。

かなり疑問がある。

まず、生産性が低いから生産性向上が求められる、という背景がある。

さらに、これまでと同じ労働力を確保できない状況、つまり人口減少社会の到来である。

さらに、技能労務職の大量退職による建設現場における労働人口の減少という問題。

だから、少ない労働人口においても、これまでと同様の生産力を保持するには、一人当たりの生産性、一社あたりの生産性をそれぞれ高めなければならない。

これらの解決策となるような課題設定が求められると思う。

しかし、この担い手確保は、すこしズレているように思う。

労働力不足を補う上での課題であって、生産性向上への課題ではない、と思う。

 

 

『』はHPの引用。

『(2)作業の効率化

 ICT活用、AIの活用により、建設業における生産性の向上が図られた。

作業の効率化を図るが、それを扱える若手技術者が少ないのが現状である。

ICT技術を取り入れるには費用がかかる、技術についての講習機会が少ない等の原因がある。』

 

→ 解答を読むと、作業の効率化を図ることで生産性の向上を達成しようとする試み。

そのためには、ICT技術を扱える若手技術者の確保が課題として挙げられている。

確かに、その通りと思う。

ただ、若手に限定する必要があるのだろうか、という思いがある。

なぜなら、ICT技術を駆使するためには、従来技術をしっかりと習得したうえでの新技術活用と思うから。

 

 

『』はHPの引用。

『(3)技術継承

 建設技術者の若手従事者への技術継承が円滑に進んでいない事が課題である。

建設技能労働者の作業段取り、方法、作業・安全に対する取組み方等に対する技術を継承する機会が少ないのが原因である。』

 

→ 解答を読むと、技術力の継承が進んでいないことが挙げられ、その原因として、そもそも技術に触れる場が減っていることが挙げられている。

確かにその通りと思うが、これまた生産性の向上につながるだろうか。

これは現状維持。

工事件数の減少により、経験値が下がっている若手に対して、なんとか技術を継承しようということで、生産性向上という意味ではピントがズレていると感じる。

 

 

次に➋の最も重要な課題と複数の解決策へと移る。

2.作業効率化における解決策

 

『』はHPの引用。

『(1)ICT活用  

 3次元設計データを設計から施工・維持管理まで活用して作業効率の向上を図る。

測量にかかる時間及び作業員を半分以下、丁張りにかかる作業員の人員を約1/3に削減し、重機における作業性の向上により施工能力を約1.5倍に向上できる。』

 

→ 最も重要な課題を作業効率としている。

複数の解決策の一つ目は、ICT活用。

ん~3次元データを建設産業の全プロセスに導入することは確かに、その通り。

しかし、どれだけの現場で3次元データ活用が為されているだろうか。

また、重機の施工能力を1.5倍と数値を出すにしては現場条件が何も分からず、かなり雑な解答と感じる。

確かに、国は3次元データ活用を推進しているので、解答の方向性は正しいと思うけど、何かしっくりこない。

 

 

 

『』はHPの引用。

『(2)コンクリート工の規格の標準化

 各部材の規格(サイズ)を多様化し標準サイズを増設し、定型部材の組み合わせを増やす事でプレキャスト化し現場作業の効率化ができる。

鉄筋をプレハブ化、型枠をプレキャスト化する事により、型枠設置作業等を無くし工期短縮を図る。』

 

→ これを見て、i-constructionの推進だと思った。

ICT活用に規格の標準化ときたら、そうだろう。

そして、i-constructionは、国の生産性革命プロジェクトの目玉施策なので、論文の方向性は良いと思う。

 

 

 

『』はHPの引用。

『(3)情報の共有  

 設計から計画・調査~施工~維持管理までのデータを共有する事により新たに図面を作成・数量算出等における時間を削減する事ができる。

BIM/CIMモデルを活用し、鉄筋の干渉具合のチェックが容易になり、手戻りが無くなり効率的に作業ができる。』

 

→ 情報の共有することは、(1)のICT活用で書かれていることと重複している。

また、BIM/CIMモデルの活用も(1)の3次元データ活用と重複している。

この場合、(1)と(3)が同じことを言っているので、あえて3つの課題を挙げる必要はないのではないか、と思った。

 

 

次に❸の、リスクと対策を読んでいく。

『』はHPの引用。

『(1)技術に頼りきる 

 ICT技術等で正確に施工ができる事がわかると、技術を頼りきってしまい、確認作業を行わないリスクが生じる。

対策としては、技術に対する理解と理論を身につける必要がある。

また、確認作業はダブルチェックを行い、手戻りをなくす。』

 

→ なるほど、これまではICT技術の活用により、成果品がブラックボックス化すること、すなわち、なぜそのような答えが出たのか分からないまま、進めてしまうことにより、真の技術力が低下することがリスクと思っていた。

部材の応力のかかり方などが分からなくても、対応できてしまうリスクを感じていたが、確かに、確認作業を行わない、というリスクもある。

そのための対策がダブルチェックということか。

なるほど。

 

 

『』はHPの引用。

『(2)予測不能なエラーに対して対処できないリスク

ICT技術は機械であるために、決まった行動に対しての判断はできる。

しかし、予測不能な事態の場合、その状況を対処できる判断力がない。

対策としては、予測不能な事態が起きた場合は、機械が停止しアラーム等で状況を知らせ、人間が判断を行う事が必要である。

最終的な判断を機械ではなく、人間自身が行う。』

 

→ なるほど、なるほど。

電源が落ちたときの人間のパニックぶり。

北海道のブラックアウトにより電力を失った現代人の脆さ。

これと同じことがICT技術に慣れた未来人には起きるリスクがある。

そこを回避するには、手計算で処理できる技術力も両方を持ち合わせていなければならない。

これはとても難しいこと。

しかし、これまで以上に技術力に対する資格や資格保持者の入札条件など、総動員による対策が必要だろう。

 

 

『』はHPの引用。

『(3)安全がおろそかになるリスク

ICT技術向上を優先させてしまうと作業の安全がおろそかになるリスクがある。

対策としては、生産性を向上させるのに優先させる技術を選別し、優先して失った部分は計測装置等で安全性をカバーする。』

 

→ これはどういう意味だろう。

ICT技術は安全性を高めるものという理解をしている。

重機との接触事故は確実に減る。

ん~ドローンなどでは公衆災害などの発生リスクは高まる可能性はあるよな~。

やはり、対策としては、基準類の整備だと思われる。

労働安全衛生法規則などでも、ICT建機に対応した基準にはなっていないと思われる。

このあたりの法規則の改正が急務ではないか。

 

 

最後に、➍の実行要件を倫理と持続可能性から論述する。

4.生産性を向上するのに必要な要件

 

『』はHPの引用。

『(1)作業効率化と共に消費燃費の向上

社会持続性の観点からICT技術を取り入れ生産性を向上させる為の重機等の建設機械の消費燃費も向上させる。

また、それに伴い使用する重機等、付属の建設機械等も含めて、排出ガスの抑制に努め規制・基準内に適合する必要がある。』

 

→ 持続可能性ということで環境面からのアプローチか、なるほど。

確かにCO2削減など地球温暖化による気候変動への対応は待ったなしの状況。

その意味で環境対策は必須事項といえる。

なるほどなるほど。

 

 

『』はHPの引用。

『(2)生産性を向上させる業務において安全最優先

技術者倫理として、公共の安全を優先させる事が大切である。

生産性を向上させると共に作業の安全性も向上させる必要がある。

人への危害又は損傷の危険性が、許容可能な水準であり、安全性が法令、基準に適合する為の安全性を確保する。』

 

→ 建設業は全産業の中で労働災害が2倍という高い割合をキープしている。

作業員への安全性確保は当然のこと。

 

 

『』はHPの引用。

『(3)ICT活用業務に多様な人材の活用

社会持続性の観点から生産性を向上させ、女性や高齢者等の活躍できる社会を実現させる。

女性や経験の浅い技術者等がICT技術を使用することにより、作業を効率化できる。

また、高齢者が活用できる作業を選定し、建設従事者の人材を確保する。』

 

→ なるほど、女性や高齢者の活躍できる社会の実現か。

確かにそりゃそうだ。

人口減少社会において、また特に労働生産人口の減少が著しい現代において、女性と高齢者の活用は必須。

ICT技術と女性は相性が良さそうなイメージはある。

また、高齢者が活躍できる作業を選定して人材を確保するということも必要だろう。

 

 

いや~勉強になった。

これまで、倫理や持続可能性の観点から論文を考えたことがなかったので新鮮だった。

しかし、自分で考える前に、他の人の答案を見てしまったことは、少し心配。

自分で考えることが出来なくなったら困るな~。

 

今日勉強した模範解答を表にまとめておく。

多面的な観点の課題 最も重要な課題の複数の解決策 共通するリスク リスクへの対策 実行すための要件(倫理と持続可能性の観点)
生産性の向上 担い手確保
作業の効率化 ICT活用 技術に頼りきる ・技術に対する理解と理論を身につける

・ダブルチェック

・消費燃費の向上

・安全最優先

・女性や高齢者等の活躍できる社会を実現

コンクリート工の規格の標準化 予測不能なエラーに対して対処できないリスク 最終的な判断を機械ではなく、人間自身が行う
情報の共有 安全がおろそかになるリスク 計測装置等で安全性をカバー
技術継承

 

 

 

 

 

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