日経コンストラクションという業界雑誌の中で「技術士一直線」というコーナーがある。
この雑誌の2月号を読んでいて、ぼくが思っていた認識と少しだけ違うところがあったので、そこを書いておく。
技術士論文の中で区別しなければいけないとされている「課題」と「問題」のこと。
1カ月以上前の記事になるけど、ぼくなりの考えで問題と課題の違いをメモった。
未来のインフラを考えるメモ「課題と問題の言葉遊びだったはずが」
論述の中で課題遂行能力と問題解決能力を区別して論述しなければいけない、とされているからである。
ただ、この2つの語句、普通に考えると同じことだろう、と思ってしまう。
しかし、それでは論文として不正確な表現になる可能性があるということなので、一度、その違いを考察しようとしたのが上記の記事。
しかし、「技術士一直線」では少しだけ、ぼくの考えと違うので、そのあたりをメモっておく。
前回のぼくのメモ
・問題とは、現状困っていること。
・課題とは、問題を解決するための方向性。
そのため
・課題遂行能力とは、問題を解決するための方向性を見つける能力
・問題解決能力とは、方向性の先にある実施計画を細かいハードルを乗り越えて実行する能力
と書いた。
この時の問題解決能力とは、現状困っている問題、という意味ではない。
ここでいう問題は、課題を遂行する上でさらに発生する問題、という意味。
つまり、技術士とは評論家であってはいけないわけで、問題解決の方向性だけを示すのではなく、実務として実行しなければいけない。
だから、そのあたりの違いを課題と問題として分けて理解したつもりだった。
「技術士一直線」を読むと、ぼくの考えと大きく違う訳ではないけど、まったく一緒ということでもない。
その記事によると
・問題とは、目標と現状のギャップであり、事象、事柄をいう
・問題点とは、問題全体の一部で改善可能なこと、手を打てることをいう
・課題解決とは、問題点の中から事象を技術的に解決する行為をいう
そして、論文では課題遂行(解決)能力を問われていることを意識して記述しなさい、と書かれている。
「その業務において何が「問題点」だったのか、そして問題点を解決するために何が「課題」となったのか、加えてその課題をどのように解決したのか」
らしい。
ぼくは「問題」は現状困っていること、と書いたが、この記事によると目標と現状のギャップらしい。
しかし、目標と現状にギャップがあれば困っている訳で、困っていることを問題としても良いと思う。
次に、「問題点」とは「問題」の中でも改善可能な一部分ということらしい。
言っていることがよく分からないので、実際の例で考える。
例えば、インフラメンテナンスで考えてみる
「問題」は確実なメンテナンスができなくなる恐れがあること ← 恐れなので現状すでに困っていると解する
「問題点」は改善可能な一部分、となると、老朽化、これは老朽化対策ということで予防保全型のメンテに変えることで対応可能
「課題解決」とは、問題点の中から事象を技術的に解決することらしいので、今回でいえば、予防保全型のメンテナンスを実行するためには、点検調査の仕組みをつくること、他にも、調査結果を正確に診断する能力を持つこと、さらに、診断結果から適確な時期に修繕を施すこと。
という感じだろう。
しかし、この「技術士一直線」には、すんなりと納得できない部分がある。
なぜなら、「必須」論文では、課題遂行能力と問題解決能力を見るもの、としっかり書いてある。
遂行するとは、良いことを遂行する、というように日本語では使う。
解決するとは、同様に、悪いことを解決する、というように使うだろう。
しかし、「技術士一直線」では、課題解決能力となっている。
つまり、課題を悪いこととして捉えている。
この時点で腑に落ちない。
なので、色々迷ったけど、さっきのインフラメンテナンスの例で、ぼくの考える課題遂行能力と問題解決能力は以下のように考えることにする。
前回のぼくのブログとそれほど変わっていない。
課題遂行能力は、どんな方向性で問題を解決すれば良いのかかを見つけ書き出すのではなく、その方向性で進める上での実務的なハードルを越えようとする能力。
なので、課題は、問題を解決する上での方向性の中にあるハードルや留意点。
だから、ハードルなのでプラス(正)のことではないが、問題というほどのマイナスのイメージではない。
留意点であれば、ハードルよりもさらにマイナス性はない。
問題を解決するために越えなければいけない壁のようなものなので、プラスの方向をすんなり進ませてくれないもの。
マイナス(負)ではない。
具体的に書くと、課題遂行能力は、予防保全型のメンテナンスを行う方向性の中には、点検調査の仕組みを作ることや調査結果から診断する能力を養うことが含まれており、そのためのハードルといえば、5年に一度の法定点検を実施するだけの財政力や管理地内の施設の状態を把握しておくことが挙げられる。
診断能力という点では、技術力の養成があり、それを記録して繋いでいくことも大切。
これらはハードルというよりも留意点というべきものかもしれない。
そして、「問題」とは、点検調査を5年に1度の間隔で実施しようとした場合、財政難や技術不足で5年に1度が達成されない恐れのことだろう。
最後に「問題解決能力」とは、例えば、新技術を活用することでよりコストを下げられないか検討することや、点検士のような資格取得により技術力の向上を図ることで解決を図る、というように締めれば良いと思った。
やはり、技術士論文は評論家論文ではいけない点に注意すれば良いと思った。
そして、まとめになるが、「課題」はあくまでも問題を解決するためのハードルや留意点。
「問題」はハードルを越える上で発生してくる詳細な問題。
なので、「問題」といっても、大きなテーマに対する問題と、課題を遂行しようとした時に初めて発生する問題に分かれる。
インフラメンテナンスがなぜ問題なのかといえば、大きなテーマとしての問題は、施設整備後の年数経過や社会保障費の増大による社会資本整備への財政支出が削減されていることだけど、その問題を技術士が解決することはできない。
これは解決できない問題。
技術士が解決できる「問題」とは、「課題」を遂行しようとするとハードルがあり、それを分解すると「問題」が見つかる。
この部分の「問題」が、技術士が解決すべき「問題」となる。
そして、問題解決能力とよばれる問題は、この部分のこと。
課題を遂行しようとしたことによって発生する問題を解決する能力、ということになる。
前回のブログで、自分では納得していたつもりが、日経コンストラクションを読んで、もやもやが生まれたけど、結果オーライでさらに、論文の書き方がクリアになった気がする。
まだ、実際に書いたことはないけど・・・。