インフラ施設による防災の限界が見える

朝からコロナと河川の氾濫のニュースばかり。

国交省が新型コロナ対策も含めた、今後の国土交通技術行政の方向性を提示したようなので、本当はそのことについてブログを書こうと思っていたんだけど、河川が氾濫したニュースばかりなので、少し防災インフラについてメモることにした。

 

ぼくが言いたいことは、もう限界を迎えている、ということ。

インフラのこと。

これが率直な感想だし、きっと皆もそう考えているのではないだろうか。

毎年毎年、雨が降るたびに河川が氾濫して人が死んでいく。

家や事業場、工場が破壊されていく。

毎年、進撃の巨人がやってくるようなもの。

もはやインフラで都市を守ることはできない。

よく、技術者たるものは、インフラで暮らしを守れないなどと言ってはいけない、といわれるが(ぼくは言われたことはないけど、そんなイメージがある)そんな恰好をつけている場合ではない。

 

 

平成30年から始まった「防災・減災のための国土強靭化のための3か年緊急対策」も今年が最終年度である。

その効果はどうなんだろう?と思ってしまうような今回の水災害。

 

コロナ対策で政府もかなりの財政出動をしているので、来年度以降は防災対策の予算すら厳しいのではないかと思ったりもしていたが、この状況で防災対策費を削減していったら将来どうなるのだろう?

 

とはいえ、実際に3か年緊急対策を実施しても、今回のように災害は全く減らない。

防災インフラの整備となると、長期間におよびコストも莫大なものとなる。

施設の老朽化対策すらギリギリの状況のなか、気候変動によりさらなる施設のアップグレードを求められも対応できないだろう。

だから、もう限界にきているのではないか、ということ。

 

 

昔から河川は氾濫していたし、その氾濫を治めるために土木技術は発展してきた。

測量に始まり灌漑施設、水路、道路ときて、江戸時代になると河川の水の流れすら変えてきた。

人間は、森の中や高台で暮らすよりも、河川が氾濫するようなリスクの高い土地であったとしても、それでも肥沃で平常時に有効利用が可能な平野の方を選んだ。

だから東京、大阪、名古屋と三大都市圏はすべてゼロメートル地帯を抱えた、防災でいえばリスクの高い地域。

リスクが高いことを知った上でご先祖様はこの地を選び、それを土木技術で克服してきた。

 

だから、ぼくは今でも、気候変動による新たなステージに入ったといわれる水災害だって、予算さえつけば防ぐことができると思っている。

高度経済成長、人口増加、税収も右肩上がりの状況なら、現状のインフラ設備をさらにアップグレードしていくことができる。

毎年、GDP5%成長が望めるのであれば、克服できる土木技術があると思っている。

 

でも、今はまったく逆。

経済成長どころか、今回のコロナ禍によりマイナス成長になり、人口だって横ばいどころか減少している、それも15歳~65歳未満の生産年齢人口の減りが激しい。

今後の税収だってコロナの状況をみれば、減少に転じることは容易に伺いしれる。

そうなったとき、現在のインフラをアップグレードするどころか、維持することすら厳しいだろう。

さらに、施設というものは歳をとっていく。減価償却という考え方がまさにそれ。

老朽化への対応が間に合わなければ、インフラで都市を守ることなどできない。

やがては従来レベルの災害にも対応できなくなる。

ましてや、気候変動に伴い河川流量を見直した河川整備計画など作っても、計画倒れになる公算が高い。

 

 

しかし、よくよく考えると、被害を受けるのは国民であり、企業である。

国民を守るのは公共の役割だとしても、企業を守るのにどこまで公共が対応すべきなのだろうか。

自然災害の場合、事業場や工場、畜産も含めた農家もすべて公共が補償をしている。

しかし、国民を災害から・・・特に命を守ることは公共の役割だとしても、民間企業の財産的価値の補償をどこまですべきなのか?

ぼくは、公共がすべきではない、と言いたいのではなく、全体最適を考えたとき、どこに公共投資をすべきかという視点が必要ではないか、ということを言いたいだけ。

災害を受けた時、少ない原資を民間に対しての補償金として使うことが正なのか?

民の財産への補償を行うのであれば、公共インフラなど災害から人々の命や暮らしを守るためには予算を使えない。

再度災害防止や事前災害防止には予算を使えなくなる、ということ。

補償に使うということはそういうこと。

 

 

この辺りは、経済学をまったく知らないぼくがあまり口を挟んでい良いところではないと思う。

どんどん国債を発行して、補償も災害防止対策も老朽化対策もすべて実施すればよい。

国交省の予算を今の倍の15兆円程度にして対応すれば良い、という考えもあるかもしれない。

それで何も問題がないのであれば、そうすれば良い。

それならそれで良いのだけど、実際に財務省はそんな予算を付けない。

そうなれば、老朽化対策か災害防止対策のどちらか、または両方を削るしかない。

そうなると、災害は頻発するだろう。

補償、補償でどんどん国力が疲弊していく、という負のスパイラルに陥ることになる。

 

 

企業にとって工場が閉鎖してしまえばどうなるのだろうか?

自動車メーカーなどはサプライチェーンを形成しているので、ある地方で集積されている部品が滞ることで、完成品そのものの製造がストップするだろう。

そうなったとき、どこまで国から補償してもらえるのだろうか?

何が言いたいのかというと、民間企業が大きく広く将来までのリスクを検討したとき、これまでは政府の仕事とされていたインフラ整備に資金を拠出しようという民間企業が現れないか、というもの。

 

これは三菱総合研究所の研究員のレポートでも、同様の考え方が示されている。

興味のある人は「PHRONESIS 新インフラ論(ダイヤモンド社)」を見て頂くと良い。

 

良い機会なので、少し、このレポートの内容をメモることにする。

まず、防災インフラとは2種類ある、としている。

・防災減災に必要なインフラ・・・・堤防や緊急輸送道路

・災害時も国民経済を維持するインフラ・・・・ライフラインの供給網

 

これまで、堤防や緊急輸送道路の整備主体は公共で、ライフラインの供給網については、企業活動とされていた。

しかし、これからは堤防や緊急輸送道路などの防災減災に必要なインフラについても、企業の関与を引き出せないか、ということを考察したレポート。

 

 

もちろん、理由は政府にお金がないから。

レポートでは、企業もお金を出してインフラメンテナンスをしないと、災害時には結局、企業にも損失が発生する、といっている。

ただし、企業がインフラに投資するだけの合理的な理由を示さなければ、公共インフラにまでは投資は向かわないだろう、と言っている。

官が持っているデータから翻訳して、インフラ投資の費用対効果を示さなければいけない。

それは簡単なことではない。

なぜなら、どこでいつ災害が発生するか分からないから。

ただ、それでも、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などは、今後30年以内の発生確率は70~80%と予測されている。

時間が経てば経つほど、その確率は上がっていく。

つまり、十中八九被災する。

そのとき、企業は工場や物流網を守るために、民間において、公共インフラへの投資をすることへの理由を見つけ出せるのではないか、というもの。

 

ぼくはなるほど、と思った。ただ、それが脅しの要請になってしまっては、企業は資金を出すことはないだろう、とも思った。

 

もちろん、民間企業にまかせてばかりで、公共がお手上げ状態ではいけない。

民間企業への動機づけということで、公共の役割が以下の項目で挙げられている。

 

・法や条例による規制

東日本大震災以降に作られた「津波防災地域づくり法」のように、イエローゾーンやレッドゾーンを設けて、移転の勧告や建築制限などをかけることが挙げられている。

しかし、ここでぼくが思うのは、例えば都市計画法の市街化調整区域は、リアルなまちづくりが始まる前だったから機能したということ。

市街化される前だったから、ここには家を建てたらダメ、という意思表示をすることの効果はあったけど、建ててしまった家に対し、ここは危ないから移転しろ、はとても難しいということ。

なぜなら補償が伴うから。

補償なしで、どこまで強制力を持たせるのかが大事なポイントになると思う。

詳しく調べていないので既に制度としてあるのかもしれないが、例えば、浸水想定区域の住民には移転勧告をしつつ、それでも移転しない家屋や事業所などについては、その土地の想定災害リスクの差により、いざ災害が発生したときの補償金に大きく差をつけるという手法はありではないか。

つまり危険エリアにあえて住み続けている場合、被災時において、補償は他のエリアより少なくする。

これなら一定の公平性が保てる範囲で差を設けることになる。

つまり、そのような土地は安価なことが多く、これまで安価に暮らすことができていた分ということで、無理やりではあるけど、公平性を担保するということ。

また、そのような差を設けることは、移転促進に向けてもプラスの方向に働くとは思う。

もちろん、ナーバスな議論を積み重ねなければいけないことは重々承知ということで。

 

 

・顧客要求

この部分は公共の役割ではないが、民間企業による民間企業への公共インフラへの投資という意味では興味深い内容である。

それは、顧客(川下企業)から要求された請負企業(川上企業)は強制力を伴うのではないか、というもの。

例えば、自動車メーカーのような部品を何万点と必要とする製品の場合、たった一つの部品の供給が途絶えるだけで、完成品が作れない場合がある。

その場合、メーカーはその部品を作る企業に対して、災害でも被災しないような体制を求めることが考えられる。

おそらく、工場が破損した企業は補償を受けられても、部品が供給されずに完成品を作れなかったメーカーに対しては、国からの補償はないだろうから。

なぜなら、サプライチェーンで繋がっているからといっても、直接の被害を受けていないメーカー側への補償は難しいから。

そうなると、川下企業からの要求があってもおかしくはない。

そのような観点から、現在、BCPガイドラインの作成が進んでいるのかもしれないが、川下企業からの圧力によって、都市の災害対応力が強化されないだろうか、という考え方。

 

・税制面、金利面の優遇措置

中部経済連合会の2018年度の税制改正に向けた意見書では、耐震補強工事など、企業が減災防災投資をした場合、資産の取得単価の30%の特別償却や取得額の7%の法人税の税額控除を求めた。

また、他の地域経済連合も耐震化投資などを行った場合の法人税を軽減する措置などを求めている。

 

レポートでは、その他、防災関連の資金調達に関する貸出金利を優遇する措置をとることも有効としている。

特に政策投資銀行は、BCM(事業継続マネジメント)への取り組みを評価して融資条件を決めるという制度を持っている。

日本政策金融公庫は、BCPを作成した企業が防災のための施設整備をする際の利子の優遇などの制度を用意している。

 

ぼくはこれを読んで少し思ったことがある。

これらの優遇措置をとれば、銀行側は、その部分に関しては損失を受ける形になる。なので、単純に考えれば、このような対応をとることはない。

しかし、その損失を回避することが、長い目で見たとき、その地域を守ることにつながり、結果としてそれは銀行自身の損失を防ぐ事ができる、と捉えることができるならば、民間金融機関もどんどん制度化できるのかも、と思った。

ただ、現状ではそのような発想には至っていないだろう。

今はまだ、社会全体の為に民間金融機関が犠牲となって地域貢献しましょう的なノリで資金を拠出させられてしまう、という感じを受けるのではないか。

 

・社会、投資家の評価

先ほどのBCM格付け融資は、日本政策投資銀行が評価しているシステムである。

これを社会全体が評価するシステムに変えることで、日本中の民間金融機関が有利な融資をしてくれることになる。

また、投資でいえば、ESG投資というものに該当するだろう。

しかし、レポートでもあるが、現状では、投資家からのESG投資への関心は高いものの、現状では防災インフラへ乗り出すことが即、投資家からの評価につながっていない、という。

やはり、どこまでいっても、株主の納得が必要である。

株式会社である以上、利益として跳ね返ってくるものでなければ投資はできない。

そうでないものに投資をすれば、市場での株価が下がってしまう訳で、それが予想されるときは企業としてはそんな投資はできないだろう。

そのため、防災インフラへの投資で株価が下がらないようにするには、世間全般が皆、この投資の長期的な視点でのコストパフォーマンスを認識してくれるような社会にならなければいけない。

 

 

でも、ぼくは単純に困難と思ってしまった。

株価というのは、一つの投資によって上げたり下げたりする。

長期的にはプラスでも短期的にマイナスと捉えられれば株価は下がる。

投資家にとって、将来的に、プラスに働く場合の将来っていつ?となる。

せめて数年後には、プラスに働くという事が見えないと辛い。

防災インフラ投資というのは、万が一災害が発生した場合は、マイナスを減らせます、という投資なので、株式投資の視点ではとても苦しい。

そのため、ビルゲイツやバフェットのような社会貢献として、また地球の将来を考え、超長期的視点で投資を考える投資家以外の資金を集めるのは、ぼくは難しいと思う。

 

否定的な意見だけを言うのはとても辛いが、良い代替案が浮かばない。

 

レポートでは、投資を阻む壁の存在が以下のように挙げられている。

・自社にとっても効果的な具体の対策メニューが不明

企業にとって、浸水防止装置が必要なのか、受電設備を地上の高いところに移設することが必要なのか、そもそも拠点を高台移転しなければいけないのか、どんな対策を執れば効果的なのかが分からないことが壁となっている、としている。

・投資効果が計測しにくい

防災対策への投資がどれだけメリットがあるのか、可能なかぎり具体的な数字やシナリオに落とし込むことが必要であり、例えるならば、環境分野の排出権取引のように貨幣換算するなどの見える化が必要としている。

被災して受ける損害、復旧にかかる費用、営業停止期間中の機会損失などを可視化する。

さらに、損害の発生確率を算出する。

 

 

これらの前提としては、公共の役割が大きい、としている。

情報基盤として国や自治体の提供しているハザードマップやインフラ施設の老朽化率や耐震性などの社会環境データが必要だろう。

災害アーカイブからの過去の記録も重要。

企業にとって最適な投資計画に落とし込むための翻訳機能も必要だと言っている。

 

しかし、これらはあくまで企業の施設の防災性を高めるための対策。

今回のテーマは河川の氾濫を治めるためのインフラ、つまり公共インフラへの投資にどう民間資金が投入される方法があるのかを考察するというレポート。

 

そのための対策も以下のように述べられている。

 

BCPの一歩先へ

企業が自社の設備の防災性を高めても、公共インフラである道路や道路橋が破損し、電気や水道が被災して供給が途絶えていたら、企業活動はストップしてしまう。

そのため、BCPから一段ステップアップして企業が地域連携で自治体と協力しながら地域の防災対策を担えば良いのではないか、とレポートでは提案している。

災害は発生するものとして、各企業が復旧にかかる費用、ビジネス損失なども含めた事業計画を立て、その復旧費用を前倒ししてインフラ対策に充当するという選択も可能ではないか、という。

この整備費用を自治体に貸し付けるスキームができないか、というもの。

 

 

少し長くなったけど、本レポートをまとめてみた。

公共インフラに民間資金を!というレポートなんだけど、実はこのレポートのほとんどは企業の施設を防災から守るための投資についてしか書かれていない。

そもそも、国民の命を守る堤防や緊急輸送道路について、どうやって民間投資を呼び込むかという議論だったはず。

詳細な具体的提案策ではほとんどが、ライフラインの供給網的なもの。

もともと民間企業が対応すべき部分についての提案になっている。

最後の方で、公共インフラへの民間投資が少し述べられているけど、インパクトがかなり弱いと思った。

 

では、どうすれば良いのか、と聞かれてもぼくにも分からないので、生意気なことは言えない。

案にもなっていないが、一つは河川インフラへの民間投資ということであれば、例えば、その流域に住む住民、企業の全員から毎月、事前防災対策税というものを徴収する。

その徴収額はエリアの災害危険度によって変わる。

毎年徴収するので計画な対策が実行できる。

もちろん、この税を徴収することが長期的な視点で考えたときに、明らかに納税者にプラスに働くのだということを可視化して示さなければいけない。

その時は、災害発生確率などを持ってきて見せるしかないだろう。

ただ、これって結局、普通の目的税の徴収と変わらず、単なる増税と変わらないではないか、という指摘があるはず。

個人ではなく民間企業に絞っても、結局は、法人税の高い地域という理解しかされないだろう。

少しでも法人税を安くして企業を誘致しようとしている時に何をやっているんだ、と怒られるのがオチだろうか。

 

何か良い案があれば良いのだけど、思いつかないのである。

長くなってしまった。

とにかく、これからインフラはどのようになるのだろう。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*

CAPTCHA