調べれば調べるほどに、今後、各企業による再生可能エネルギーの調達は熱を帯びてくるだろう、という気がしてくる。
前回書いた非化石証書の類も高騰する可能性がある。
そうなれば、新たにビジネスモデルも生まれるはず。
そのための規制緩和も行われるだろう。
今日は、現状の再エネ調達モデルを調べてみる。
といっても、太陽光発電の事例となるが。
風力や地熱は別途調べたいが、日本津々浦々に可能なモデルは太陽光だろうから。
① 小売電気事業者から購入するパターン
このパターンがオーソドックスになるだろう。
いわゆるグリーン電力を購入する、というもの。
では、小売事業者はどうやって再エネ電力を調達しているのか?
小売電力事業者は再エネ発電由来の電力を発電事業者から購入しており、それを転売するような形態。
転売といっても、それが小売電力事業者の仕事。
または、小売事業者は高度化法義務達成市場から非FIT非化石証書を購入して、通常の電力とともに非FIT非化石証書をセットにして販売する。
②ー1 オンサイト自己所有モデル
次に、自らの敷地や建物の屋根に太陽光パネルを設置して、自己消費するモデル。
②ー2 オンサイトコーポレートPPAモデル
企業が自社の敷地内や建物の屋根に、PPA事業者が太陽光パネルを設置して運用、メンテを行う方法。
この場合は、企業はPPA事業者に電気代としてのサービス料金を支払う。
ちなみに、PPAとは、Power Purchase Agreement の略で、「電力販売契約」のこと。
ここで従来までの原則でいうと
一般家庭や小規模事業所に対しては、電力は小売電気事業者が販売することになる。
当然、小売電気事業者になるため登録要件を満たした企業ということになる。
それが、PPAでは企業は小売電気事業者を通さずに発電電気事業者から直接購入することになる。
なので、正確な表現としては「第三者所有PPAモデル」だと思う。
さて、コーポレートとは企業という意味。
ここでいう企業とは、発電設備を所有する第三者の企業、という意味だろう。
その企業と電力販売契約を結ぶ、という意味。
これはオンサイトのみ可能で、オフサイトPPAの場合は小売電気事業者を介さなくてはいけない。(よく調べると、それも規制緩和されている)
オンサイトの場合、単純に自分で発電する電力を自分の敷地で作って自己消費する。
そのお手伝いを第三者がやっている、という意味あいだから、小売電気事業者を介さなくても良いのだろうか(たぶん)
③ー1 オフサイト自己所有モデル
企業が自社の敷地外の土地に、太陽光パネルを設置して自己消費するモデル。
この場合、基本は一般送配電事業者が所有する送配電線を電力を流してもらう形になる。
特殊な例としては、自営線を敷設するパターンもあるが、それはまた別の機会に書く。
話を戻す。
家庭用の太陽光パネルの場合、出力5~10kWと低出力なので(定格出力50kW未満は低圧)、低圧連係という系統接続になる。
ただし、企業の場合は出力50kWは超えるはずなので、高圧連係という接続方法となり、いろいろと手続きが複雑になる。
これはまた別途調べる。
低圧連係にしろ、高圧連係にしろ、6600Vの高圧線(高圧配電線)に接続する点は同じ。
なので、この送配電線を活用する方法を自己託送という。
これは、FIT制度などで系統に流して売電するのではなく、企業が自己消費するために送配電線を利用する方法となる。
これは託送料金というものが別途必要となる。
もう一つ、大変なのが30分単位の送電量計画を立てて、需要量と供給量の同時同量の発電量にあわせなければならない。
これは通常、一般送配電事業者がやってくれているが、送配電線は貸すけども、同時同量に合わせることは自分たちでやってくれ、ということだろう。
メリットもある。再エネ賦課金を支払う必要はない。
オンサイトでも再エネ賦課金はないので、オフサイトはオンサイトに比べると、託送料金と同時同量というデメリットが多い。
③ー2 オフサイトコーポレートPPAモデル
こちらはオンサイトコーポレートPPAのオフサイト版となる。
違いは、オフサイトの場合は小売電気事業者を介さなくていけない(よく調べたら、規制緩和されてOKとなっている)
なぜなら、自己託送は遠隔地に自己所有の発電所からの電力を自己消費する場合のみに認めるものだから。
しかし、発電事業者が小売電気事業者に売る場合は、送配電事業者は託送させる義務が発生する(空き容量があれば)
その仕組みを使うことになるため、小売電気事業者を介するのだった。
再エネ賦課金についても触れておくと、自己託送の場合は自分で発電した電力を自分で使う、たまたま送電線を流れる瞬間があるけど、という仕組みなので再エネ賦課金は不要だった。
一方、オフサイトPPAは、小売電気事業者と電力契約をするので、そのときに再エネ賦課金も発生する。
あくまで、他社が発電した電気を購入するので、再エネ賦課金が発生する。
第三者は、その賦課金を送配電事業者に支払い、最後は国に流れる(たぶん)
しかし、制度改正により、第三者所有の発電で設備でも、第三者と需要家が組合を作ることで、小売電気事業者を介さなくても良い、ということになった。
そうなると、オフサイトPPA(小売を介するもの)との違いが分からない。
いや、小売を介するオフサイトPPAは、単純に余分な手続きが増えるだけになる。
・オフサイト自己所有(自己託送)
・オフサイトPPA(小売を介する間接供給)→再エネ賦課金必要、FIP制度可能、補助金あり
・NEW:オフサイトPPA(小売を介さない直接供給)→再エネ賦課金不要、FIP制度不可、補助金なし、新設のみ認可
に分かれる。
他にも特定供給の許可が必要不要というものがある。
これは、複数の需要地に電力を給電する場合、特定供給の許可が必要ということに絡む。
この特定供給がオフサイトPPAでも、小売を介さない場合は難しい、とされている。
このあたりは専門的になるので、別途調べたい。
ⒶフィジカルPPA
オフサイトなので送配電線(系統)に電力を流すことになる。
当然、30分単位の同時同量の原則は適用される。
これは専門業者でなくては難しい。
もちろん、系統に電力を流すので、この発電所で作った電力をこの需要家に届ける、みたいなことはできない。
電気はごちゃ混ぜになるので。
ⒷバーチャルPPA
バーチャルとういくらいだから仮想であり、この制度はまだ検討段階である。
それは色々と解決しなければいけない課題があるからだが、それでもメリットも大きく検討されている、という状況。
バーチャルPPAは、発電した電力を系統に流して売電してしまう=自己託送は行わない。
オフサイトで発電した電力は市場で売電する。
企業は当然、市場から電力を購入する。
では、どの部分がPPA(電力販売契約)になっているのかというと、環境価値の部分である。
非化石証書を購入する契約を行っている。
フィジカルPPAと比べ、メリットは何か?
それは、30分単位での同時同量ではなく、1か月単位での同時同量になるので管理がかなり楽になるそうだ。
もちろん、託送料金も発生しない。
ところが課題が結構ある。
この課題を調べると奥が深いので、次回のテーマとしたい。
④ 非化石証書を購入
この非化石証書を購入するパターンは、小売電力事業者の場合、①のパターンになる。
今回は、企業そのものが非化石証書を購入する場合。
FIT制度は20年間買い取りなので、また、ずっと以前は40円/kWhという破格の値段で買い取ってもらえたので、初期のころの太陽光パネルを設置した企業はほとんどがFIT制度を活用しているだろう。
ところが、2020年の菅首相のカーボンニュートラル宣言以降は、一気に企業も自社で消費する電力を再エネ由来に変えたくなってきているはず。
ところが、オンサイトにしろ、オフサイトにしろ、自己所有にしろ、第三者PPAモデルにしろ全て、自己消費ではなく、FIT制度を活用してしまうと、一旦系統に電力を流して一般送電線事業者に買い取りをしてもらうモデルになるので、もはや非化石価値は国に移っている(一般送配電事業者から国に売り渡される)
この場合、企業は、再エネ価値取引市場でFIT電気非化石証書を購入する方法がある。
このパターンでは、企業が再エネ電力をFIT制度を使って売電してようが、普通に小売電力会社から購入していようが使える技となる。
また、この非化石証書はトラッキング付き証書も購入可能で、この場合はRE100にも活用できるようになる。
ちなみに、非化石証書の価格は0.3円/kWhとなっている。
少し、計算してみると1000kWのメガソーラーの年間発電量は1000MWh。
1000000kWh×0.3円=300000円、つまり年間30万円
今日のまとめ
①小売電気事業者から購入 | ・非FIT非化石証書を調達している小売電力会社
・水力由来などのメニューから選択購入 |
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②オンサイト | 自己所有 | 一般的 |
コーポレートPPA | 小売電気事業者を介さずコーポレート電力販売契約 | |
③オフサイト | 自己所有 | 系統接続が発生するため、託送料金、同時同量などが必要
※自営線の場合は上記は不要 再エネ賦課金はない |
フィジカルPPA | 小売電気事業者を介してコーポレート電力販売契約 | |
バーチャルPPA | ||
④証書 | 非化石証書 | |
グリーン電力証書 | ||
Jクレジット |
オフサイトPPAで小売を介さなくて良いなど、どんどんと制度改正が行われており、ついていくのが大変である。
他にも、太陽光パネル廃棄費用積み立て制度ができて、数パーセントは毎月、電力会社を経由して推進機関に積み立てられることになったりなど、どんどんと新たな制度ができている。
まあ大変。