続、立地適正化計画をメモってみた

つい先日、このブログで立地適正化計画について書いた。

それは、今年の5月、都市再生特別措置法の改正により、立地適正化計画制度の見直しが図られたことを書いたもの。

災害の危険性が特に高いレッドゾーンと呼ばれる区域は、原則として居住誘導区域から除外することを規程したことなど。

 

 

今日のブログは、現在、国交省の水・国土保全局と道路局と住宅局で進められている「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会について書きたい。

この検討会では、立地適正化計画制度をどのように見直していくのか、その具体的な部分を詰めている。

 

防災やまちづくりの専門家は声を大にして言う。

「浸水が想定されているエリアを居住地として誘導している制度がそもそもおかしい」

まったく、その通りと思う。

しかし、都市の中心的機能や鉄道などが既に浸水想定エリアに含まれてしまっている状況の中、理屈だけで解決しないのが現実。

多くの医療施設や商業施設、鉄道もろとも移転することができるなら、そのような理屈も通るだろう。

しかし、現実問題、移転先となる場所もなければ移転費用もだせない。

理想論だけで「浸水が想定されるので、居住誘導区域から除外します」とは出来ない。

 

 

その前にそもそも、立地適正化計画において、居住誘導区域とはどういうものなのか、改めて確認しておく。

居住誘導区域とは、現在の人口減少下においても、一定のエリアでは人口密度を維持することで、生活サービスやコミュニティを維持できるように、居住を誘導するエリアのこと

つまり、人口減少から端を発した考え方。

このまま、あらゆる地域で人口が減少してしまうと、日本全国にまばらに人が居住することになる。

そうなると、数世帯のためにガス管を維持する、だとか・・・

数人のために、水道管を遠くから設置したまま、維持しつづけなければならなくなる、などなど。

これまで以上に、様々な施設の維持管理の費用対効果が低くなっていく。

こんなことが全国各地で起こることが予想され、インフラ施設のメンテナンスは立ち行かなくなる、と言われている。

だから、そうならないように、人々が居住するエリアを一定地域に収めよう、というのが根本的な考え。

コンパクトシティの考えと同様のもの。

 

そのような考えだから、居住誘導区域から外れた場合、税金の投入においては、除外エリアとそうでないエリアでは著しい差が生まれる。

つまり、居住誘導区域から外されると、その区域では既存施設の維持管理に予算が投じられにくくなるし、新たな公共投資はほぼできない。

 

だから、一定規模以上の施設が既に整備されてしまっているようなエリアは、居住誘導区域に入れざるを得ない、というのが行政としての都市計画の考え方。

これに、疑義を投げかけたのが、近年の災害。

防災の専門家からみると、浸水が想定されるエリアを居住誘導区域にするなんて、理屈に合わない!というのが、その主張。

メディアも基本はその論調。

 

そこで、国交省の水災害対策を担う水・国土保全局とまちづくりなどの都市計画を担う都市局、そして住宅を担う住宅局、この3局が合同で検討を進めている、というのが「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会である。

 

検討会は、今年の1月からスタートして、コロナ禍の中も継続され、すでに4回の検討会が実施されてきた。

来年の3月にガイドラインを作成する方向で進んでいる。

この前の7月16日の検討会ではガイドラインの骨子案が提示されているので、少しメモしておく。

 

・ハザード情報(潜在的リスク情報)について

→ 災害担当の目線だけでなく、まちづくりの目線から必要な災害情報も取り込む

 

・リスクを踏まえたエリア設定

→ レッドゾーンの原則、除外は変わらないが、イエローゾーンは詳細に分析したうえでエリア除外の可否を決定

→ 分析には、浸水深、建物倒壊の恐れ、浸水継続時間、洪水到達時間、流速、避難路までの経路などを考慮する

 

・ まちに合った防災対策

→ まちごとにハザード(潜在的リスク)は異なるので、ハザードに合った対策を検討実施

→ 例えば、土地のかさ上げ高、農地の保全(遊水地活用)、防災公園、避難路の整備、移転促進支援策などまちに合った効果的対策を検討

 

・ 連携の留意点

→ 市町村を越えた広域的な視点

→ 地域住民、民間企業との意識共有の方法

 

まだまだ、骨子案は続くが、あまり詳細に書いても忘れてしまうので、この辺りにしておく。

要は、単純に浸水想定区域だからという理由で、居住誘導区域から除外したりはしない。

しっかりと、分析をする。

分析とは、浸水深をベースにはするが、土砂災害はどうか、垂直避難が可能か、避難経路は確保されているか、家屋の倒壊の恐れはどうか、洪水到達時間はどのくらいか、その時間までに避難ビルなどに逃げ込めるか、そのための情報発信、日ごろの意識共有は図れるか。

まあ、このように総合的に判断して、居住誘導区域を決めていく、ということ。

 

8月に入ると、モデル地区を複数都市選定して、その取り組み結果を踏まえて、来年3月のガイドライン作成を目指す、とのこと。

 

 

確かに、人口減少社会の中、どうやって国力を維持していくのか、そのためのコンパクトシティ。

しかし、災害大国の日本では、単純にコンパクトシティは進まない。

また、経済が上り調子で財政政策をバンバン打てる状況ならば、ある程度、強引な手段も執れるのかもしれないが・・・

・・・人口減少社会だから経済低迷・・・そのための生産性向上であり、デジタル化でもある。

 

 

 

 

 

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