今朝のニュース、熊本県球磨村が再び大規模な浸水に見舞われた、とのこと。
前回の氾濫によって溜まった土砂を片付けたばかりだったという。
確かに、堤防決壊などからの復旧が完了した訳ではないので、大雨が降れば再び被災するリスクはあったのだろう。
しかし、やっと土砂を掻き出したばかりだったという被災者にとっては、何で何度もここばっかり?という気持ちになっているだろう。
国交省は気候変動による頻発化、激甚化している自然災害に対応するため、堤防の強化などの河川整備だけでなく、土地利用の規制強化も含めてまちづくりとの連携を進める、としている。
そう、被災者は何でここばっかり?と思うかもしれないけど、ハザードマップでは、しっかり危険地帯と認定されている。
土地利用の規制の強化という考えを踏まえ、この前の国会で、都市再生特別措置法が改正されている。
内容は、水害や土砂災害のリスクが高い区域からの移転を促す措置を盛り込んだもので、立地適正化計画の変更である。
立地適正化計画制度は、平成26年には都市再生特別措置法において創設されている。
立地適正化計画とは、一言でいえば、人が住むところと、商業をすすめるところなどを立地誘導していくための計画。
本来は都市計画における区域区分、いわゆる市街化区域と市街化調整区域を分けたものや用途地域などの地域地区で、緩やかに誘導することが都市計画法の本来の考え方のはず。
しかし、都市計画法は基本法的な位置づけのためなのかどうかは知らないが、これを変更すると影響が大きすぎる、と考えたのか。
都市計画法は全国のあらゆる土地に影響が及ぶけど、都市再生特別措置法の立地適正化計画であれば、都市の再生ということで、エリアを限定した形で影響を及ぼすことができるからであろう。
そのあたりはよく分からないけど、立地適正化計画という制度が出来上がった。
計画自体は自治体が作るものなので、住んでいる自治体のHPを見れば、計画が策定済みかどうかが分かる。
ちなみに、ぼくの住む自治体は既に策定しているようだ。
少し、立地適正化計画についてメモっておく。
・ 自治体の作る都市マスタープランの一部となるもの
・ 本計画の対象区域は都市計画区域とすること
・ 都市機能誘導区域と居住機能誘導区域の双方を設け、都市機能誘導区域は居住機能誘導区域の中に納めること
・ 病院、小中学校、図書館、博物館、スーパー、銀行などは都市機能誘導施設として定め、もしも区域外での建築したい場合は、建築申請については届出を義務化する
・ 居住誘導区域を市街化区域全体にしてはいけない。しっかりと絞り込むこと
・ 市街化調整区域には、地区計画をかけたとしても居住誘導区域を設定できない
・ 浸水想定区域に居住誘導区域を設定すべきではない。が、必要な場合は避難の実行性を担保したうえでは設定可能
・ 居住調整区域は住宅化を抑制する区域だが、必ずしも設定しなければいけない訳ではない。
簡単にメモってみたが、ここから想像されることは、作成する自治体にとって、区域の設定は神経を使う作業になる、ということ。
区域の設定によっては、土地の価値を上下させることになるから。
あくまで想像になるが、地元住民や地元選出議員からの圧力もかかるリスクがあるのではないか。
その結果と言うべきなのかどうかは知らないが、ほとんどの自治体で、浸水想定区域のようなハザードのある地域も居住誘導区域に入ってしまっている。
つまり、危険と分かっていても、居住誘導区域から外せなかったのだ。
現実問題外せないということもあるだろう。鉄道から何から何まで全て移転することなど、費用的にも用地の点からも不可能である。
また、居住調整区域は、ほとんどの自治体で設定していないだろう。
ただ、結局、今回の豪雨でも被害を受けるのは、そこに住む人達であり、その復旧費用は全ての人が支払う税金となる。
一部のエゴと言えば、厳しすぎるだろうが、結果として皆が苦しむ結果となるのである。
そのため、先の国会で国交省が法改正を実施した、ということ。
法改正の内容もメモっておく。
・ 土砂災害特別警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域といったレッドゾーンの区域は居住誘導区域から原則除外すること
・ 居住誘導区域などでは病院や店舗など利便性を高める施設の立地を促進する制度をつくること
飴とムチの両方で攻めている。
しかし・・・
自治体は国からの半強制的な指針がないと、ほとんど動けない状況なのか。
それならば、地域の実情が・・・とか地方分権が・・・と言っている首長はしっかりとリーダーシップを発揮できているのだろうか。
現代の日本の構造においては、中央集権的にある程度の強制力を持った施策を国主導で進めることが、ベストではなくてもベターとなる気がする。
ただ、この自治体が軟弱化している構造は国にも当てはまるような気がする。
国の施策づくりの官僚が恐れるのは、国内世論や国会議員なのだろう。
少し、話が飛ぶが、つい先日のニュースでも、高速道路の料金所をすべてETC専用にする施策に対して、ネットなどでは批判が多いらしい。
現在、高速道路のETC利用率は93%に上る。
しかし、料金徴収コストは93%のETCレーンと残り7%の徴収員で対応する一般レーンが同じということ。
ということは、すべてインターチェンジをETCレーンに変えれば、維持管理コストは現在の半分ちょっとになる計算。
しかも渋滞もなくなる。
・・・ただ、7%のETCを持っていない人が通行できなくなる。
ネットでは、この7%の弱者を見殺しにするのか、という声が大きい。領収書が欲しい人もいるのだ、という声も大きい。
しかし、皆が平等に、と言うのなら、ETC設置者はお金をかけて機器を設置している。
お金をかけた人もかけていない人も平等に、というのは中々理解しづらい。
そう言ったら、おそらく金がなくてETC設置ができない人の気持ちが分かるのか、と来るだろう。
でも、クルマを買うお金はあるのに?
高速乗るお金はあるのに?
ETCを付けられない位にお金がないのなら下道で行ったら?と聞き返したくなる。
このETC専用化の議論はずーっと前々から国交省でなされている。
今回は人との非接触、つまりコロナ対応という御旗を掲げて、再挑戦しようとしている状況。
話が逸れたが、このように施策とは様々なものに邪魔をされて進まないのが常。
今回のコロナ禍では、多くの施策が「コロナ対応です」という冠を付けて、進めば良いと思う。
最後に
今回の法改正、立地適正化計画の変更により、レッドゾーンといわれる本当に危険なハザードのある地域は、居住誘導区域から除外されることになるかもしれない。
しかし、どの程度の実効性があるのかは不明。
これからの新築は若干、抑えられるかもしれない。
ただ、今回の被害のあった球磨村のようなエリアを紙の上の計画の居住誘導区域から外した(球磨村が現在、居住誘導区域になっているのかどうかは知らない)としても、現在の住宅は残る。
移転の促進を進める施策があっても、全額補助はできない以上、移転は進まないだろう。
なかなか難しいものだな。