今日は技術士1次試験のR元年の問題。
3問目の斜面の安定や支持力や基礎の問題を解いていくことにする。
過去問は下記のHPから取得できる。
「公益社団法人 日本技術士会」過去問 第一次試験 令和元年度 建設部門
選択肢➀ スウェーデン法
土の崩壊とは、土の滑り出そうとする力が滑りに抵抗しようとする力を上回ったときに発生する。
土が滑り出す、ということはどこかで滑り面が出来上がる。
そして、その滑り面に沿って、土の塊が大きな一団となって滑り出す。
しかし一方で、すべり面に接する地面には、滑りだそうする土の塊が滑らないように留めようとする力、すなわち抵抗力が発生する。
滑り出そうとする力とそれに抵抗する力の比が斜面の安定性というもの。
当然、抵抗する力が強い状態でなければ、斜面は危ない。
この状況を室内試験で実験したのがクーロンで、結果はクーロンの公式として有名である。
ただ、現実にはフェレニウス法が採用されているらしい。
このフェレニウス法が選択肢の簡便分割法とかスウェーデン法と呼ばれるもの。
いきなり式を書く。
斜面の安全率 = すべり面に抵抗しようとする力(抵抗力)/ すべり面に沿って滑ろうとする力(滑動力)
選択肢の文では、土のせん断強さとすべり面に働くせん断力と表記されている。
土のせん断強さとは、高校物理で習う静止摩擦係力のようなもの。
つまりせん断力に対抗する力。
選択肢② 円弧すべり法
斜面の安全率の定義の一つとして円弧すべり法というものがあるらしい。
いきなり式を書く。
斜面の安全率 = 土のせん断強さに対する抵抗モーメント / 滑動モーメント
これも、選択肢➀のスウェーデン法と似ている。
結局、せん断への抵抗 又は 抵抗モーメント ÷ せん断力 又は 滑動モーメント
なので、ほぼほぼ一緒。
せん断力かモーメントかの違い。
結局、現場がどっちの計算式に近い挙動を示すか、というだけのものなのか。
選択肢③ 許容支持力
地盤の支持力とは、基礎構造物がどのくらいの重さなら、地盤が安定的に基礎構造物を支えられるのかを測る力のこと。
直接基礎の場合は「地耐力」という。
「支持力」という場合は杭基礎の場合になるので、今回は杭基礎を想定した設問かもしれない。
地盤の許容支持力は地耐力試験を行って定める。
目安としては標準貫入試験のN値による。
標準貫入試験の値よりN値を求めるのだが、N値から目安が分かる。
ちなみに、地耐力(目安)=N値 × 10(kN/m2)
である。
目安も書いておく。
N値
0~4 手で鉄筋を地面に刺せる
4~10 スコップで地面が掘れる
10~30 ハンマーで鉄筋を地面に刺せる
50以上 ツルハシが必要
N値が10くらいあると、小さな建物は直接基礎にできるらしい。
さて、極限支持力というのは、地盤が負担できる限界の支持力。
なので、実際の設計では極限支持力を使っては危険なので、この極限支持力を適当な安全率で割って許容支持力を出す。
構造物の重要性、土質定数、土の鋭敏性などから安全率を求めるらしい。
この場合の安全率は、選択肢①②の斜面の安全率とは違うけど、計算式は同じ。
安全率 = 極限支持力 ÷ 地盤の許容支持力
選択肢④ 杭の摩擦力
杭の支持力とは先端部分の支持力と杭の周囲の土の摩擦力を足したもの。
また、選択肢の文はややこしく書いてあるが、要は、地盤が下がるとそれに引っ張られて杭も下がろうとする、ということ。
すると、杭の先端も一緒に地盤が下がっているなら問題ないが、長い杭の場合、表層の地盤だけが沈下している場合、それに伴い杭も引っ張られるが、杭の先端の地盤は動かないので、結果、杭の先端に負荷がかかる、ということ。
杭の負の摩擦力という言い方に慣れた方が良いかもしれない。
土が下がるので、土に上向きの摩擦力がかかり、その反力として杭に下向きの摩擦力がかかる。
それを負の摩擦力というらしい。
選択肢⑤ 直接基礎
直接基礎は地盤そのものが支持してくれないと成り立たない。
安定した地盤に用いられる。
さっきのN値でいうと、10以上は必要。
地層の支持力が不足するときや沈下が課題になる場合は、杭基礎か地盤改良をしなければいけない。