先週のニュースから一つ。
社会資本整備を貫く原則としてデジタル化、スマート化を位置づける、とのこと。
経済財政諮問会議の民間議員から提言されたらしい。
確かに、国交省は、安倍首相の2020年までにGDP600兆円!を目指して、生産性革命プロジェクトをたちあげた。
i-constructionはそのプロジェクトの目玉施策としてスタートした。平成27年のこと。
それから、ぼくらの現場はどう変わっただろうか。
いや~まったく変わっていないと思うんだけど。
今年、策定される次期社会資本整備重点計画にも、デジタル化とスマート化を原則とするとの位置づけだけど、どうも理念ばかりで具体的な施策が思い浮かばない。
BIM/CIMといっても、ネットやテレビでは見たことはあるけど、実務で、見たことはない。
インフラ老朽化対策でもドローンやロボット、センサーなどをインフラ点検に全面的に導入して、予防保全を高度化、効率化する、という。
一見、具体的~と思いきや、それが実装された自治体はあるのかな?
インフラ点検だけではなく、実際の工事現場においても、まったく使われていない。
大手や準大手が大規模な現場で試験的に採用している段階であって、街中の維持管理がメインの小規模な工事では、使いようがない。
実際に活用事例は大規模な現場ばかり。
いや、そりゃそうなんだよな、と。
AIが活躍するのは、目や耳。
手先の部分はまだまだ人には敵わない。
工事現場というのは、現場合わせ、というようにどの構造物をとっても同じものは一つとない。
工場のようにオートメーションができない。
無人の自動運転車で街中を走る以上に複雑な挙動が求められる。
事実、建設業の生産性は、全産業を100としたとき、64しかない。
金融保険が200、情報通信が170、製造業は123
建設業の64より、低いのは宿泊飲食業の55くらいしかない。
宿泊飲食業は接客、つまり人がもてなす事そのものが仕事なので、デジタル化が進まないのだろう。
建設業とは理由が全く違う。
建設業は技術的に無理ということ。なので、技術開発が進めば可能となる。
スマートシティが個人情報の取り扱いで前に進まないことよりは、技術だけの問題ならマシなのかもしれない。
個人的には、建設現場のオートメーション化はまだまだ先と思っている。
そう、自動運転車が街中で普通に走るような時代、つまり2025~2030年。
これよりは遅れる、と思っている。
やはり、中小企業でも安いコストで導入できるようになるまで、大手で実験を繰り返してもらうしかない。
ちなみに、前も書いたけど、中小企業の目安とは、資本金3億円以下または従業員300人以下の会社である。
日本のほとんどの建設業は中小企業である。
資本金3億円なんて1%もない。
資本金5000万円としても3%程度。
中小企業では導入コストを支払うことができないのだから、どうしようない。
だから、建設現場のデジタルシフトはまだまだ時間がかかる。
ただ、点検については、人の目と耳の部分に相当する技術なので、国交省の本気度によっては、かなり進むのではないか、と思っている。
しかし点検なので、主導権は自治体にある。
そして、自治体がデジタルシフトを進めるかどうかは、社会資本整備重点計画に位置づけるだけでは足りない、と思っている。
やらねばならないのは、自治体にとって、デジタルシフトを進めることで、どんなメリットがあるのかを示す必要がある。
つまり、自治体が点検管理をデジタル化しようという気になるには?
・手間がかからず導入できること。
・職員の仕事を奪わないこと。
・品質などの安全性が担保されること。
・コストがこれまで以上にはかからないこと。
これらを満足させなければいけない。
しかし、手間がかからずは難しい。新しいことをする上で最初はどうしても導入コストがかかる。
職員の仕事を奪わないってのも難しい。効率化されれば、その業務はなくなる。
そのためには、国交省であったり、先進的な自治体が導入した点検技術で安全性が担保されるものは、国が義務化する方向に進むしかない。
地方分権の考えのなか、地方の課題、実情を把握している自治体が考えるべき、との性善説に立っていては、いくら社会資本整備重点計画に位置づけたって、困難だろう。
社会資本整備重点計画では、KPIを設定する、とのことだけど、どこまで効果があるのか懐疑的にみている。
さて、どうなることやら。
もう、生産性革命プロジェクトが立ち上がってから、すでに5年も経ってるけどね。