今日は技術士1次試験のR元年の問題。
21問目の河川堤防の問題を解いていくことにする。
なぜなら、つい最近の日経コンストラクションでも治水新時代というテーマで特集が組まれていた。
今年が最終年度となる「防災・減災・国土強靭化のための3か年緊急対策」も、平成30年に頻発した水災害(北海道胆振東部地震もあるが)がきっかけとなっている。
やはり、気候変動による影響はインフラ整備におおきな変化をもたらしている。
過去問は下記のHPから取得できる。
「公益社団法人 日本技術士会」過去問 第一次試験 令和元年度 建設部門
選択肢➀ 堤防の安全性の設計
この選択肢は平成30年度とほぼ同じ問い。
流水により浸透して堤防が中から崩壊することやのり面を流水などが削っていくパターンを想像するということ。
つまり一般の堤防については、耐浸透性や耐浸食性について検討する。これは〇。
次に設計すべき高さは、計画高水位。これが、平成30年度の問題は堤防高以下の水位ということで不適切な選択肢となっていた。
また、高規格堤防の場合、つまりスーパー堤防の場合、越流水による洗堀に対する安全性も設計する。
今回の日経コンストラクションという業界雑誌では、治水新時代ということで、流域治水という比較的新しい考え方が掲載されていた。
なぜなら、堤防をかさ上げすれば、確かに多くの洪水を河道で流せるものの、いざ破堤したときの被害は大きくなる。
また、破堤は絶対起こらない堤防を作ることは現実的に難しい。
であれば、計画的に溢れさせて、流域全体で洪水を貯めるような考え方を持つべきではないか、というもの。
そこで、流域の遊水施設として有望なのが、霞提や遊水地というもの。
しかし、これとて課題がない訳ではない。
遊水地は通常時は農地や公園として利用している施設となる。
なぜ、下流域の自治体を守るために、遊水地を抱えている常流の自治体が損害を受けなければいけないのか、という課題。
上流に負担を求めることが前提の考え方に対し、上流の自治体は当然、反発する。
しかし、一自治体だけで治水ができる時代は終わった、ということは明白。
これらの問題は単に国交省が基準を作れば良いという問題ではない。
これからは、こういった複数の自治体にまたがる課題を解決できるトップリーターが求められる時代となっている。
ぼくがたまにこのブログでも書くけど、都市間競争をしている時代ではない、ということ。
どこかで発生する利益を奪ったり、自ら受けるであろう被害を隣町に付け替えたり、そんなことをしていてもお互いに疲弊するだけ。
相互協力して自然災害を防いだり、産業を発展させたり、文化を広めたりする時代と思う。
選択肢② 支川の背水区間
この選択肢は平成30年7月豪雨を意識した選択肢となっている。
この豪雨では、岡山県倉敷市の高梁川につながる支流の小田川の堤防が決壊した。
国の見解によると、バックウォーター現象が発生していた、とされている。
選択肢でも、支川の背水区間というキーワードが出てくる。
本川と支川が合流するところは、本川の洪水が支川に影響をおよぼす。
この影響がおよぶ区間を支川の背水区間という。
そして、堤防の破堤がおこる原因の大きなものとして、堤防の天端を超えて越流することにより、裏のり面が崩壊することが挙げられる。
つまり、選択肢の通り、支川といえども、背水区間においては本川と堤防天端と同じだけの幅を有するように設計しておく必要がある、ということ。
選択肢③ パイピング、沈下、すべりに関する安定性
軟弱地盤上に設置された堤防については、パイピングや沈下、すべりに対する安定性の検討を行う。
これは正しい。
では、軟弱じゃない地盤の場合は?
選択肢➀などから、一般の堤防について、浸透と浸食は検討しなければいけないことは分かった。
そして、軟弱地盤の場合は、パイピングや沈下、すべりの検討も必要と分かった。
しかし、軟弱でない地盤でも、地盤の浸透や圧密沈下は検討する必要がある。
ただ、軟弱な場合は、安定性を失いすべり破壊を起こす恐れがある。
だから沈下だけでなく、すべりの検討も必要。
さらに、透水性の軟弱地盤の場合、パイピングやクイックサンドなどを起こす恐れもある。
そのため、それらへの安全性の評価もしなければいけない。
選択肢④ 浸透に対する安全性評価
堤防の浸透に対する安全性の照査は主に2点。
一つは、堤体の浸透破壊、これは、すべり破壊に関する検討を要するということ。
堤体に水が浸透すると堤体が破壊されるが、そのときの挙動を分析すると「すべり破壊」が原因ということ。
もう一つは、基礎地盤の浸透破壊、これはパイピングに関する検討を要するということ。
選択肢として、浸透に対して検討する場合、外力としては、外水位と降雨量を考慮する、というもの。
外水位とは、川の水位と考えれば良い。
そして、内水位とは、支川の水位。
解釈としては、堤内地側からの入ってくる川の水位、つまり支川の水位。
流れ込んでくる川の方の水位。
なので、浸透に対しては、本川の堤防は本川の水位と降雨量を考慮する、という、とても普通のこと。
逆に、外水位と限定しているので、内水位(支川の水位)は堤体の浸透の検討については気にしなくて良い、とも読める。
きっと、特殊な条件があれば、さらに検討項目は増えるのだろう。
選択肢⑤ ドレーン工
まず、ドレーン工とは何か?
堤体は土で築造することが原則とされている。
そのため、平時や洪水時の河川水や降雨による雨水が堤体に浸透する。
この浸透水を速やかに堤体外に自然排水しなければならない。
その機能を担うのがドレーン工であり、その効果は自然排水のほか、裏のり尻部の強化もある。
しかし、堤体の浸透対策の基本は、降雨や河川水を堤防に浸透させないこと。
この部分を理解していれば、この問題は解けてしまう。
つまり、堤防に水を浸透させないようにすることが重要なのだから、礫質土で良い訳がない、ということ。
粘性土が良いに決まっている。
ただ、それでも浸透してしまった水は、速やかに排水しよう、ということ。
しかし、排水部分となる裏のり部はどうしても弱くなるので、かご工などのドレーン工を施して、排水されやすい構造体を設けつつ、裏のり尻部の強化を図る、ということ。
選択肢にあるような、堤体土質として、浸透性の高い礫質土ではマズイ。
堤体そのものは浸透性の低い粘性土で築造しつつ、ドレーン工に単粒のような浸透性の高い材料を用いることが一般的。
今日は、日経コンストラクションを読んだばかりだったので、河川工学の問題を解いてみた。
1次試験は簡単なんだけどな~。