今日は電力の基本を学ぶ。
近年、電力政策は、規制緩和の動きの中で大きく変わってきた。
その昔、電力会社というのは、エリアに1つしかなかった。
関東なら東京電力、とか。関西だったら関西電力、とか。
ところが、最近はガス会社や通信会社なども電気を売っている。
一般家庭でも電気料金の支払い先がガス会社やKDDIなどの通信会社というケースは多いはず。
どんな仕組みなんだろうか?
この辺りもメモしておく。
その昔、電力会社は3つの事業を営んでいた(過去形)
ここでいう電力会社とは今では、旧一般電気事業者と言われる東電とか関電とか中部電などの10社である。
3つ事業
・発電事業
・送配電事業
・小売事業
発電事業とは名の通り、電力を発生させる事業のこと。
火力や水力、原子力など。大きな煙突が立っている発電施設である。
送配電事業とは、発電所で発生させた電気を家庭や工場など電気を必要としている者(需要家という)に送り届ける事業。
送電線や鉄塔、電柱などの施設を使って、電力を流す事業である。
最後に小売事業とは、需要家に電気を売る者。
これが冒頭のガス会社や通信会社なども参入している分野である。
そう考えると、小売業者のビジネスモデルは単純である。
発電事業者から電気を買い、送配電事業者に送配電線の使用量のようなものを支払い、そこに自らの利益を乗っけて、一般家庭や工場など電力の需要家から電気代を徴収する。
これら3事業が現在は分離されている。
東京電力、関西電力、中部電力など全国に10あった電力会社は、今は3事業のうち発電事業と小売事業を担っている。
そして、その発電事業も小売事業もこれら10社の単独独占業務ではなくなった。
次に、切り離された送配電事業。
この送配電は東電なら東京電力パワーグリッド、関電なら関西電力送配電、中電なら中部電力パワーグリッドという会社が行っている。
東京電力パワーグリッドとは何者か?
東電の100%子会社である。正確には東電HDの100%子会社。
東電は持ち株会社に代わっている。
おそらく関西電力送配電も中部電力パワーグリッドなども同様に子会社だろう。
さて、送配電事業はそのエリアでは、その大手電力会社の子会社(法的には別会社)が独占的地位を認められている。
しかし、発電と小売りに関しては、ライセンスなどをとれば自由に事業を行えるようになったので、以前のような独占企業ではなくなった。
送配電事業は誰もが参入できる分野ではない。
あれだけの送配電線網を作るにはどれだけのコストがかかるだろう。
百兆円?適当。
発電も同様で、黒四ダムは関西電力の所有だろう。
だから、あのダムで発電された電力は関電のもの。
一方、太陽光発電などは空き地があればどんどん手軽に作れるので、そういった電力はどんどん発電事業者が増えてくるだろう。
これも規制緩和で可能となった。
規制緩和のスタートは鉄工所などで余剰となった電力を活用したい、というニーズから生まれたんだそうな。
鉄工所などは熱が必要となるので、その熱を使ってタービンを回して自らの工場で使う電力を発電していた。
自ら使う電力の発電は前からOKだった(たぶん)?それは自社で使うので規制対象外だった(と思う)
しかし、余剰電力を何とかしたい、ということから規制緩和がなされ、現在では太陽光発電事業者など、他社への売電目的での事業も可能となっている。
FIT制度もその下地があってこそ成り立つ。
小売事業は要件などはあるだろうが、構造的には誰もが参入できそう。
ちなみに、小売事業者は700社を超えるまでに増えたが、最近の電気量の値上がりによって、倒産が相次いでいるらしい。
電気は株式市場のように、JEPXという卸電力取引所で取引されている。これも最近のこと。
それぞれの札入れで30分ごとに値段が決まってくる。
基本は1日前に1日を48分割して30分毎の電気量を取引して決めていく。
当然、JEPXだけでなく、相対市場で発電事業者が直接、取引先に売電することもある。
JEPXなど比較的新しい制度なんだから。
もう少し、小売事業についてメモ。
まず、小売事業も最初に自由化されたのが特別高圧というもの。
次に高圧、低圧という順番で自由化されている。
・特別高圧・・・受電電圧2万ボルト以上、契約電力2000kW以上
・高圧・・・・・契約電力50kW以上
・低圧・・・・・契約電力50kW未満
と、書かれてもイメージは全く沸かない。
そのため、一度、電力の誕生から消費されるまでを簡単に書いておく。
その前に、この契約電力とは、1か月の内、1日を30分毎の48コマに分割して、30分間の電気量で最も高った値。
まず、火力発電所などで生まれた電力は12000V~23000Vくらいらしい。
イメージは1万~2万ボルト。
この電力を変電所に送る。
変電所に送る人は送配電事業者である。
送配電事業者は、この電力を27.7万~50万ボルトという超高圧に変電して送電線に流す。
つまり、20倍ぐらいの高圧にする。
理由は、送電ロスを減らすには、ジュール熱を減らすことが重要。
結局、送電線を流れるとき、電気抵抗によりジュール熱になっているから。
このジュール熱=(電流×電流)× 抵抗 × 時間
のため、同じ電力を流す場合、電流をなるべく小さくしたい、そのためで電圧を上げてやるのである。
送配電事業者はこの電力を変電所で減圧しながら、必要な需要家に配電していく。
この変電所から工場や家庭まで配電する(そう、このルートを配電という)ためには、高圧の方がロス(損失)が少ないらしく、そのために超高圧に一度変電する。
大規模工場やJRなどの鉄道事業者などは、だいたい10万ボルトという電力を求めている。
そこから、中間配電所などを経由して、中規模工場や大規模ビルなどには、だいたい6600ボルトという電力を配電する。
なので、電線でも一番上の電線には6600ボルト近い電力が流れている。
その電力をトランスという電柱の上についている変圧器で200ボルトとか100ボルトに変電して家庭に届ける。
つまり、トランスで1/30くらいに減圧するのである。
そして、特別高圧を求める需要家には、変電設備や鉄塔などを自社内で設置してもらい、電力をとどける。
大量購入かつトランスなどを自社で管理してもらうので、電気料金は低圧需要家よりも安い。
ところで、電圧は電気のパワーというイメージ。ストックとフローでいえば、フローの大きさ。
では契約電力50kWはどんなものか。
この契約電力とは、1か月の内、1日を30分毎の48コマに分割して、30分間の電気量で最も高った値。
瞬間的に50kWという電力を必要としたのなら、その家庭又は事業者は高圧契約をしていないといけない。
4人家族の1か月の電気代は1.2万円くらいだろうか。
1kWhが28円くらいなので、1か月の電力量は450kWhくらい。
1日すると15kWhほど。
なので、30分の最大値は理論上15kWhを超えない。
かなり、まどろっこしい計算の仕方だったが、普通に暮らしている人の思考方法だと、そんな計算順序ではないか。
なので、低圧需要家といっても、30分で50kWを超えなければ良いので、個人事務所などの事業所は低圧の契約で問題ないと思われる。
ちなみに、一瞬でも30分電気量が50kWを超えると低圧契約はできなくなる。
そのため、ギリギリの事業所などはピークカットという方法もとった方が良いらしい。
これはスマートメーターなどを設置するのではないか(調べずに書いているので違うかも)
少し基本的なこともメモしておくが、発電所で発生される電力は交流である。
直流と交流の違いは、電気の流れが一方向か交互に変わる電流か。
なぜ、交流か。
それは太陽光発電以外で発電される電力は電磁誘導によって発生させているから。
コイル(銅線をグルグル巻いたもの)の近くで磁石が動くと電流が流れる。
コイルの先にS極が近づくと、S極が近づいた側のコイルがS極になる。
コイルに磁力(N極とかS極とかが発生する)と電流が発生する。
この作用を利用して、棒磁石をコイルの近くで回転させるのである。
そうすると、コイルの近くでN極とS極が交互に近づき遠ざかりを繰り返す。
これによってコイルに電気が流れる、というわけ。
中学理科だが念のためメモしておいた。
さて、話を戻そう。
託送料金というものもメモしておく。
これは電気を送配電線に流すための料金。
電気は発電所で作っただけでは意味がない。家庭や工場にまで届けなければいけない。
送電線に電気を流して、家庭まで流すための料金を託送料金という。
しかし、配送電事業者は未だに旧大手10電力会社の子会社+α(電源開発など3社)の独占状態となっている。
そのため、国は託送料金は一定の料金にするよう、勝手に値上げなどができないよう規制をかけている。
この送配電事業というのが結構ややこしい。
電力は需要と供給が瞬間瞬間に一致させないといけない。
もしも、一瞬でも需要が上回ると停電となる。
いや~秒単位で電力需給を合わせている、というから驚きである。
そのため、供給量を想定需要量よりも多めにみて、想定需要の1.2掛けとか1.3掛けの供給能力を維持している。
この需給の調整を行っているのも送配電事業者だそうな。
少し豆知識として、OCCTO(オクト)をメモしておく。
OCCTOとは、電力広域的運営推進機関という組織。
東日本大震災を契機に設立されている。
この組織の行っていることは、全国の送配電事業者や発電事業者の運用について調整している。
全国の送電線のネットワークは、道路や線路のようにつながっている。
しかし、それぞれのエリア(東電なら東電のエリア)だけの調整しかしていないので、東日本大震災のような大規模電力逼迫状態となったときなど、他のエリアから融通してもらわないといけないが、それができなかった。
そのため、全国規模で運用調整を行う組織としてOCCTOが設立された。
結構、送配電の世界もややこしそうである。
しかし、北海道ブラックアウトでも本州の電力会社(東北電力か東京電力)から、電力融通が行われていた。
容量の半分を緊急用に開けておけ、などの規制があって・・・・今は改正に向かって・・・などなど。
今日は電力の基本のキホンにとどめておく。
今後、個別案件を深堀していく。
話を戻す。
発電事業者にはどのような者が参入しているのか。
まずは当然、大手電力会社の発電部門である。東電とか関電とか。
発電設備1000kw以上、供給電力1万kw以上、発電電力の5割以上を系統(送電線のネットワーク)に送電している、という要件を満たせば、あとは経産大臣へ届け出ることで発電事業者となれる。
新たに発電事業者となる者を独立系発電事業者(IPP)というらしい。
これが先ほどの鉄工所などである。
この他にも、小規模な発電を行う新電力企業や再エネ発電事業者なども参入している。
ただ、これは疑問のまま解消していないのだが、大手の電力会社が規模のメリットを活かして、海外から大量輸入して大型発電設備で発電した電力に、コストで勝てるのだろうか?
一品製品と違い、電気に良いも悪いもないだろう。
あるのは電圧と電流のみ。
唯一、価値があるとすれば再エネによる電力で、これは環境に良いという価値を持っているから別格。
IPPなどが化石燃料を使った電気だったとしたら、旧大手電力の海岸線によくあるような超大型火力発電所などで発電した電力の方が単価が安いのではないか。
JEPXでの皆が参加して需要と供給で定まる取引値で儲けが出るのかな?
これは疑問のまま、いまだに分からない。
他にも疑問が残っている。
送配電というのが複雑なのだ。
簡単には、送電と配電に分かれる。
発電所から変電所まで送ることを送電という。
変電所から家庭や工場などに送ることを配電という。
送る電気と配る電気、意味を考えると理解はできる。
そして、一般送配電事業者というのは、旧大手電力から派生した会社に独占的事業を認めている。
東電パワーグリッドなどのこと。
ただし、送配電料金は一定としている。
疑問はここからで、最近はアグリゲーターという農業とワニを混ぜたような言葉が生まれている。
アグリゲーターとは、太陽光発電などの分散型電源を一括して運用する事業者とのこと。
あれれ?、送配電は独占だったのではないの?という疑問
このように、いまだ分からない事が多い電機業界ではあるが、少しずつ勉強していこう。