SAFをメモする

二酸化炭素の排出が地球の温暖化の原因なのかどうかは分からない。

でも、2021年8月 IPCC、これは「気候変動に関する政府間パネル」と訳される国連の機関。

気候変動の科学的評価や報告書を出してきた機関。

ここが、初めて断定した。

「地球の温暖化は人間活動によることは疑う余地がない」

これまでは、断定は避けてきたが初めて言い切った。

報告書には、19世紀後半からすでに1.09℃の気温上昇がみられ、それはほとんどが人間活動によるもの、とされた。

 

 

もう少しおさらいをする。

パリ協定という有名な協定がある。

2015年のCOP21で締結された協定である。

これは、世界の長期目標として2℃目標、1.5℃に抑える努力をする、というもの。

COPという「気候変動枠組条約締結国会議」において結ばれた協定。

よく勘違いされるのが、俗にいう1.5℃目標というもの。

この1.5℃目標はCOP21のパリ協定ではなく、その後の2018年のIPCCの報告書。

さきほど、2021年のIPCC報告書で人間活動が疑う余地がない、が象徴するものなら

2018年の1.5℃特別報告書は、温暖化の影響は1.5度の上昇でも大きいが2度になるとさらに深刻になる。

だから、1.5度未満の抑制が必要である、と訴えたことだろう。

さらに、2030年までにCO2排出量を半減し、2050年までに正味ゼロ・エミッションが必要である、とされた。

 

COP21では、2℃目標だったものが、かなり前倒しされた感じとなっている。

 

とにかく、地球温暖化の原因は、国際的にはCO2排出が原因で、そのために対策をとる必要がでてきた、ということ。

 

では、日本ではどのような影響があるだろうか。

まずは、意識の高い欧州と関係のある業種は、カーボンニュートラルの取組を進める必要がある。

では、欧州と関係のある業種は?と聞かれると、ほとんどの業種となるだろう。

CO2削減できない商品を欧州には輸入できなくなろうだろうし、取組んでいない企業は取引をできなくなるだろう。

しかし、直接的な影響は航空機が大きいと思う。

欧州から日本に来る場合、航空機の燃料がカーボンニュートラルでなければ、日本には行かない、となる可能性がある。

 

そういう訳で本日は、航空機の燃料としてSAFをテーマにメモする。

これは国土交通省のHPから抜粋したもの。

部門別では産業部門が多いが、次いで運輸部門であり、全体の17.7%を排出している。

その中でも自動車が88%を占めている。

次が海運で5.3%

鉄道で4.2%

航空で2.8%

となっている。

何だ、たった2.8%か、と思ってしまった。

ちなみに、全部門でみると、17.7% × 2.8% = 0.005%! =1/20000

さらに小さい。

 

これも、国土交通省のHPからの抜粋であるが

1人が1km移動するのに排出するCO2量は航空がトップにくる。

これを見ると、航空機って意外と燃費いいのでは、と思ってしまった。

 

ここで、B787の燃費をみてみよう。

250席、離陸時の重量は219トン(これは乗客や荷物、燃料の重量が加わっている)

約6000リットル=6kリットル/時間

つまり、1時間に6000リットルも消費する。

1分だと100リットル

1秒だと1.7リットル

つまり、1秒間に約2リットルの燃料を消費しているのである。

ガソリン車が満車にして40リットル入れても、23秒ほどで空になる、という燃費。

そりゃ、EUも航空機に飛び恥なんて言うのだろう、と思う。

しかし

当然、250人も運んでいるし、時速900kmで巡航する。

そうなると、1人当たり、1キロ当たりにすると、意外と自動車と差がない、ということになる。

それが、上の自動車と航空はそんなに差がない理由だろう。

だから、航空機が燃費が悪い、というのは少しおかしいのではないか、と思っている。

確かに鉄道は圧倒的にいいが、バスや自動車と比べて、航空機が際立っている訳ではない。

だから、SAFなんてものが必要なのか、疑問が残っている。

 

しかし、どうやらその考えは違うようだ。

自動車も批判の対象になっている。

だから、EVやFCVに変わってきている。

しかし、航空機は電気や水素では動かせない。

そこまでの蓄電池がない、燃料電池がない、水素エンジンがない、ということ。

そこで、SAFという、Sustainable aviation fuel

持続可能な航空機の燃料

が今日のテーマとなる。

 

では、今の航空機の燃料は何か?

それは、ケロシン。?となるが、灯油に近い成分らしい。

ただ灯油より、純度が高く水分が少ない。

なぜ、純度が高く水分が少なくないとダメかというと、高度が高いところを飛ぶからである。

高度7500m~11000mを飛ぶ。

なぜなら、空気抵抗が少ないから。

では、もっと上ではダメか。エンジンに空気を送って燃焼させるので、空気が少なすぎてもダメ。というわけ。

そして、100m高度があがるごとに0.6℃の気温低下となる。

つまり、高度1万メートルの上空では地上より60℃近く下がる。

そんなマイナス40℃とかの世界で、時速900キロで飛んでも、凍結しない燃料が必要となる。

そのため、高純度で水分が少ないケロシンが必要、というわけ。

ケロシンとは灯油に近い成分らしい。

が、ここで少し、石油についてメモしておく。

 

 

採掘したてのものは原油。

この原油を360℃で加熱して蒸気にする。

この蒸気を蒸留装置に送り込む。

この蒸留装置は高さ50mほどの塔になっており、蒸気が上に上昇していくにつれ温度が下がっていく。

最初に沸点の高い物質から液化していく。

 

少し化学的な話になるが、石油製品は炭化水素という化合物である。

炭化水素とは炭素と水素からなるもの。

メタンのCH4は有名。

つまり、石油製品は必ずCを含むので燃焼すればOとくっ付いてCO2となる。

そして、話を戻すと、

炭素の数が多くなるほど、沸点は高くなるらしい。

つまり、温度が高くないと気体にならない。

逆にいえば、炭素の数が多いほど、沸点が高いので、個体から液体に変わる温度も高い、ということ。

 

蒸留塔に送られた原油ガスは、どんどんと温度を低下させながら上昇していく。

少しづつ温度低下が起こるのだが、最初に液体になるもの、またはほとんど蒸気にならなかったもの、これが重油である。

次が300℃前後の軽油が液化する。ディーゼルである。

次に200℃前後の灯油が液化する。これは航空燃料のケロシンもこの仲間である。

次に30℃~200℃で、ナフサが液化する。このナフサはガソリンの原料となる。

最後に、LPガスである。これはガスのままとなる。

 

そして、航空燃料はこの灯油と同じ沸点レベルのケロシンとなっている。

化学的には炭素と水素からできた炭化水素といわれるもの。

炭素の数は10個から15個程度。

その炭素原子が鎖のようにつながった骨格の周りに、水素が結合したパラフィンとよばれる化学構造をしている。

この航空燃料だが、これは当然、炭化水素の化合物なのでCO2が排出される。

だから、SAFを作ろう、という流れになっている。

 

 

さて、ではSAFの原料とは何か。

ここからが本題となるが、すでに3000文字近い。

しかし、話を進める。

SAFは、CO2を排出する。が、バイオマスと同じ理屈でOK、となっている。

このあたりが良く分からない。

欧州ではバイオマスはダメ、と言ったり、SAFはOKにしたり。

 

とはいえ、SAFはこれからの航空機燃料として中心的な役割を担うとされている。

 

SAFには「ASTM D7566」と呼ばれる国際規格がある。

「ASTM D7566」は、7種類の製造方法を承認し、製造方法に応じて従来の燃料への最大混合率を定めている。

化学的に製造する方法で、さまざまなSAFの製造方法が提案されている。

 

 

航空燃料の規格を定めるASTM Internationalは、SAFを原料基準に7つのカテゴリーに分類し、化石燃料との混合割合を定めています。

【SAFの原料による7つの区分】

出典:国土交通省 航空局*9)

 

SAFの主な製造方法

Annex1 都市ゴミや廃材などをFischer-Tropsch法(フィッシャートロプシュ法)により製造する方法(FT)

Annex2 使用済み食用油や植物油などを水素化処理することで製造する方法(HEFA)

Annex5 木くずなどのバイオマス系は、アルコールにしてから製造する方法(ATJ)

Annex6 脂肪酸エステル・脂肪酸の熱変換・水素化処理により製造する方法(CHJ)

Annex7 微生物である微細藻類からは炭化水素や油脂、バイオ原油などを抽出して転換

 

 

① 廃食油

世界で商業化が可能かつ流通しているSAFは、廃食油由来の「水素化処理エステル・脂肪酸」(HEFA)系のみ。

フィンランドのエネルギー会社のNESTE(ネステ)が生産し、日本では伊藤忠商事が同社と契約してアジア地域で販売。

なぜ、アメリカでもイギリスでもフランスでもなく、フィンランドなのかは不明。

ただ、この会社が世界の食用油を調達するサプライチェーンを持っている。

水素化処理とは、植物油や動物性の油脂は灯油と比べると分子が大きいらしく、高温高圧の水素を使って分子を小さくするらしい。

原料として使われるのは、ナタネ油や大豆油、パーム油のような植物油やラードのような動物性の油脂。

植物油や動物油の分子は灯油の3倍くらいの大きさがあるので、高温高圧の水素を使ってジェット燃料に適した分子の大きさに分解する。

油脂類を水素を使って分解すると、変質しにくい安定した品質のSAFにすることができるそうだ。

 

② 木くずなどのバイオマス

糖化・発酵させアルコールにする。

そこからエチレンへ転換する。

それを重合してSAFを製造する。

木くず→アルコール→エチレン→SAF

メタノールやエタノール、ブタノールのようなアルコール類を原料としてジェット燃料と同じ性質・状態の燃料とする方法。

アルコール類の炭素数は1個から4個と小さく、さらに酸素原子が含まれている。

そのため、まず酸素を取り除き、さらに分子同士をつなぎ合わせて、ジェット燃料に適した大きさの液体燃料にする。

例えばエタノールを原料とした場合、酸素を取り除いてエチレンという物質に転換。

これをポリエチレンを作るときと同じ方法でつなぎ合わせれば、ジェット燃料と同じ程度の分子にすることができるそうだ。

原料となるエタノールは穀物や糖類を発酵させて、酒と同じ方法で製造することが可能。

すでに世界中で自動車用の燃料として使われている。

 

 

③ 都市ごみや廃材

都市ごみは、ガス化とFT合成を経てSAFを製造する方法。

これは実用化にほぼ近い。

FT合成とは、正式にはフィッシャー・トロプシュ法という名称。

一酸化炭素と水素の混合ガス(合成ガス)から、SAFを製造する。

原料は廃木材や林地残材、農業廃棄物、紙ごみなどバイオマス全般。

これらの原料を蒸し焼きにしてガス化。

フィッシャー・トロプシュ法(FT合成法)という方法でガス分子を結合させて、灯油と同じパラフィン構造の液体燃料にする方法。

この方法は炭素や水素を含んた複雑な構造をしたバイオマスを、炭素1個の分子と水素分子にいったんばらばらにしたうえで、再びつなぎ合わせて液体の燃料とするもの。

一度ガスに分解して、再び合成するので、手間がかかる。

しかし、幅の広い原料に適用可能。

FT合成法はすでに石炭や天然ガスから液体燃料を作る技術として確立。

FT-SPKは、この方法をバイオマスに適用しようというもの。

 

 

 

あまり、製造方法に深入りしてもマニアックすぎるので、この辺りで国の動向をみてみる。

まず、どれだけのSAFが必要となるのか。

その前に、SAFは従来の航空燃料と混ぜて使うということ。

混合割合も最大で50%までしか認められていない。

また、国(国交省)の目標も10%混合することを目標としている。

その場合、目標値が示されていて

・2025年には30万kl

・2030年には171万kl

ということは、航空機の燃料はその10倍ということになる。

2025年が30万klとするならば、仮に全てB787の場合、東京から沖縄まで2000kmを飛ぶと

2時間かかるとして、6000リットル/時間

なので12000リットル=12klとなる。

300000÷12=2.5万回分となる。

まあ、海外や国内も色々なので、この数字に意味はまったくない。

 

先ほどB787の燃費、6000リットル/時間

といったが、普通の燃費の考え方はリッター何キロ走るか?だろう。

そういう意味では、B747とB737では、3倍以上違う。

これは、アルトとランドクルーザーの違いと言えばいいのか。

とにかく、平均的なB787では、120m/L となっている。

少な!と思ってはいけない。

人数も250人くらい乗せている。

クルマが15km/L=15000m/Lとしても

250人も載せているなら、120m×250=30000m/Lとなる。

CO2排出量では、航空の方が自動車より悪いはずなので、クルマが2人で計算しているなら同じとなるが・・・・

 

2025年に30万KLのSAFを製造したいのが国の意向。

2030年に171万KL

しかし、現在実用化されている食用油からの製造方法であるHEFA系の水素化処理というもの。

この事業系廃食油が40万トン/年(≒50万KL)

この時点で、全ての事業系廃食油を使っても25%しか製造できない。

しかも、事業系廃食油は、12万トンが海外に輸出されているそうだ。割合にして30%。

さらに、残りの大半も飼料や肥料、石鹸の材料に使われているらしい。

さらにこの1年間で買い取り価格も3倍にあがったそうな。

廃食油争奪戦の報道は頻繁に耳にする。

 

では国内の企業はどう動いているのか。

 

日揮ホールディングス(HD)とレボインターナショナル(京都市)は

22年6月

関西国際空港など3空港の飲食店やホテルの廃食油利用で6月に関西エアポートと合意

22年11月

東京・丸の内エリアの飲食店などから出る廃食油のSAF向け利用で三菱地所と合意


日揮HDとレボ社はコスモ石油と共に、こうして回収する廃食油を使うSAF製造プラントを25年度初頭までに稼働

約3万L/年を生産する計画。

国内初の国産SAFの大規模生産を目指す

しかし、国の発表では2025年に30万KL、ということはKLの単位なので換算すると30000万Lなので、国内初の大規模生産しても、必要量の10000分の1にしかならない。

これは完全に出遅れている。

しかし、日本だけではなく世界のSAF供給量も微々たるもの。

2020年は約6万KL

世界中のSAFを日本に持ってきても、2025年に必要なSAF量の5分の1程度。

 

 

航空局の「航空脱炭素化基本方針」を確認してみる。

国際民間航空機関(ICAO)において

2010 年

・短中期目標として燃料効率の年平均2%改善

・2020 年以降 CO2 排出量増加制限

2016 年

・2035 年までの国際航空におけるカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)が設定

2022 年の第 41 回 ICAO総会

・国際航空分野における長期目標として「2050 年までのカーボンニュートラル」が採択

・2026年までに2019年度比15%削減した排出量に抑制すること

 

このICAOの目標を受けて、航空局では

目標

・ 国際航空では、2020 年以降 CO2 総排出量増加制限 → ICAOと同様
・ 国内航空では、2030 年度までに単位輸送量当たりの CO2 排出量を対 2013 年度比で 16%削減 → 燃料効率年平均2%からか?
・ 国際・国内航空ともに、2050 年カーボンニュートラル → ICAOと同様に国内も目標設定

具体的な取組

・2030 年時点の SAF の使用量について、本邦航空運送事業者による燃料使用量の 10%を SAF に置き換えること

 

とされている。

さてさて、実際に原料がそもそも足りない、とも聞く。

日本のポテンシャルを調査したサイトがあった。

一般財団法人運輸総合研究所というところの資料。

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/saf/pdf/001_05_00.pdf

 

この調査では

1未利用分

2未利用分のほか既利用分もSAFに振り向ける場合

3全ポテンシャルをSAFに振り向ける場合

となっている。

廃食油では、1,2では5万KL/年が限界となっている。

それでも日揮とレボの3万Lと比べれば1700倍とはなっているが。

2025年に30万KLのSAF製造にはほど遠い。

 

最後に、原料調達 → 製造 → 利用 となるが、各課題をあげておく。

これもこのサイトから。

〇 原料調達

・必要量存在するのか

・収集は可能なのか

・他用途の競合に対処可能か

〇 製造

・製造技術は確立されているか

・設備投資の回収は可能か

〇 利用

・利用する動機付けはあるか

 

となっている。

今日は7000字近くなっているので、打ち切り。

 

 

 

 

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